宇都宮ライトレール宇都宮芳賀ライトレール線
宇都宮芳賀ライトレール線(うつのみやはがライトレールせん)は、栃木県宇都宮市の宇都宮駅東口停留場から同県芳賀郡芳賀町の芳賀・高根沢工業団地停留場を結ぶ予定の宇都宮ライトレールのライトレール(LRT、軌道法適用)路線である。
宇都宮芳賀ライトレール線 | |||
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基本情報 | |||
通称 |
LIGHTLINE(ライトライン) 芳賀・宇都宮LRT 宇都宮LRT | ||
国 | 日本 | ||
所在地 | 栃木県宇都宮市、芳賀郡 | ||
種類 | ライトレール | ||
起点 | 宇都宮駅東口停留場 | ||
終点 | 芳賀・高根沢工業団地停留場 | ||
停留所数 | 19箇所 | ||
開業 | 2023年(令和5年)8月26日(予定)[1][2][3][4][5] | ||
所有者 | 宇都宮市・芳賀町 | ||
運営者 | 宇都宮ライトレール | ||
車両基地 | 平石車両基地 | ||
路線諸元 | |||
路線距離 | 14.6 km | ||
軌間 | 1,067 mm(狭軌) | ||
線路数 | 複線 | ||
電化方式 | 直流750 V、架空電車線方式 | ||
最高速度 | 40 km/h | ||
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停留場・施設・接続路線 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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凡例
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路線データ
路線概要
鉄道より輸送力や設備を抑えた軌道路線の形態である、ライトレールの路線である。国土交通省が定義する次世代型路面電車システムを採用しており、宇都宮市が進める「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」の街づくりにおいて、市域の東西を縦貫する鉄・軌道路線として「東西基幹公共交通」として位置付けられる路線である。既存路線の延伸、改良を伴わない全くの新規路線としてライトレールが建設されるのは日本初の事例であり、それまで路面電車が存在しなかった都市へ軌道法に基づいた路線が開通するのは1948年(昭和23年)の富山地方鉄道伏木線(現:万葉線高岡軌道線)以来となる[11][12]。
全体整備区間として、宇都宮市区間の宇都宮市街地中心部西側の桜通り十文字交差点(宇都宮市桜2丁目[13])[地図]からJR宇都宮駅を経由して宇都宮テクノポリス(ゆいの杜地区)[地図]までの延長約15 kmと、芳賀郡芳賀町区間の芳賀・高根沢工業団地までの約3 kmが計画されている。宇都宮駅の東側区間と西側区間の接続については、宇都宮駅の北側に東北本線を跨ぎ東北新幹線の下をくぐる高さの高架橋を建設する計画である[地図][14]。地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づく上下分離方式を採用し、宇都宮市・芳賀町が設備を保有し、宇都宮ライトレールが運行を行う[15]。 そのうち、宇都宮駅東側にあたる、宇都宮駅東口(宇都宮市宮みらい[13])[地図]から芳賀・高根沢工業団地(芳賀町下高根沢[13])[地図]までの14.6 kmを、優先整備区間として、先行的に整備している。
優先整備区間は2023年(令和5年)8月26日に全区間が開業する予定である[4][5]。
沿線は関東平野の最北部で栃木県の県都として発展した宇都宮都市圏にあたり、宇都宮市街地からロードサイド店舗が立ち並ぶ郊外の住宅地、大学、日本有数の内陸型工業地域である関東内陸工業地域の中核を担う平出工業団地、清原工業団地、芳賀工業団地など大規模工業地帯、鬼怒川の水利を生かした稲作が盛んな豊かな田園地帯などがありさまざまな表情を見せる。
国土交通大臣に届けられている路線名は「宇都宮芳賀ライトレール線」(うつのみやはがライトレールせん)である[16]。なお、旅客案内上は「芳賀・宇都宮LRT」という名称も用いられている[17]。その他、LRT車両の愛称として公募された「LIGHTLINE(ライトライン)」も一部で使用されている(サインデザインの節を参照)。
線路
本路線の「専用軌道」は軌道建設規定および軌道運転規則における「新設軌道」ではなく、LRTのみが走行する道路(都市計画道路宇都宮芳賀ライトレール線)扱いとなる[18]。これにより、(特認を受けない限り)最高速度が40 km/hに制限される一方で、地方交付税交付金の算定基礎となる道路の面積および延長に含まれることとなる。本路線に関しては当事者が「専用軌道」という語句を用いているため、以下「専用軌道」に統一する。
軌間は宇都宮近郊に乗り入れる他路線との直通運転の可能性を考慮して、狭軌(1,067 mm)が採用された[19]。開業時点では全線の最高速度は40 km/hであるが、将来的には軌道法上の特認を得て、併用軌道区間では50 km/h、鬼怒川を渡る専用軌道区間では70 km/hの高速運転を行う計画であり、開業時点で70 km/hでの運行に対応する車両が導入される(後述)。
運行設備
車両基地は、車両運用の効率性、延伸時の拡張性、本線からの出入庫の利便性、施設稼働時の周辺環境への影響などを考慮した結果、平石停留場から分岐し、新4号国道付近へ設置された。25編成程度を収容可能な留置線、全般検査に対応する車両検修・整備施設、保線部門、運行部門などの本社機能を収容する管理棟などが設置され、約4 haの規模となった[20]。
変電所は国道4号付近、新4号国道付近、清原管理センター付近、芳賀工業団地管理センター付近の合計4箇所に設置される予定である[20]。電力には宇都宮市内で発電された再生可能エネルギーを活用し[21]、宇都宮市と民間が出資した第三セクターの小売電気事業者、「宇都宮ライトパワー株式会社」より供給を受ける。
