NHKマイルカップ

NHKマイルカップ(エヌエイチケイマイルカップ)は、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬重賞競走GI)である。

NHKマイルカップ
NHK Mile Cup[1]
第23回NHKマイルカップ
第23回NHKマイルカップ
優勝馬:ケイアイノーテック
(鞍上:藤岡佑介
開催国 日本の旗 日本
主催者 日本中央競馬会
競馬場 東京競馬場
創設 1996年5月12日
2022年の情報
距離 芝1600m
格付け GI
賞金 1着賞金1億3000万円
出走条件 サラ系3歳牡馬牝馬(国際)(指定)
負担重量 定量(牡馬57kg、牝馬55kg)
出典 [2][3]

競走名の「NHK」は寄贈賞を提供している特殊法人日本放送協会の略称で、東京都渋谷区神南に本部を置く公共放送[4]

正賞はNHK杯日本馬主協会連合会会長賞[2][3]

概要

1953年から1995年まで東京優駿(日本ダービー)のトライアル競走として施行されていた「NHK杯」を前身としている[5]。当時はクラシック競走に出走できなかった外国産馬や短距離適性のある馬に目標となる大レースを4歳(現3歳)春季に創設しようという気運が高まり、1996年に春の4歳(現3歳)マイル王決定戦として新設された[5][注 1]。それゆえ、創設時は「マル外ダービー[7]といわれたこともある。ただし、こうした外国産馬を主体とするような見方に対しては異論もあり、当時業務部にて競馬番組の変更に関与していたJRA理事の吉崎一郎によれば、「短距離適性のある3歳馬のためのGI競走が必要」とする意見自体は以前からあり、そこに当時の外国産馬の状況を踏まえて「外国産馬が多く出走してくる」という予測があった[8]。それゆえに、レース設立の最大かつ本来の目的は外国産馬絡みのものがメインではなく、あくまで「3歳馬の短距離GI」であるとする見解もある[8]

創設当初より外国産馬が出走可能なほか、指定交流競走として所定の条件を満たした地方競馬所属馬も出走が可能となっている[5]。2009年より国際競走となり、外国馬も出走可能になった[5]

NHK交響楽団のメンバー(正式には、正団員以外を交えた「NHK交響楽団とその仲間たちによる金管アンサンブル」)が、発走前のファンファーレを生演奏するのが恒例となっている[9][10]。また、過去のダービートライアルとしてのNHK杯からの名残りで、八大競走のうちの牡馬三冠・天皇賞有馬記念などと同格扱いで、NHK総合テレビジョンから生中継されている。

競走条件

以下の内容は、2022年現在[2][3]のもの。

出走資格:サラ系3歳牡馬・牝馬(出走可能頭数:最大18頭)

  • JRA所属馬
  • 地方競馬所属馬(後述)
  • 外国調教馬(優先出走)
  • 騸馬(去勢した牡馬)は出走できない[注 2]

負担重量:定量(牡馬57kg、牝馬55kg)

出馬投票を行った馬のうち優先出走権のある馬から優先して割り当て、その他の馬は通算収得賞金の総計が多い順に割り当てる(出走申込馬が出走可能頭数を超え、かつ収得賞金が同額の馬が複数いる場合は抽選)[11]

JRA所属馬の優先出走権

競走名競馬場距離必要な着順
ニュージーランドトロフィーGII日本の旗中山競馬場芝1600m3着以内
アーリントンカップGIII日本の旗阪神競馬場芝1600m3着以内

収得賞金がない馬(未勝利馬・未出走馬など)は原則として出走できないが、ニュージーランドトロフィー及びアーリントンカップで2着以内の成績を収め、優先出走権を得れば出走できる[11][注 3]

地方競馬所属馬の出走資格

地方競馬所属馬は、同一年度に行われる下表のステップ競走で所定の成績を収めた馬に優先出走権が与えられる[12][11]

競走名競馬場距離必要な着順
ニュージーランドトロフィーGII日本の旗中山競馬場芝1600m3着以内
桜花賞GI日本の旗阪神競馬場芝1600m2着以内
アーリントンカップGIII日本の旗阪神競馬場芝1600m3着以内
皐月賞GI日本の旗中山競馬場芝2000m2着以内

