カム・テイスト・ザ・バンド

カム・テイスト・ザ・バンド』(Come Taste the Band)は、1975年に、イングランド出身のロック・バンド、ディープ・パープルが発表したバンドにとって10枚目のスタジオ・アルバムである。同年11月リリースの本作は、ディープ・パープルとその長年の協力者であるマーティン・バーチの共同制作と録音による作品である。これは脱退したリッチー・ブラックモアの後任ギタリストとして、バンドにとって初めてのアメリカ人メンバーとなるトミー・ボーリンをフィーチャーした唯一のアルバムであり、1984年に再結成されるまでは最後のスタジオ・アルバムでもあった。

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カム・テイスト・ザ・バンド
ディープ・パープルスタジオ・アルバム<meta itemprop='albumReleaseType' content='アルバム' />
リリース
録音 1975年8月-9月
ジャンル ハードロック
時間
レーベル イギリスの旗パープル・レコード(オリジナル盤)
EMI(リイシュー盤)
アメリカ合衆国の旗日本の旗ワーナー・ブラザース・レコード
プロデュース マーティン・バーチ
ディープ・パープル
専門評論家によるレビュー
  • Allmusic 星3.5 / 5<meta itemprop='reviewBody' content='3.5' /><meta itemprop='bestRating' content='5' /><meta itemprop='worstRating' content='0' /> link
チャート最高順位
  • 14位(日本[1]
  • 19位(イギリス[2]
  • 43位(アメリカ[3]
ディープ・パープル アルバム 年表
嵐の使者
(1974年)
カム・テイスト・ザ・バンド
(1975年)
メイド・イン・ヨーロッパ
(1976年)

背景

リッチー・ブラックモアがバンドを去ったとき、多くのファンやメディアは、リッチー・ブラックモアがいないディープ・パープルは考えられず、解散するであろうと予想されていた。

ジョン・ロードにバンドを継続させる様にと頼んだのはデイヴィッド・カヴァデールであり、デイヴィッド・カヴァデールの推薦で、後任ギタリストとしてトミー・ボーリンが選ばれた。なお、トミー・ボーリンに決定するまでの間、バンドは元ハンブル・パイクレム・クレムソン、更にはジェフ・ベックを後任ギタリスト候補に挙げていたが実現はしなかった。

音楽的にこのアルバムは、ディープ・パープル第3期が制作した2作のアルバムよりも商業的であり、伝統的なハードロックを志向しながらも、ソウルファンクの要素がより強調された作品となった。またこのアルバムは、グレン・ヒューズと同じくソウルとファンク、そしてジャズの影響を受けていたトミー・ボーリンの音楽的志向を全面的に反映させているため、そのファンク志向は前作のアルバム『嵐の使者』よりも更に増していた。トミー・ボーリンが参加したことで、バンドに創造的自由が生まれたが、これはリッチー・ブラックモア在籍時には不可能なことであった。

録音

アルバムのリハーサルは当初、本アルバムの録音エンジニアであったロバート・サイモンによって録音された。しかし、スケジュールについて意見が合わず、バンドはロバート・サイモンのパイレート・サウンド・スタジオを去り、ミュンヘンにあるムジークランド・スタジオを選んだ。

グレン・ヒューズジョン・ロードによると、このアルバムはほとんどロサンゼルスで作曲され、ミュンヘンにて録音された。ただし「カミン・ホーム」はミュンヘンにて作曲された。グレン・ヒューズは当時コカイン中毒の上、更に肝炎を患い、その治療を受けるために録音が完了する前にイングランドに戻った。そのため、グレン・ヒューズは「カミン・ホーム」の録音、アルバム・ジャケット撮影には参加していない。

ツアーでのトラブル

ジョン・ロードの『Deep Purple - Getting Tighter, the story of MK-IV』(2011年)というビデオでのインタビューによると、このアルバムをプロモートするためのツアーは、カリフォルニアハワイニュージーランドで順調にスタートした。しかし、同ドキュメンタリーでのグレン・ヒューズによると、インドネシアジャカルタで、バンドは殺人罪をでっち上げられたという。更に、ジョン・ロードとグレン・ヒューズによると、グレン・ヒューズと他2名はクルーの一人だったパディ・キャラハンの不審な状況の死に関して、犯人としてでっち上げられ投獄された。