- 車両基地の全景(国道123号側から撮影)
- 平出変電所
- 清原変電所
- 芳賀変電所
運行形態
開業時の運行形態は、開業後一定期間は運賃収受等に時間を要することが想定されるため、余裕を持たせた暫定的な「特別ダイヤ」とし、以下の通りとする予定である[3]。起点の宇都宮駅東口から終点の芳賀・高根沢工業団地までの所要時間は40分台後半を見込んでいる[3]。
- 全列車各駅に停車する普通運行のみとし、優等運転(快速)は行わない。
- 運転間隔はラッシュ時(平日6時〜9時、17時〜19時)が8分間隔、それ以外のオフピーク時(平日のラッシュ時間帯以外及び休日)は12分間隔とする。
運行時間帯は午前6時台から午後11時台までで、宇都宮駅を発着する東北新幹線の運行時間帯に合わせている[10][22][23][24]。
なお、「軌道運送高度化実施計画」においては、運行形態について、運転間隔は、ラッシュ時(平日6時〜9時、17時〜19時)が毎時10本(快速含む、6分間隔)、それ以外のオフピーク時(平日のラッシュ時間帯以外及び休日)は毎時6本(普通のみ、10分間隔)とすることを想定している。日本の路面電車では珍しい快速運転を行う予定であり、平石停留場とグリーンスタジアム前停留場は、快速列車が普通列車を追い抜ける構造となっており、日本の路面電車としては初めての設備である[10]。快速列車は平日の朝夕ラッシュ時のみ運転され、それ以外のオフピーク時は普通列車のみ運転である[25]。この計画においては、普通列車では宇都宮駅東口 - 芳賀・高根沢工業団地間の所要時間は44分と想定されているが、快速では38 - 37分まで短縮される見込み[23]。快速運転や運行本数の増便は利用実態に合わせ、2024年以降のダイヤ改正より実施する予定としている[3]。
停留場一覧
トランジットセンターは5箇所で、バスアンドライド(接続バス停留所)、パークアンドライド(駐車場)、タクシー乗り場、サイクルアンドライド(駐輪場)などが整備される[26][27][28]。
- 背景が橙色の停留場はトランジットセンター。
- 軌道…※:グリーンスタジアム前 - ゆいの杜西間に立体交差に伴う専用軌道あり
- 他交通との結節…●:その交通と結節がある、あるいは計画されていることを示す。このほか全停留場に駐輪場を整備[26]。
なお、停留場の副停留場名称の命名権(ネーミングライツ)が沿線企業に対して募集され、応募があった一部の停留場についてはネーミングライツパートナーにより副停留場名称が付されている[29]。
軌道 | 停留場名 | 他交通との結節(自転車除く)[26] | 近隣主要施設・備考 | 所在地 | ||||
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バス | タクシー | P&R | 地域内交通 | 鉄道 | ||||
併用軌道 | 宇都宮駅東口停留場 (ライトキューブ宇都宮前) |
● | ● | ● | 東日本旅客鉄道: 東北新幹線 ■ 宇都宮線(東北本線) ■ 烏山線[注釈 1] ■ 日光線 |
ライトキューブ宇都宮 ウツノミヤテラス |
宇都宮市 | |
東宿郷停留場 | ||||||||
駅東公園前停留場 (栃木銀行 宇都宮東支店前) |
宇都宮駅東公園 宇都宮市体育館 (ブレックスアリーナ宇都宮) | |||||||
峰停留場 (シーデーピージャパン本社前) |
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陽東3丁目停留場 (新宇都宮リハビリテーション病院前) |
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宇都宮大学陽東キャンパス停留場 (ベルモール前) |
● | ● | ● | ベルモール 宇都宮大学陽東キャンパス | ||||
専用軌道 | 平石停留場 | ● | ● | ● | 車両基地隣接[27] | |||
平石中央小学校前停留場 | ● | 市立平石中央小学校 | ||||||
飛山城跡停留場 (アキモ前) |
● | 飛山城跡 | ||||||
清陵高校前停留場 (作新大・作新短大前) |
作新学院大学 県立宇都宮清陵高校 | |||||||
併用 | 清原地区市民センター前停留場 | ● | ● | ● | ● | 宇都宮市清原体育館[地図] 宇都宮清原球場 | ||
グリーンスタジアム前停留場 (キヤノン前) |
栃木県グリーンスタジアム | |||||||
※ | ||||||||
ゆいの杜西停留場 (阿久津整備前) |
● | |||||||
併用軌道 | ||||||||
ゆいの杜中央停留場 | ||||||||
ゆいの杜東停留場 (ホンダカーズ栃木中央 ゆいの杜店前) |
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芳賀台停留場 | 芳賀郡 芳賀町 | |||||||
芳賀町工業団地管理センター前停留場 (リブドゥコーポレーション栃木芳賀工場前) |
● | ● | ● | ● | 芳賀バスターミナル (ジェイアールバス関東宇都宮支店) | |||
かしの森公園前停留場 | かしの森公園 | |||||||
芳賀・高根沢工業団地停留場 | 本田技術研究所 (四輪R&Dセンターなど) |
歴史
※事業化に至るまでの経緯は宇都宮ライトレール#歴史を参照
事業認可
軌道路線を建設し、事業を開始させるためには、軌道法に基づき、収支概算書や建設費概算書など採算性や持続性に関する審査を受け、国土交通大臣の特許を受けなければならない。軌道法の特許を受けるため、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づき、「軌道運送高度化実施計画」を作成した。「軌道輸送高度化事業」とは、施設を地方公共団体等が整備し、それを運行事業者が借り受けて列車を運行し路線を経営する上下分離方式でLRT路線を整備することにより、事業者のインフラ整備費用を軽減した上で安定な運行や経営を実現させる事ができる事業制度である。