上記のほか、JRAで行われる芝の3歳重賞競走優勝馬にも出走資格が与えられる[5]

賞金

2022年の1着賞金は1億3000万円で、以下2着5200万円、3着3300万円、4着2000万円、5着1300万円[2][3]

歴史

年表

  • 1996年 - 4歳牡馬・牝馬限定の重賞競走(GI[注 4])として新設[5]
  • 2001年 - 馬齢表示の国際基準への変更に伴い、出走資格を「3歳牡馬・牝馬」に変更[5]
  • 2007年 - 日本のパートI国昇格に伴い、格付表記をJpnIに変更[5]
  • 2009年
    • 国際競走に変更され、外国調教馬が9頭まで出走可能となる[5]
    • 格付表記をGI(国際格付)に変更[5]
  • 2020年 - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため「無観客競馬」として実施[13](2021年も同様[14])。

歴代優勝馬

優勝馬の馬齢は、2000年以前も現行表記に揃えている。

コース種別を記載していない距離は、芝コースを表す。

回数施行日競馬場距離優勝馬性齢タイム優勝騎手管理調教師馬主
第1回1996年5月12日東京1600mタイキフォーチュン牡31:32.6柴田善臣高橋祥泰(有)大樹ファーム
第2回1997年5月11日東京1600mシーキングザパール牝31:33.1武豊森秀行植中倫子
第3回1998年5月17日東京1600mエルコンドルパサー牡31:33.7的場均二ノ宮敬宇渡邊隆
第4回1999年5月16日東京1600mシンボリインディ牡31:33.8横山典弘藤沢和雄シンボリ牧場
第5回2000年5月7日東京1600mイーグルカフェ牡31:33.5岡部幸雄小島太西川清
第6回2001年5月6日東京1600mクロフネ牡31:33.0武豊松田国英金子真人
第7回2002年5月4日東京1600mテレグノシス牡31:33.1勝浦正樹杉浦宏昭(有)社台レースホース
第8回2003年5月11日東京1600mウインクリューガー牡31:34.2武幸四郎松元茂樹(株)ウイン
第9回2004年5月9日東京1600mキングカメハメハ牡31:32.5安藤勝己松田国英金子真人
第10回2005年5月8日東京1600mラインクラフト牝31:33.6福永祐一瀬戸口勉大澤繁昌
第11回2006年5月7日東京1600mロジック牡31:33.2武豊橋口弘次郎前田幸治
第12回2007年5月6日東京1600mピンクカメオ牝31:34.3内田博幸国枝栄金子真人ホールディングス(株)
第13回2008年5月11日東京1600mディープスカイ牡31:34.2四位洋文昆貢深見敏男
第14回2009年5月10日東京1600mジョーカプチーノ牡31:32.4藤岡康太中竹和也上田けい子
第15回2010年5月9日東京1600mダノンシャンティ牡31:31.4安藤勝己松田国英(株)ダノックス
第16回2011年5月8日東京1600mグランプリボス牡31:32.2C.ウィリアムズ矢作芳人(株)グランプリ
第17回2012年5月6日東京1600mカレンブラックヒル牡31:34.5秋山真一郎平田修鈴木隆司
第18回2013年5月5日東京1600mマイネルホウオウ牡31:32.7柴田大知畠山吉宏(株)サラブレッドクラブ・ラフィアン
第19回2014年5月11日東京1600mミッキーアイル牡31:33.2浜中俊音無秀孝野田みづき
第20回2015年5月10日東京1600mクラリティスカイ牡31:33.5横山典弘友道康夫杉山忠国
第21回2016年5月8日東京1600mメジャーエンブレム牝31:32.8C.ルメール田村康仁(有)サンデーレーシング
第22回2017年5月7日東京1600mアエロリット牝31:32.3横山典弘菊沢隆徳(有)サンデーレーシング
第23回2018年5月6日東京1600mケイアイノーテック牡31:32.8藤岡佑介平田修亀田和弘
第24回2019年5月5日東京1600mアドマイヤマーズ牡31:32.4M.デムーロ友道康夫近藤利一
第25回2020年5月10日東京1600mラウダシオン牡31:32.5M.デムーロ斉藤崇史(有)シルクレーシング
第26回2021年5月9日東京1600mシュネルマイスター牡31:31.6C.ルメール手塚貴久(有)サンデーレーシング
第27回2022年5月8日東京1600mダノンスコーピオン牡31:32.7川田将雅安田隆行(株)ダノックス
第28回2023年5月7日東京1600mシャンパンカラー牡31:33.8内田博幸田中剛青山洋一

