雑炊
雑炊(ぞうすい)は日本料理で、醤油や味噌などの調味料で味を付け、他の食品(肉類、魚介類、キノコ類や野菜)などとともに飯を煮たり、粥のように米から柔らかく炊き上げた料理[1]。おじや・こながきとも呼ばれ、冬の季語[1]。
概要
米飯の保温や再加熱が容易でなかった時代には、冷や飯の再利用方法のひとつとして味噌汁等を混ぜたりして家庭でも頻繁に作られていた。現在では鍋料理の残り汁を利用した締めや、体調不良時の栄養補給として粥と同じように用いられることが多い。
種類
おじや
語源
一般的には「雑炊」を意味する女房言葉として認識されているが、はっきりした語源は不明である。米を煮る音が「じやじや」と聞こえるからという説や、スペイン語で(調理器具の)鍋を意味する語「olla」(オジャ)によるという説などもある。
おじやと雑炊の違い
おじやと雑炊は同じ意味で用いられる例が多いが、地域や家庭によっては、別種のものとして認識されることもある。ただし、その区別は広く共通のものとはいい難い。以下はその例。
- 調理にあたり、米飯をいったん水で洗い、表面の粘りをとってから用いることで、さらっと仕上げたものが雑炊。そうでないのがおじや。
- 汁とともに温めるだけ、または水分が飛ぶほどには煮込まず、米飯の粒の形を残すものが雑炊。煮込んで水分を飛ばし、米飯の粒の形をさほど残さないのがおじや。
- 味噌や醤油で味付けをしたものをおじやと呼び、塩味または煮汁が白いものは雑炊と認識している地域がある。その一方で塩味に限らず醤油味のものも雑炊と呼ぶ地域もある。
ジューシー
沖縄料理のジューシー(またはひらがな表記の「じゅーしー」。本来の方言名はジューシーメー)は、雑炊(雑炊飯)の転訛であるとされる。ただし、生米から炊き上げる通常の炊き込みご飯も、水分の多い雑炊も共にジューシーと呼称される[2]。厳密にいえば、炊き込みご飯はクファジューシー(硬い雑炊)、雑炊はヤファラジューシー(柔らかい雑炊)と区別される。
クファジューシーと本土の炊き込みご飯との大きな違いは、炊き込み時(あるいは炊き上がり)にラード(またはマーガリン)を加えることで、具材は三枚肉、ヒジキ、ニンジン、シイタケ、こんにゃくなどが定番である。
ヤファラジューシーには三枚肉などの豚肉や、フーチバー(ヨモギの葉)[3]、カンダバー(サツマイモの葉)[3]、チンヌク(サトイモ)、アーサ(ヒトエグサ)などが用いられる。仕上げとして生卵やマーガリンを落とすことも一般的である。
戦前までは甘藷を主食とした沖縄では、たまの機会に食べる米のご飯は贅沢品であった。現在も慶事や仏事の節目のご馳走として特別なジューシーが作られる。
雑炊食堂
1942年(昭和17年)、第二次世界大戦下で食糧事情が逼迫すると、市中の食堂は外食券を持つ者だけに食事を提供する外食券食堂が中心となった。一方、この制度外で外食券を持たない者に食事を提供する場として、1944年(昭和19年)からは雑炊食堂が制度化された。東京都内では上野松坂屋、浅草松屋などのデパートや百貨店の食堂も雑炊食堂に衣替えするなど約150軒を数えた。雑炊は規格化され、米5勺に野菜や魚介類を3-4品を煮込み、出来上がり量2合5勺、120-130匁を基準とした。定価は場所により20銭-30銭とされた[4]。
出典
- 広辞苑第5版
- “クファジューシー 沖縄県 | うちの郷土料理:農林水産省”. 農林水産省. 2023年4月4日閲覧。
- “ヤファラジューシー 沖縄県 | うちの郷土料理:農林水産省”. 農林水産省. 2023年4月5日閲覧。
- 東京で百五十軒が新たに開店(昭和19年2月24日 毎日新聞(東京 夕刊))『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p369 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、雑炊に関するカテゴリがあります。