2016年(平成28年)1月22日に、「軌道運送高度化実施計画」が国土交通省関東運輸局に提出され、7月26日の同省運輸審議会の公聴会[30]を経て、9月8日に国土交通大臣に対して認定を妥当とする答申書を提出[31]、9月26日に認定され、軌道法の事業特許を取得した[32]。認定段階では、2019年(令和元年)12月の開業を目指していたが、同年12月21日に見送る方針を固めている[33]。その後、翌年2017年(平成29年)7月11日に市は市議会議員協議会で、2017年度着工、2022年(令和4年)3月開業とする整備スケジュールを発表し、2022年を目標に事業が進められることとなった[34]。同年8月9日、宇都宮市と芳賀町、宇都宮ライトレールの3者が工事施行認可を国土交通大臣に申請し、[35]。同年9月29日には宇都宮市議会9月定例会で工事施行認可申請に伴う市道へのLRT軌道敷設に同意する議案が可決[36]、同年10月10日には栃木県議会9月通常会議の最終本会議で軌道敷設工事施行認可申請に同意する議案等が可決[37]され、着工へ向け着々と準備と手続きが進んだ。
着工
2018年(平成30年)3月20日、国土交通省は宇都宮芳賀ライトレール線の優先整備区間にあたる、宇都宮市宮みらいから芳賀郡芳賀町大字下高根沢間の14.6 kmにおいて、工事施行認可を行った。3月22日には栃木県も都市計画事業を認可した[38]ため、着工に向けた手続きは完了した。
そして、年度を跨いだ同年5月28日、宇都宮駅東口において起工式が挙行され[39]、同年6月4日に鬼怒通りにおいてLRT最初の工事となる中央分離帯撤去作業が始まり[40]、宇都宮芳賀ライトレール線の工事が本格的にスタートした。同年9月からは宇都宮清原工業団地内での路盤工事[41]が、10月からは竹下町の竹下高架橋工事[42]が、11月からは鬼怒川橋梁[43]と車両基地[44]が着工され、大規模施設の工事も次々と始まり、準備ができた場所から工事を進め、工事範囲を拡大させていった。
検討初期段階での優先開業区間の総事業費は260億円(全区間で383億円)を見込んでいたが、運行車両数の見直し、平出町付近のルート変更、快速運転のための設備追加などにより、約406億円へ上方修正された[11]。さらに軌道運送高度化事業の申請時点では458億円となり、うち246億3400万円は社会資本整備総合交付金の助成を受け、残りを一般公共事業債で調達する[6]。
工事の遅れと事業費の増加
しかし、2018年(平成30年)5月の優先整備区間における工事着手後に複数の立体交差区間などで地盤補強工事が必要となり、加えて停留場などのバリアフリー対策が必要となった。さらに電気やガスなどの地下埋設物(配管)の補償の見直しが行われ、地権者との接触が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大の影響で遅れた。用地取得率は2020年(令和2年)12月末段階で95%に達し、整備区間のうち約8割で工事に着手していたが、依然として未取得の事業用地の取得に今後1年程度さらに時間がかかる見通しとなり、2022年(令和4年)の開業が困難となった。なお、2021年(令和3年)時点の事業費は約684億円となり、2014年(平成26年)時点の総事業費約458億円の1.5倍に増加した[45]。
また、2023年(令和5年)3月の開業を目指し工事が進行することを発表した[46]。
理由 | 増加額 |
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現地の施工条件等への対応 | +102億円 |
建設需要の増加などの社会情勢の変化 | +35億円 |
安全性・利便性の向上など | +46億円 |
地下埋設物等の移設 | +35億円 |
軌道(レール等)構造の仕様を見直し(減額) | -27億円 |
総額 | +191億円 |
事業費増額の理由
出典:[47]
- 現地の施工条件等への対応(+102億円)
- 地質調査・用地測量への対応
- 地質調査の結果、鬼怒川橋梁や野高谷立体といった高架構造物区間や車両基地など、構造物を支える杭基礎の長さの変更や地盤改良の深層化等で47億円の増額
- 用地測量の結果、買収面積や補償物件数による用地費用の増加で31億円の増額
- 現地の施工条件への対応
- 鬼怒通りなどの交差点改良部の交通処理の強化等で17億円の増額
- 変電所の位置変更に伴うケーブルの延長や、埋設の深さの変更などで7億円増額
- 地質調査・用地測量への対応
- 建設需要の増加などの社会情勢の変化(+35億円)
- 安全性・利便性の向上など(+46億円)
- 地下埋設物等移設費(+35億円)
- 施設管理者との協議等の結果、工事に支障となるケーブルや配管類など、地下埋設物等の移設で35億円の増額
- 減額(-27億円)
- 軌道(レール、路盤)構造の仕様を見直しで27億円の減額
開業時期の更なる遅れ
2022年(令和4年)5月28日に、下野新聞は宇都宮市と芳賀町がLRTの開業予定を2023年(令和5年)3月から数か月延期させる意向である事を報道した[48]。理由は、グリーンスタジアム前停留場〜ゆいの杜西停留場間の野高谷(のごや)交差点架道橋の工事において、現道栃木県道64号宇都宮向田線の拡幅及び地下埋設物の移設が、渋滞の発生を避けるため交通規制範囲を当初計画より縮小したことによって、本来2021年(令和3年)7月に引き渡す予定が、10月まで遅延してしまったためである[48][49]。
それ以降の工事も大型建設機械の調達難や作業員不足により遅れを取り戻せず、結果として2022年現在に至るまで工事が2 - 3か月遅延しており、3月の開業予定へ向けた試運転や乗務員習熟運転等のスケジュールが確保できないためであるとしている[48][49]。