NHKマイルカップの記録

  • レースレコード - 1:31.4(第15回優勝馬ダノンシャンティ)[5]
  • 最多優勝騎手 - 3勝
    • 武豊(第2回・第6回・第11回)、横山典弘(第4回・第20回・第22回)[15]
  • 最多優勝調教師 - 3勝
    • 松田国英(第6回・第9回・第15回)
  • 最多勝利種牡馬 - 3勝

脚注・出典

注釈

  1. 回次は1996年の競走を第1回としているが、JRA-VANでは「NHK杯のGI昇格[6]」とする考え方も示されている。ただしNHK杯は距離2000mであった。
  2. ただしクラシック競走と違い、本競走では騸馬排除の根拠とされる「繁殖馬の選定」を明確に謳っているわけではない。これは朝日杯フューチュリティステークスニュージーランドトロフィーでも同様である。
  3. 重賞競走では収得賞金が2着まで加算される[11]ため、未勝利馬がトライアル競走で2着以内に入れば収得賞金を得ることができる。
  4. 当時の格付表記は、JRAの独自グレード。

出典

  1. IFHA Race Detail NHK Mile Cup”. 2022年5月2日閲覧。
  2. 重賞競走一覧(レース別・関東) (PDF). 日本中央競馬会. p. 16. 2022年5月2日閲覧。
  3. 令和4年第2回東京競馬番組(第1日 - 第6日) (PDF). 日本中央競馬会. 2022年5月2日閲覧。
  4. 2022年度第2回東京競馬特別レース名解説 (PDF). 日本中央競馬会. p. 4. 2022年5月2日閲覧。
  5. 歴史・コース:NHKマイルカップ 今週の注目レース”. 日本中央競馬会. 2022年5月2日閲覧。
  6. 「第14回NHK杯マイルカップ特集(歴代優勝馬ピックアップ:タイキフォーチュン)」 - JRA-VAN、2015年4月12日閲覧
  7. JRA優駿×JRAレーシングビュアー東京優駿物語・豪脚を武器に他馬をねじ伏せ ついに誕生した“新・二冠馬”キングカメハメハ
  8. 外国産タイキフォーチュン初代王者/NHKマイルC”. 日刊スポーツ (2018年5月1日). 2023年5月7日閲覧。
  9. NHKマイルカップでファンファーレ 活動報告 NHK交響楽団 2015年5月19日
  10. (PDF)『平成30年第2回東京競馬(第1日~第8日)開催日イベントのお知らせ』(プレスリリース)日本中央競馬会、2018年4月14日https://company.jra.jp/7403/press/201804/201804141103.pdf2019年4月27日閲覧
  11. 競馬番組一般事項 「V 出馬投票」 (PDF). 日本中央競馬会. p. 18 (2022年). 2022年5月2日閲覧。
  12. 「地」が出走できるGI競走とそのステップ競走について【令和4年度】 (PDF). 日本中央競馬会. 2022年5月2日閲覧。
  13. 4月25日(土曜)から5月31日(日曜)までの中央競馬の開催等について”. 日本中央競馬会 (2020年4月23日). 2021年5月4日閲覧。
  14. 4月25日(日曜)からの無観客競馬の実施とウインズ等の営業取りやめ”. 日本中央競馬会 (2021年4月23日). 2021年5月4日閲覧。
  15. 連覇としてはミルコ・デムーロ(第24回・第25回)が記録

各回競走結果の出典

馬主名義を含む競走結果
馬主名義を除く競走結果

関連項目

  • NHK杯 - NHK主催の各種競技大会
  • きさらぎ賞 - NHKより優勝杯が提供されており、「NHK賞」の副称が付いている

外部リンク

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