プロモーターはまた、第二夜のコンサートのチケットを売り、バンドに一晩だけ元の料金で演奏することを強要した。グレン・ヒューズは、銃を突きつけられながら第二夜のコンサートに出演、終演後速やかに刑務所へと戻された。この間、指を負傷したトミー・ボーリンは、プロモーターにより、痛み止めのモルヒネと偽ってヘロインを与えられ、そのことが原因でバンドの次の目的地、日本でのトラブルの元となった。グレン・ヒューズが起訴されたままバンドが出国するために、ディープ・パープルのマネージャーはすべての経費だけでなく、何千もの余分な金をポケットマネーからインドネシア軍と空港警備隊に支払って、ジャカルタから出発しなければならなかった。

バンドはまもなく次の目的地である日本へ向かった。日本滞在中トミー・ボーリンはジャカルタで与えられたヘロインを摂取し、更に腕の上で8時間も眠っていたことが祟り、ステージでは本来の実力が発揮できずギターを満足に弾けない状態となっていた。グレン・ヒューズによると、トミー・ボーリンの担当パートの多くが、ジョン・ロードのオルガンやキーボードでカバーしなければならず、ジョン・ロードやイアン・ペイスのインタビューによると「トミーは開放弦でマイナーやメジャーキーに調整した複数のギターを、曲により使い分けてコンサートを続けるしかなかった」とコメントしていた。トミー・ボーリンは曲によって「バレーコード」中心の運指で演奏するパターンを繰り返していたため、ファンから酷評されてしまう。このライブはレコーディングならびにビデオ撮影され、後に『ラスト・コンサート・イン・ジャパン』としてリリースされた(この時、オープニング曲「紫の炎」でジョン・ロードは、本来ギターで弾くはずのオープニングリフをオルガンで弾いていた)。

リリースと反響

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
Allmusic3.5/5stars[4]
Rolling Stone(favourable)[5]
Sputnik Music1.5/5stars[6]

一般的にこのアルバムはディープ・パープルの作品の中でも評価の低いアルバムのひとつであったが、リリース時の売れ行きはそれほど悪くはなかった (UKチャートで19位、USチャートでは43位)。アルバムは英国で6万枚売れ、BPIによって1975年11月1日にシルバーディスク認定された。[7]

このアルバムのツアーが1976年3月に終わった後、デヴィッド・カヴァデール、グレン・ヒューズ、トミー・ボーリンが相次いでバンドを去り、ディープ・パープルは8年もの間活動を休止することになる。その後、トミー・ボーリンは1976年12月にヘロインの過剰摂取で死亡した。近年ではこのアルバムに対しトミー・ボーリンが果たした役割の重要性が称えられ再評価を受けている。一方、このアルバムがリリースされた2年前にバンドを去ったイアン・ギランは、「このアルバムは真のディープ・パープルの作品ではない」と語っている。[8]

再リリース

1990年、メタル・ブレイド・レコーズにより、このアルバムはリマスター再リリースされ、ワーナー・ブラザースより販売された。更に、Friday Musicレーベルにより2007年7月31日に『メイド・イン・ヨーロッパ』『嵐の使者』とともに、再々リリースされた。

Friday Musicのウェブサイトは、アルバムをデジタル・リマスタリングしたと主張するが、どのテープが音源として使用されたかは不明であり、オリジナル音源のテープがマスターテープとして使用されたとは考えられない(EMIはこのアルバムのマスターテープは行方不明であると何年も言い続けている)。

2009年12月ディープ・パープル鑑賞会 (DPAS) は、オリジナル・マルチトラック・マスターが最近発見され、ボーナストラックを含む正式なリマスター・バージョン(グレン・ヒューズとケヴィン・シャーリーのリミックスを含む) が、2010年にリリースされると発表した。

35周年記念版

2010年10月25日にリリースされた2-CDデラックス版35周年記念版はリマスターされたオリジナル・アルバムに加え、貴重なUSシングル版の「You Keep on Moving」を1枚目のディスクに、フルアルバムのリミックスと2曲の未発表曲(1975年版から除かれた3分の曲「Same in LA」とイアン・ペイスとトミー・ボーリンの5分間のインストゥルメンタル・ジャム「Bolin/Paice Jam」)を2枚目のディスクに収録している。[9] [10]