工事が進んだ区間のみ先行的に開業させる案もあった。6月16日の宇都宮市議会本会議一般質問で、佐藤栄一市長は開業時期の速やかな公表を求める議員からの質問に対し、「工事のスケジュールを精査し、国土交通省、栃木県、芳賀町、宇都宮ライトレールなど関係各機関と調整の上、部分開業も含めて検討したい」と部分開業を視野に入れて検討する意向を表明した[50][51]。工事遅延区間にかからず、かつ折り返し運転が可能な清原工業団地内にあるグリーンスタジアム前停留場 - 宇都宮駅東口停留場間のでの部分開業を見込んだ[50]。
開業時期の決定
2022年(令和4年)8月13日に、優先整備区間について下野新聞は宇都宮市と芳賀町が2023年(令和5年)8月中に、全区間を開業させることで合意(開業時期の確定)したと報道した[52]。 工事の遅れに伴う追加の負担増はないとされていたため、延期に伴う開業時期がいつになるのかが焦点となっていた。宇都宮市で検討されてきた先行開業については、共同事業者の芳賀町との関係や費用対効果などを総合的に考慮した上で、約5か月遅れでも全線開業するのが妥当だと判断された[52]。
2023年(令和5年)5月30日、下野新聞は、宇都宮市と芳賀町は開業日は同年8月26日とすることを調整していると報道した。事業の進捗や開業へ向けた諸手続き等を勘案し、また宇都宮市の佐藤栄一市長が開業日について「大安を選んだ方が良い」という意向を示したため、大安で土曜日である8月26日に開業させることとなった[2]。
同年6月2日、宇都宮市と芳賀町は宇都宮市議会における議員協議会及び記者会見において、開業日を2023年(令和5年)8月26日とすることを正式に公表した[1][4][5]。開業日が土曜日となった理由は、週末に開業させることにより、開業記念で開催されるイベントを多くの市民に楽しんでもらうためであると明かしている。また、同日には前年11月に起きた脱線事故の最終調査報告が取りまとめられており、それを踏まえた上での公表となった[4]。
宇都宮駅西側の延伸区間
延伸区間の検討
JR宇都宮駅西口[地図]から桜通り十文字付近までの宇都宮駅西側区間約3 kmについては、2017年に当初計画の終点である「桜通り十文字付近」から、自動車との乗り継ぎや観光振興の視点から、西側へ延伸を検討していることが示され[13]、2017年8月29日の『下野新聞』報道によれば、案として作新学院高校や宇都宮文星女子高校の通学需要が見込める栃木県護国神社以西を念頭に、その西の宇都宮環状道路(栃木県道3号宇都宮亀和田栃木線)との結節部、さらに西に計画されている東北自動車道・大谷スマートIC(仮称)付近[地図]などへの延伸が検討され、2017年度内にも計画をまとめる予定とされた[66]。
区間の決定
その後、2022年(令和4年)8月13日に、宇都宮市駒生1丁目の、栃木県教育会館付近まで路線を延伸する方針が固められたと同新聞により報道された。2024年(令和6年)内の軌道事業の特許申請、2026年(令和8年)内の工事着手、2030年代前半の完成を目指す。JR宇都宮駅西口駅前広場においては、施工ヤードが限られているため、施工手順の調整によりスケジュールが変動する可能性があるため、具体的な開業時期については無確定[67]。
また、宇都宮市が推進する「ネットワーク型コンパクトシティ」の形成にあたり、市東部の地域・産業の拠点である宇都宮テクノポリス(ゆいの杜)と市西部の地域拠点である城山地域を接続する公共交通の基軸を構築することが必要であるため、整備区間からさらに西の栃木県教育会館から大谷観光地間において、整備を検討することとしている[67]。
停留場一覧(予定)
宇都宮駅横断部の構造
宇都宮駅東口から西口に至るまでの区間は、路線概要の節でも概説したように、宇都宮駅の東側区間と西側区間の接続については、宇都宮駅の北側に東北本線の線路及び留置線を跨ぎ、東北新幹線の高架橋をくぐる高さの高架橋を建設する計画である[地図]。宇都宮駅構内の中央を横断するルートや、宇都宮駅の南側を通過するルートも検討されたが、宇都宮駅の構造物を大規模に改築する必要性があるため、北部を通過するルートに確定した[14]。営業中の東北本線の真上を通過するため工事は慎重な施工が求められ、非常に工事難易度の高い区間となる[68]。
宇都宮駅東口停留場から60 ‰の急勾配で高架橋へ登り、半径30mの曲線で進路を北から西へと変え東北新幹線を潜り抜けると、再度半径30mの曲線に差し掛かり進路を西から南へ変え、宇都宮駅西口バスロータリーの直上に高架駅のJR宇都宮駅西口停留場(仮称)が設けられる。宇都宮駅西口の停留場から先は、半径30mの曲線で進路を西に変えたのち、宮の橋の真上を50 ‰の勾配で下り、田川を渡った先の上河原交差点付近から地上を走行するルートとなる[69]。
軌道基本設計業務の公募型プロポーザル
2023年(令和5年)3月、市は宇都宮駅西側区間において、LRT整備に必要な軌道施設・道路・高架の構造や配置等の基本的事項を設計するための基本設計業務を委託する事業者を決定する[63]、公募型プロポーザルを開始した。内容は宇都宮市宮みらい(宇都宮駅東口停留場の所在地)、川向町(宇都宮駅西口停留場の所在予定地)とのほか32町において、軌道新設工事に係る軌道施設の基本設計、道路予備設計、高架構造の予備設計、平面交差点予備設計、運営施設の基本設計、既設構造物の基本設計、トランジットセンター基本設計、排水計画の基本設計を行うというものである[64][70]。
また、JR宇都宮駅西側の営業開始後においての、宇都宮を代表するイベント(ふるさと宮まつり、ジャパンカップサイクルロードレースなど)との共存や、工期、施工方法、環境負荷低減、周辺交通や近接構造物への影響や、総合的なコストに関する事項(維持管理費、更新費も含めたライフサイクルコスト及び用地、補償費等)など、駅西側の繁華街特有の事項に配慮した設計を求めている[70]。
同年3月2日にプロポーザルの実施が公告され、プロポーザルへの公募に必要な参加申請書類の提出は同年3月6日から4月26日まで受け付けられた。今後審査を踏まえ、同年6月14日までに事業者を決定した模様である[70]。
サービス
運賃・ICカード
