モスコー・ミュール

モスコー・ミュール(Moscow Mule)とはオールデイカクテル(食前食後を問わず飲めるカクテル)として、メジャーなスタンダードカクテルの一つ。モスコミュールと表記することもある[1]

モスコー・ミュール
基本情報
種別 ロングドリンク
作成技法 ビルド
スタイル バック
琥珀色透明
グラス 銅製マグカップ
国際バーテンダー協会のレシピ
ベース ウォッカ
装飾材料 ライム・スライス
材料
ウォッカ …… 45ml
ライム・ジュース …… 10ml
ジンジャービア …… 120ml

概要

「モスコー・ミュール」は「モスクワラバ」という意味である[1][2][3]。ラバには後ろ足でキックする習性がある[2][3]。また、酒についてもアルコール分が高く、胃に刺激を与えるものを「キックがある」と表現する[2][3]。このことから「ミュール」の名が付けられた[2][3]。「モスクワ」はウォッカを使用していることから[3]

なお、名称に「クーラー」とは付いていないが、クーラーの一種である[4]

ジンジャービアを用いるのが原典のレシピであるが、日本ではジンジャービアの入手が容易でないため、ジンジャーエールを代わりに用いるレシピが普及している[2][5]

また、銅製マグカップで提供するのが、本来のスタイルである[3][5]

由来

1933年アメリカ合衆国における禁酒法が終わり、ウォッカも自由にアメリカ合衆国へ輸入できるようになった[6]。しかしながら、バーボンウイスキーライ・ウィスキーに押されてウォッカの市場はなかなか拡大しなかった[6]

1946年、ハリウッドに店を構えていたバーテンダーのジャック・モーガンが考案したとされる[2][3]。ジャック・モーガンはピムス・カップというイギリス産まれのカクテルをつくるためにジンジャービアを大量に仕入れた[2]。しかし、ピムス・カップはさっぱり売れず、ジンジャービアの大量在庫を抱えることになった[2]。そこでウォッカとジンジャービアを組み合わせたところ、これが人気となった[3]。銅製のマグカップはジャックの友人が仕入れたものの、こちらも売れずにいた。その友人の発案によって銅製マグカップで提供することになった[3]

別の説では、1940年代初頭にニューヨーク市のとあるバーでウォッカの輸入業者とジンジャービアの生産者が出会い、互いのプロモーションなるよう考案された[6]

この他にも、当時スミノフを製造販売していたヒューブラインが「ニューヨークでモスコー・ミュールが流行っている」とアメリカ合衆国全土に広げて流行らせた[5]。という説もある。

レシピの例

国際バーテンダー協会によるレシピを以下に挙げる[7]

材料
作り方
  1. 「ミュールカップ」とも呼ばれる銅製のマグカップ、またはロックグラスにウォッカとジンジャービアを入れる。
  2. ライム・ジュースを加え、混ぜ合わせる。
  3. スライスしたライムを飾る。

バリエーション

ウォッカをテキーラに替えるとメキシカン・ミュールに、またラムに替えるとジャマイカン・ミュール(スージー・テーラー)に、スコッチ・ウイスキーに替えるとマミー・テーラー[8]によるとマミー・テーラーのレシピはスコッチ・ウイスキー45ml、ライム・ジュース15ml、ジンジャーエール適量となっており、モスコー・ミュールのベースをスコッチ・ウイスキーに替えてつくられるカクテルと考えられる。ジンに替えるとマミーズ・シスター[8]アブサンに替えるとワイルド・ミュールとなる。

その他、ウォッカを他の酒類で置き換えたバリエーションと呼称に次のようなものがある。

ベース名前
バーボン・ウイスキーケンタッキー・ミュール または ホースファーザー
バーボン・ウイスキーとコーヒー・リキュールニュー・オーリンズ・ミュール
ジンジン・ミュールロンドン・ミュールミュンヘン・ミュール または フォッグホーン
バンダバーグ・ラム(enオージー・ミュール
アイリッシュ・ウイスキーアイリッシュ・ミュール
ブレンデッド・スコッチ・ウイスキーとサンジェルマン(enグラスゴー・ミュール
アブサンボヘミアン・ミュール
アブサンとシナモンシュナップスデッドマンズ・ミュール
コニャックとアンゴスチュラ・ビターズフレンチ・ミュール
洋梨リキュールとポワール・ウィリアム(enプリッキー・ペア・ミュール
サザンカンフォートサザン・ミュール
トゥアカ(enトスカーナ・ミュール
アクアビットオスロ・ミュール
付け合せにローズマリークランベリーミスルトウ・ミュール

他のバリエーションとして、ジンジャー・ビアの代わりにジンジャー・シロップやジンジャー・エールを用いるものがある[9]

副材料としてニンジンのジュースやアンゴスチュラ・ビターズを追加するアレンジもある[10]

ラズベリーシロップまたはクレーム・ド・フランボワーズを加えるとモスコー・ミュールからフロラドラ(Floradora cocktail)になる。

ジンジャー・ビアの代わりにマウンテンデューを使うとモスコー・モールになる[11]

関連項目

出典

  1. 岡崎ユウ『本格 家飲みカクテル教本 新装版 ルールをマスターして美味しく楽しむ120種』メイツ出版、2021年、33頁。ISBN 978-4780424928。
  2. 福西英三『カクテル教室』保育社、1996年、41頁。ISBN 978-4586508877。
  3. カクテルが飲みたくなる話「モスコミュール」”. 毎日放送 (2021年9月30日). 2022年9月2日閲覧。
  4. 山本祥一朗 監修『カラー図解 カクテル』成美堂出版、1994年、頁。ISBN 4-415-07873-7。
  5. 今さら聞けない定番カクテル「モスコミュール」ってどんなお酒?”. 食楽Web (2019年10月16日). 2022年9月2日閲覧。
  6. 『カクテルをたしなむ人のレッスン&400レシピ』日本文芸社、2021年、129頁。ISBN 978-4537218695。
  7. Moscow Mule (英語). 国際バーテンダー協会. 2022年11月26日閲覧。
  8. 北村聡 著『定番から人気の焼酎カクテルまで 基本のカクテル』世界文化社、2005年、頁。ISBN 4-418-05324-7。
  9. Graham, Colleen (2019年5月24日). Stoli Alibi: A Soda Drink Where Vodka and Ginger Meet”. The Spruce Eats. 2020年6月22日閲覧。
  10. Carrot Moscow Mule Cocktail (2017年4月13日). 2020年6月22日閲覧。
  11. Hines, recipe: Nick. The Mountain Dew Moscow Mole”. VinePair. 2020年6月22日閲覧。

外部リンク

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