収録曲

オリジナルのLPリリース

サイド1
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「Comin' Home」(Tommy Bolin, David Coverdale, Ian Paice)  
2.「Lady Luck」(Jeff Cook, Coverdale)  
3.「Gettin' Tighter」(Bolin, Glenn Hughes)  
4.「Dealer」(Bolin, Coverdale)  
5.「I Need Love」(Bolin, Coverdale)  
サイド2
#タイトル作詞作曲・編曲時間
6.「Drifter」(Bolin, Coverdale)  
7.「Love Child」(Bolin, Coverdale)  
8.「This Time Around" / "Owed to 'G'」(Hughes, Jon Lord / Bolin)  
9.「You Keep on Moving」(Coverdale, Hughes)  

35周年記念版2CD

ディスク1 (オリジナル・アルバム・リマスター)
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「Comin' Home」  
2.「Lady Luck」  
3.「Gettin' Tighter」  
4.「Dealer」  
5.「I Need Love」  
6.「Drifter」  
7.「Love Child」  
8.「This Time Around/Owed to 'G'」  
9.「You Keep on Moving」  
10.「You Keep on Moving (Single Edit)」(Bonus track)  
ディスク2 (2010年 オリジナル・アルバム・リミックス)
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「Comin' Home」  
2.「Lady Luck」  
3.「Gettin' Tighter」  
4.「Dealer」  
5.「I Need Love」  
6.「You Keep on Moving」  
7.「Love Child」  
8.「This Time Around」  
9.「Owed to 'G'」  
10.「Drifter」  
ボーナス・トラック (未発表曲)
#タイトル作詞作曲・編曲時間
11.「Same in LA」(Coverdale, Hughes, Paice, Lord)  
12.「Bolin/Paice Jam」(Bolin, Paice)  

メンバー

ディープ・パープル
その他
  • プロデュース : マーティン・バーチディープ・パープル
  • 最終ミックス : マーティン・バーチ、イアン・ペイス
  • 録音エンジニア : マーティン・バーチ
  • カバー写真 : ピーター・ウィリアムズ
  • リマスター : デイヴ・シュルツ、ビル・イングロット ※ロサンゼルス、Digiprepにて
  • 2010リミックス : ケヴィン・シャーリー ※リミックス場所はザ・ケイヴ (カリフォルニア州マリブ)
  • マスター : ボブ・ラドウィグ

ランキング

脚注

  1. 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.205
  2. ChartArchive - Deep Purple
  3. Deep Purple - Awards : AllMusic
  4. Allmusic review
  5. Rolling Stone review
  6. http://www.sputnikmusic.com/review/33404/Deep-Purple-Come-Taste-the-Band/
  7. BPI certified awards-Silver”. 2009年2月21日閲覧。
  8. Gillan Has 'No Interest' In Deep Purple Mk III, Says Glenn Hughes Is 'Copying Stevie Wonder'”. 2010年10月24日閲覧。
  9. Deep Purple Appreciation Society. Deep Purple, Come Taste The Band”. Deep-purple.net. 2012年2月10日閲覧。
  10. bravewords.com. > News > DEEP PURPLE - Come Taste The Band 35th Anniversary Due In October; Details Available”. Bravewords.com. 2012年2月10日閲覧。
  11. Come taste the Band on European Charts 1975”. 2012年10月24日閲覧。
  12. The Official Charts Company - Come Taste the Band”. The Official Charts Company (2013年5月5日). 2014年4月6日閲覧。
  13. Come taste the Band on Billboard”. Rovi Corporation / Billboard. 2012年10月24日閲覧。
  14. "Argentinian album certifications – Deep Purple – Stormbringer". Argentine Chamber of Phonograms and Videograms Producers. Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  15. "British album certifications – Deep Purple – Stormbringer". British Phonographic Industry. Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明) Enter Stormbringer in the field Keywords. Select Title in the field Search by. Select album in the field By Format. Select Silver in the field By Award. Click Search
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