総延長が長いため、運賃は市民の利便性を確保する一方で採算性を確保する必要から、対距離制を採用し[27]、2016年12月に初乗り運賃が150円、以降3 - 7 kmは1 kmごとに50円ずつ、7 km以上は3 kmごとに50円ずつを目安に加算するという計画案が示された[72]。この運賃案では、宇都宮駅東口 - 芳賀・高根沢工業団地間の運賃は400円となる。
ICカード(乗車カード)を基本とした運賃収受方式が導入され[27][72]、乗降時間短縮のため全ての扉からの乗降が可能となる信用乗車方式を、全国で初めて導入する予定である[72]。
現金の場合は、停留場に設置された発券機から乗車整理券を受け取り、先頭車の一番前の扉から乗り、降りる時も運賃を支払った上で、先頭車の一番前の扉から降りる形式(前乗り・後払い)で導入する予定[73]。また、現行の運賃体系のままの場合、バスや地域内交通とLRTを乗り継ぐと現在より高額になる区間があることから、乗継割引の実施も検討されている[72]。
地域連携ICカード「totra(トトラ)」
2019年(令和元年)7月31日に、宇都宮地域の交通事業者(宇都宮ライトレール、関東自動車、JRバス関東)で利用できるICカードに、東日本旅客鉄道とSONYが開発を行っている「地域連携ICカード」を導入[74]することを公表され、2020年(令和2年)2月にICカードの名称を、「Totra(トトラ)」「Lococa(ロコカ)」「Nexca(ネクスカ)」の3案から公募する投票を実施した結果、応募総数約3,100件のうち約4割を占め、最多だったトトラを選び、頭文字を小文字にした[75][76]。
「totra(トトラ)」は「総合的(total)」「輸送(transportation)」の頭文字からネーミング。カードは、澄み切った空の色を表現したライトミントの車窓をイメージしたデザイン[75][76]。三つの曲線で描いた「o」の文字には、バス、次世代型路面電車(LRT)、鉄道をつなぐ意味が込められている[75][76]。「totra」は、JR東日本のSuica(スイカ)の乗車券・電子マネー機能を備える[75][76]。
なお、totra以外にも、SuicaやPASMOなど、全国相互利用が可能な交通系ICカードも利用できるようにする予定である[77]。
各種デザイン
デザインは東京のデザイン会社であるGKデザイングループ(GKデザイン機構、GK設計、GKインダストリアルデザインなどで構成)が手掛けている。2016年(平成28年)5月にトータルデザイン業務に関するコンペティションが行われ、GKがトータルデザインを担当することとなった。GKデザイングループは広島市のアストラムラインや富山市におけるLRT事業においてもトータルデザインを担当した経験を持つ企業である[78][79]。
トータルデザイン
「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」の「LRTデザイン部会」にて2016年8月から検討が進められ、2016年10月に、トータルデザインにおけるデザインコンセプト「『雷都を未来へ』LRTによる未来のモビリティ都市の創造」が公表された[80][81]。
これは、古来より宇都宮周辺は夏に雷が多い気候であり、別名「雷都(らいと)」と呼ばれてきたこと、雷による夕立の恵みが豊作をもたらし、「らいさま」と呼ばれてきたこと、に由来する。雷を選んだ理由としては、「永続性を持ち 廃れないものとする『普遍性』」「他になく、宇都宮市と芳賀町の固有性を示す『独自性』」「多様な施設等のデザインに反映できる要素を持つ『展開性』」を有することが挙げられている[81]。
今後、これをもとに、住民参加を得ながら車両・停留場などの各種施設のデザインが検討されることとなっている[80][81]。
シンボルマーク
2020年(令和2年)6月29日にLRT事業のシンボルマークが決定した[82]。LRTシンボルマークは、「芳賀・宇都宮LRTの価値や存在を効果的に伝えるデザイン」をデザインの基本方針とし、「一目で芳賀・宇都宮LRTだとわかる個性的で明快なデザイン」「公共交通としての信頼性、安全性を感じさせるデザイン」「マイレールとしての誇りや愛着を醸成させるデザイン」を目指すとされ[83]、LRT事業そのものを表現し、一目で訴求・周知を図ることができる「象徴」の役割を担う、「事業のマーク」に位置付けている[82]。
シンボルマークについて、LRT事業は都市の骨格形成や拠点づくりに資するもので、住民の日常生活において必要不可欠となる多様な移動手段の確保に貢献する鉄軌道事業であり、こうした事業を持続可能な公共交通機関として将来にわたり維持・存続していくためには、事業主体である宇都宮市・芳賀町(整備事業者)と宇都宮ライトレール株式会社(運行事業者)が緊密な連携の下でそれぞれの役割を果たしながら一体となって事業を推進していくものだとされ、シンボルマークはLRT事業に関わる全てのものに共通し、それらを結びつける存在として作成するものと定義された[82]。
先述のトータルデザインコンセプト「雷都を未来へ」のモチーフである「雷の稲光」とシンボルカラーの「黄色」を用いたLRT事業を連想できる「象徴性」の高いデザインと、芳賀・宇都宮地域をつなぐ公共交通を表現するものとして、長期間にわたり使用できる永続性を持ち、すたれにくい「普遍性」を備えたデザインの両方を兼ね備えたものを求め、LRT事業を的確に、誰にでも、いつまでも伝えることできるというマークのデザインの考え方[82]の下、次に示す3つのデザインが作成された。
デザイン案 | コンセプト | 考え方 |
---|---|---|
A案 | 「雷都を未来へ」の考え方を直接的に表現したデザイン | 芳賀・宇都宮地域をつなぐ東西基幹公共交通としてLRTが宇都宮市民・芳賀町民、幅広い利用者から末永く愛されるものとなるよう、この事業のデザインの要である「雷都を未来へ」そのものをモチーフに、その考え方である、まちの顔となる「独自性」や地域固有の風土を感じる「雷の光」、将来イメージを牽引する「先進性」を具現化した図柄として作成 |
B案 | 東西方向を走る公共交通LRTをイメージしたデザイン | 栃木県中央地域の東西方向を拓き、宇都宮市と芳賀町をつなぐ基幹公共交通LRTが走る姿のイメージをモチーフに、「矢じり」という普遍的な記号を左右に2つ配置し、「軌道 (レール)」と「雷の稲光」の形にも重なるような図柄を作成 |
C案 | トータルデザインのモチーフである 「雷の稲光」を強調したデザイン | 芳賀・宇都宮地域を気候や風土を象徴するものであり、 誰もがイメージしやすい「雷の稲光」の形状をモチーフに、シンボルカラーの「黄色」の色彩パターンを工夫して立体感を持たせて、その存在感をさらに強調した図柄を作成 |
この3案の中から、A案が「古来、雷が芳賀・宇都宮地域に恵みを与えてきたように、『LRTがこの地に交流や活力といった恵みをもたらす役割を担う』という、『雷都を未来へ』の考え方を直接的に表現したデザインとなっていること」、「同じく『雷都を未来へ』を直接的に表現した車両とも高い親和性を持つデザインであり、この事業に関わる全てのものを結びつける上で分かりやすいことから宇都宮市民・芳賀町民へのスムーズな浸透も期待できるものと考えられること」が評価され、採用された[82]。
シンボルマーク策定に合わせ、LRT事業の通称「芳賀・宇都宮LRT」のロゴマークも作成された。和文のフォントは「ヒラギノ角ゴシックファミリー」、欧文のフォントは「Allumi Family」を指定する[82]。また、宇都宮ライトレール株式会社のロゴマーク[84]や、車両愛称「LIGHTLINE」のロゴマーク[85]も同様の形式で作成されている。
停留場デザイン
停留場のデザインのコンセプトは、「沿線の歴史と風土を未来へ継承し、沿線住民に愛され、支えられるデザイン」[86]であり、利用者が認識しやすい停留場にするとともに、経済性や維持管理などを考慮した統一した施設とすること、利用者の安全性やバリアフリー性を担保した停留場にするとともに、旅客施設としての快適な待合機能を有し、分かりやすい運行表示に配慮した施設とすること、シンボルとなる車両を引き立てるシンプルなデザインの停留場にするとともに、先述のトータルデザインコンセプト「雷都を未来へ」を表現するカラーリングと芳賀・宇都宮地域の風土を象徴する地場産材を活用する施設とすることを目指している[87]。
プラットホームは、路面からの高さが0.3 m、有効長が30.0 mで、HU300形車両に合わせている。有効幅は、対面式ホームの場合が2.2 m (ただし、宇都宮大学陽東キャンパス停留場は3.28 m)で、島式ホームの場合は3.5 mである。宇都宮駅東口停留場、平石停留場、清原地区市民センター前停留場、グリーンスタジアム前停留場、かしの森公園前停留場、芳賀・高根沢工業団地停留場は両側に乗り場のある島式ホームで整備される[87]が、これらはルートの起点もしくは終点、および軌道が交差点を右左折する箇所である。
- 対面式ホームの停留場の例(清陵高校前停留場)
- 島式ホームの停留場の例(清原地区市民センター前停留場)
- 地場産木材を活用した天井ルーバー(清陵高校前停留場)
停留場の設備
安全を確保するため、安全柵と手すりを設置し、車椅子利用者に配慮したスロープを設置する。壁面はパネル(防風ガラス)を用い、一定の透過性を確保する。快適な待合機能を確保するため、雨、雪や直射日光をしのげる屋根を有し、座って待てる腰掛けベンチを設置する。また、腰掛バーも設置する。ベンチは地場産業として生産される大谷石を活用する[87]。
上屋(柱・屋根)の色彩は、車両を引き立てる無彩色(ダークグレー)とし、上屋の形状は、華美な装飾をしない鉄骨造であり、天井面には地場産木材のルーバーを配置する[87]。
ガラス面には案内サイン、広告物、事業ドネーション、個性化デザインのスペース(後述)を関連法令に適合するかたちで配置する[87]。
壁面デザインの個性化
「まちの顔の創出」や「マイレール意識の醸成」を目的として、停留場壁面デザインを利用し、デザインの個性化に取り組む。個性化デザインに掲出するデザイン(図柄など)は、その地域ならではの特色を表現するとともに、デザインの選定で市民参加の機会を設けることで、「歴史と風土の未来への継承」と、「『私たちの駅』という意識醸成」に取り組む。[87][88]。
デザイン表現については、先述のトータルデザインコンセプト「雷都を未来へ」をもとに停留場をデザインしているため、その趣旨を理解したうえで、停留場ごとの個性化の目的を表現できるデザインのモチーフを1つ以上作成し、これを表現したデザインを作成することになっている[88]。
ただし、新しい都市の価値や風格(「まちの顔」)を創出するため、「まちの玄関口」に位置付けられている停留場である宇都宮駅東口停留場(宇都宮市)、芳賀町工業団地管理センター前停留場(芳賀町)、「産業拠点」に位置付けられている清原地区市民センター前停留場(宇都宮市)については、宇都宮市および芳賀町がデザインを検討する。そのため、住民参加による個性化はされない[88]。
宇都宮駅東口、芳賀町工業団地管理センター前、清原地区市民センター前を除く停留場については、沿線を今泉、峰、陽東、平石、清原、芳賀の6地区に分割し、デザインの専門家が在籍する栃木県デザイン協会と、LRTの各種デザインを検討する検討組織のLRTデザイン部会が「コアメンバー」として、そして各地区ごとに沿線住民が「地区別メンバー」として、ワークショップに参加し検討を行っていく。検討にあたっては、コアメンバーが6地区すべてのワークショップに参加し、デザイン素案の検討補助や全体の監修を行う。また、地区ごとに地区別メンバーが個性化デザインの素案を作成していく[88]。
なお、壁面個性化デザインは、停留場ごとに異なったモチーフで作られている。モチーフは、停留場の属する地域の文化や歴史、名所などをもとに決められている。各停留場ごとのモチーフは、次の通りである[89]。
停留場名 | テーマ |
---|---|
宇都宮駅東口 | 「県都 宇都宮」 |
東宿郷 | 「未来へつなぐ確かな時間」 |
駅東公園前 | 「憩う、躍動する」 |
峰 | 「峰に集う」 |
陽東3丁目 | 「みどりと育む産業の未来」 |
宇都宮大学陽東キャンパス | 「さくらが紡ぐ街」 |
平石 | 「自然と人の営み」 |
平石中央小学校前 | 「明日へ、未来へつなぐ」 |
飛山城跡 | 「浪漫の兆し」 |
清陵高校前 | 「未来を育む、大地の恵み、豊かな自然」 |
清原地区市民センター前 | 「人と自然と産業の共存」 |
グリーンスタジアム前 | 「駆け抜けろ!そして未来へ」 |
ゆいの杜西 | 「憩いの地、懐かしいのに新しい」 |
ゆいの杜中央 | 「子どもの笑顔が最優先の街、ゆいの杜」 |
ゆいの杜東 | 「いつだって、この街の優しさが育まれている」 |
芳賀台 | 「自然と共に生きる街」 |
芳賀町工業団地管理センター前 | 「ロマンのまち」 |
かしの森公園前 | 「あたたかき集いし郷の今昔」 |
芳賀・高根沢工業団地 | 「アタラシイがはじまる!うまれる!」 |
サインデザイン
サインデザインは、「スムーズな交通結節を促し、街の魅力を伝え、回遊性を高めるデザイン」を目指しており、LRTに関するデザインはダークグレー(無彩色)に白文字に、シンボルカラーの黄色を効果的に配色する。そのほか、道路上でLRTへ誘導するサインは、白色地に青文字に、乗り継ぎ施設(トランジットセンターなど)での交通情報に関するデザインは、青色地に白文字に配色する[88]。
ピクトグラムは、JIS案内図記号を使用し、対象の記号がない場合は作成する。表記は平易な日本語に英語を併記し、料金収受方法など、LRTの利用に関するものは、必要に応じて中国語(簡体字)と韓国語もつけ加える[88]。
また、宇都宮駅改札外コンコースの出口乗り換え誘導標および東西自由通路の施設誘導サインには、「ライトラインのりば」の表記と、LRTのピクトグラムや、東西自由通路サインにおいてはさらにLRTのシンボルマークも追加される予定である[88]。
「ライトライン(LIGHTLINE)」とはHU300形車両の愛称として公募されたもので、「ライトライン」の愛称の由来は、「雷都+LINE(道筋・つながり)」であり、「雷都」を冠した名称で、「LIGHT」はLRT(Light Rail Transit)の一部で、「光」「明るい」の意味もあり、「LINE」との組み合わせにより、「(未来への)光の道筋」といったメッセージが込められている[90]。「ライトライン」はHU300形車両のみならず、本路線の愛称としても利用される[91]。
導入空間・沿線概況
優先整備区間については導入空間が公表されている。
- JR宇都宮駅東口 - 国道4号交差部(宇都宮駅東口停留場〜駅東公園前停留場)
- 鬼怒通り(県道64号)を6車線から4車線に減少させ、道路中央部に導入[7]
宇都宮駅東口駅前広場に設置された宇都宮駅東口停留場を出発すると、半径25mの急カーブを曲がり進路を東へ変え、鬼怒通りへと向かう(画像1,2)。鬼怒通り上はセンターリザベーション方式の併用軌道である。鬼怒通り沿いにはオフィスビルやホテル、大型マンションなどが林立するビル街である。県道64号の新道(鬼怒通り)と旧道が交わる「東宿郷交差点」に東宿郷停留場、宇都宮市道1605号との交差点に駅東公園前停留場が設けられる。
- (画像1)宇都宮駅東口駅前広場(宮みらいライトヒル「水のテラス」)と広場を横切る電車
- (画像2)鬼怒通りで進行する軌道工事(2022年6月18日、宇都宮駅新幹線上りホームから撮影)
- 国道4号交差部(駅東公園前停留場〜峰停留場間)
- 国道4号オーバーパス(峰町立体)を補強の上、4車線から2車線に減少して道路中央部に導入[7]
- 国道4号 - 新国道4号手前(峰停留場〜平石停留場)
- 鬼怒通りを4車線から東行2車線、西行1車線の3車線に減少させ道路中央部に導入[7]
峰町立体を超えたところにある、宇都宮市道1603号線との交差点に峰停留場が設けられる。通り沿いは住宅街になり、高い建物は少なくなり戸建て住宅や病院(新宇都宮リハビリテーション病院)小規模な集合住宅が立ち並ぶ(画像3)。宇都宮市道2187号線との交点に陽東3丁目停留場、宇都宮市道5200号線と1726号線との交点に宇都宮大学陽東キャンパス停留場が設けられる(画像4)。宇都宮大学陽東キャンパス停留場の南側には、シンガー日鋼工場跡地を再開発したショッピング・センターのベルモールや住宅地「陽東桜が丘」があり、さらにその南側には停留場名の由来となった宇都宮大学陽東キャンパスがある。
- (画像3)陽東3丁目停留場と沿線風景(2023年4月1日)
- (画像4)宇都宮大学陽東キャンパス停留場(2023年4月1日)
宇都宮大学陽東キャンパス停留場を出発し、市道1449号線との交差点を通過すると、専用軌道へ入り、鬼怒通りを跨道橋でオーバークロスし、軌道は鬼怒通りからやや南側へと移る(画像5)。跨道橋を下ったところに島式ホーム2面4線の平石停留場が設けられる(画像6)。周辺の風景は住宅街から田園地帯へと姿を変える。
- (画像5)平石高架橋を下る試運転電車(HU300形)
- (画像6)平石停留場(2023年4月1日)
平石停留場を出発すると、車両基地へ向かう分岐線があり、そこを通過すると新4号国道をアンダーパスし、しばらく東進した場所の栃木県道158号下岡本上三川線(辰街道)との交点に平石中央小学校前停留場が設けられる。辰街道を横断し平石中央小学校の脇を通過すると軌道は南東方向へ進路を変え、高架橋(鬼怒川橋梁)へと上がってゆく。鬼怒川を鬼怒川橋梁で横断すると(画像7)、高度をやや下げ、高架駅の飛山城跡停留場に達する。飛山城跡停留場を出発すると、高度を上げ丘を超えた後、高度をさらに下げながら進路を南東から東へ変え(画像8)、清原学園通り(宇都宮市道379号線)の下をトンネルでくぐり、さらに急勾配を登り清陵高校前停留場へ達する。清陵高校前停留場の周辺は、作新学院大学、宇都宮市立清原中学校、名称の由来となった栃木県立宇都宮清陵高等学校が立地する学園地域である。
- (画像7)鬼怒川橋梁(2022年2月1日)
- (画像8)竹下町内の竹下高架橋と通過する試運転電車(2023年5月1日)
- 清原工業団地西端 - 清原工業団地管理センター(清陵高校前停留場〜清原地区市民センター前停留場)
- 4車線から2車線に減少させて道路中央部に導入、既存2車線区間は道路拡幅で対応[7]
清陵高校前停留場から先は宇都宮清原工業団地内を通過し沿線は工場が立ち並ぶ工業地帯となり、宇都宮市道1435号・1436号線の北側を通過するサイドリザベーション方式の併用軌道へと変わる(画像9)栃木住友電工と中外製薬工業宇都宮工場の間をS字カーブと直線で抜けた先に清原地区市民センター前停留場が設けられる(画像10)。
清原地区市民センター前停留場の南側には、名称の由来となった宇都宮市清原地区市民センターや、清原地区生涯学習センターといった公共施設のほか、都市公園の清原中央公園がある。清原中央公園内には宇都宮市清原体育館、宇都宮清原球場、清原中央公園テニスコートなど大型スポーツ施設が立地し、工業団地内に所在しながらも市民の憩いの場でもある。
- (画像9)サイドリザベーション方式の併用軌道(宇都宮市清原工業団地地内、2022年5月21日)
- (画像10)清原地区市民センター前停留場(2023年5月1日)
清原地区市民センター前停留場を出発すると、国道408号(清原中央通り)を横断しながら曲線を曲がり、進路を北へ変える。清原中央通り東側を通過するサイドリザベーション方式の併用軌道(画像11)である。宇都宮市道1440号線との交点にグリーンスタジアム前停留場が設けられる。グリーンスタジアム前停留場の東側には、名称の由来となり日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟する栃木SCの本拠地である栃木県グリーンスタジアムがある。
- (画像11)サイドリザベーション方式の併用軌道(グリーンスタジアム前〜ゆいの杜西間、2023年5月1日)
- 清原工業団地北端 - 野高谷(のごや)町交差点
- 高架専用軌道による立体交差[7]
グリーンスタジアム前停留場から北進し続けると野高谷高架橋(画像12)がある。野高谷高架橋で栃木県道64号宇都宮向田線の西行き車線をオーバークロスしつつ進路を再び東へ変え、道路中央部へ進入する。
- (画像12)野高谷高架橋の全景(2023年5月1日)
- 野高谷交差点 - 管理センター前交差点
- 県道69号宇都宮茂木線の道路中央部に導入、車線数は維持[7][8]
野高谷高架橋を抜け、栃木県道69号宇都宮茂木線と栃木県道64号宇都宮向田線の交点の「刈沼町交差点」にゆいの杜西停留場が設けられる(画像13)。ゆいの杜は産・住・学が共存し先端技術産業が集積する宇都宮テクノポリスの中心地域である。沿線はスーパーマーケットやホームセンター、飲食店や自動車販売店などロードサイド店舗が立ち並ぶ住宅街である。宇都宮市道5995・2211号線の交点にゆいの杜中央停留場、宇都宮市道5991・5992号線との交点にゆいの杜東停留場が設けられる。
宇都宮市を抜け芳賀郡芳賀町の芳賀工業団地内に入ると風景は住宅街から工業団地へと変わる。「芳賀台交差点」に芳賀台停留場(画像14)、「管理センター前交差点」に芳賀町工業団地管理センター前停留場が設けられる。
- 管理センター前交差点 - 本田技研北門
- 道路中央部に導入、車線数は維持[8]
芳賀町工業団地管理センター前停留場を出発すると進路を北へ変える。芳賀町工業工業団地管理センター前からかしの森公園前停留場間の途中には谷状の地形になっている区間があり、約60パーミル(‰)という日本の路面電車屈指の急勾配となっている(画像15)。勾配を抜けた先、かしの森公園の前にかしの森公園前停留場が設けられ、さらに北進した場所に終点となる芳賀・高根沢工業団地停留場が設けられる。芳賀・高根沢工業団地停留場は、塩谷郡高根沢町の境界近くに所在し、付近には芳賀町と高根沢町にまたがる広大な敷地面積を持つ本田技研工業生産企画統括部・パワートレイン生産企画統括部及び研究機関である本田技術研究所四輪R&Dセンターがある。
- (画像15)芳賀郡芳賀町大字下高根沢地内の60‰勾配区間を走行する電車
事故・事件・アクシデント
試運転中の脱線事故
2022年(令和4年)11月19日午前0時30分ごろ、宇都宮駅東口停留場付近で分岐器の入線試験を行なっていた試運転電車(HU300形HU306編成3両)が、分岐器を通過し停留場2番線へ向かう曲線進入時、運転士が異常を感じ、非常ブレーキをかけたものの先頭車(HU306-A)の4輪、中間車(HU306-C)が脱線し駅前広場に10メートルほど車両が進入した。人的被害はなかった[92][61][93]。
脚注
注釈
- 烏山線の正式な起点は宝積寺駅だが、一部を除き宇都宮駅を始発・終着とする。
出典
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- “LRT8月26日開業と正式表明 宇都宮市 脱線事故有識者会議の最終報告踏まえ”. 下野新聞. (2023年6月2日) 2023年6月2日閲覧。
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- ロゴマーク-宇都宮ライトレール株式会社
- 愛称ロゴ-芳賀町公式webサイト
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- LRT車両の愛称が「ライトライン」に決定しました - 宇都宮市公式Webサイト(2021年4月23日)2023年4月8日閲覧
- 例:広報「うつのみや」令和4年11月号 1ページ - 『未来へ進むライトライン』
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- “LRTのケーブルまた盗難 570メートル被害 宇都宮市”. 下野新聞社. (2023年4月7日) 2022年4月7日閲覧。
外部リンク
- 宇都宮ライトレール株式会社 - 公式サイト
- 芳賀・宇都宮LRT - 宇都宮市
- NOVE NEXT うつのみや - 芳賀・宇都宮LRT公式Webサイト(宇都宮市LRT整備室)
- LIGHTLINE START!!! - LRT開業記念特設サイト(宇都宮市LRT整備室)
- 雷都レールとちぎ
- 宇都宮ライトレール株式会社 (@u_lightrail) - Twitter