神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る』(かみのこどもたちはみなおどる)は、村上春樹の連作短編小説集。2000年2月に新潮社より刊行された。『新潮』に「地震のあとで」という副題付きで連載された、表題作『神の子どもたちはみな踊る』をはじめ5編の短編と、書き下ろし短編1編を収録する。2002年2月に新潮文庫として文庫化された。

神の子どもたちはみな踊る
著者 村上春樹
イラスト 北脇昇
発行日 2000年2月25日
発行元 新潮社
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 並製本
ページ数 203
コード ISBN 4-10-353411-7
ウィキポータル 文学
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本書の登場人物は皆、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災に間接的に関わっている。また村上は「解題」において、同年3月にオウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件との関連にも触れており、この短編集では以後の作品に出てくる「ある種の圧倒的な暴力」の片鱗を描いているという。

装画

単行本の装画に使われた北脇昇の「空港」

単行本の装画(表紙、裏表紙、扉絵)には、北脇昇の「空港」(1937年)が使用された。また各短編のタイトルに付けられた挿絵も北脇の作品である。文庫化された際も「空港」が表紙に使用された。1997年東京国立近代美術館で開かれた特集展示「北脇昇展」を見たときに村上は「とても心が惹かれ」たという。村上は次のように述べている。「東京の近代美術館で北脇昇さんの特集展示をやっていて、それを見てとても心を惹かれました。戦前のシュールレアリスト風の絵画から、戦争中のいささか国家主義的色彩をふくんだ作品、そして深く沈潜した戦後の作品へとスタイルは大きく変化するものの、彼の絵の中に一貫して含まれている『異様な個人的風景』は、僕の作品のある部分に通底しているような気がしたのです」[1]。なお、現在の新潮文庫版は英訳版と同じもの(カエルが3匹立ち並んでいるイラスト)を使用している。

ゴダールの影響

ドストエフスキーの『悪霊』の一節(江川卓訳)と、ジャン=リュック・ゴダールの映画『気狂いピエロ』の一節がエピグラフに引用されている。『村上朝日堂ホームページ』上で「ゴダールの影響は?」という読者からの質問に対し、村上は「はっきり言って、僕はゴダールの映画に強い影響を受けています」と答えている[2]。『村上朝日堂ホームページ』の別の箇所では「高校時代、神戸のアートシアターでヌーヴェルバーグものを見まくったんですが、(中略)あの当時、神戸の街で僕くらい深くジャン・リュック・ゴダールを愛していた人間はそんなにいなかったと思います」と述べている[3]

また、佐々木マキを論じた文章の中で村上はこう述べている。「『このマンガはいったい何を表現しようといているのか?』と僕は考えてみた。もちろんそれは何も表現してはいなかった。(中略) 問題はスタイルであるという気がした。佐々木マキは彼独自の強固なスタイルを所有しており、そのスタイル=文体そがすべてを統轄しているのだ。(中略) はじめてジャン=リュック・ゴダールの映画を観た時にも僕は同じようなことを感じた」[4]

収録作品

タイトル初出英訳
1UFOが釧路に降りる新潮』1999年8月号UFO in Kushiro
(The New Yorker. March 19, 2001)
2アイロンのある風景『新潮』1999年9月号Landscape with Flatiron
(Ploughshares. September 22, 2002)
3神の子どもたちはみな踊る『新潮』1999年10月号All God's Children Can Dance
(Harper's. October, 2001)
4タイランド『新潮』1999年11月号Thailand
(Granta. July 7, 2001)
5かえるくん、東京を救う『新潮』1999年12月号Super-Frog Saves Tokyo
(GQ. June, 2002)
6蜂蜜パイ書き下ろしHoney Pie
(The New Yorker. August 20 & August 27, 2001)

翻訳

2002年8月、本書の英訳版『after the quake』がクノップフ社より刊行された。訳者ジェイ・ルービン。ルービンによれば、英語版のタイトルを『after the quake』とし、文字をすべて小文字にすることを提案したのは村上自身だという[5]

その他、以下の各国語版が翻訳され出版されている。

翻訳言語翻訳者発行日発行元
英語 ジェイ・ルービン2002年8月13日Knopf(米国)
2002年10月3日Harvill Press(英国)
フランス語 Corinne Atlan2002年2月7日Belfond
ドイツ語 Ursula Gräfe2003年8月DuMont Buchverlag Gmbh
イタリア語 ジョルジョ・アミトラーノ2005年Einaudi
スペイン語 Lourdes Porta2013年2月5日Tusquets Editores
カタルーニャ語 Albert Nolla2013年7月2日Editorial Empúries
オランダ語 ヤコバス・ウェスタホーヴェン2008年1月Atlas
デンマーク語 Mette Holm2008年5月30日Klim
ノルウェー語 Ika Kaminka2002年Pax forlag
ポーランド語 Anna Zielińska-Elliott2006年Muza
チェコ語 Tomáš Jurkovič2010年Odeon
ルーマニア語 Iuliana Oprina2006年Polirom
クロアチア語 Maja Šoljan2003年Vuković & Runjić
ロシア語 Андрей Замилов2006年Eksmo
リトアニア語 Jurgita Polonskaitė2013年Baltos lankos
中国語
(繁体字)
頼明珠2000年8月1日時報文化
中国語
(簡体字)
林少華2009年8月上海訳文出版社
韓国語 キム・ユゴン2010年10月文学思想社
タイ語 2003年

舞台化

神の子どもたちはみな踊る after the quake』のタイトルで舞台化され、2019年7月31日から8月16日まで東京公演が行われた。「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」の2つを取り上げて舞台化したフランク・ギャラティの脚本(2005年米国にて上演)を倉持裕が演出。蜷川幸雄が演出した舞台『海辺のカフカ』に続くコラボレーション「Ninagawa × Murakami」の第2弾として構想されながら、蜷川の逝去で中断していた企画だった。

キャスト

脚注

  1. 少年カフカ』新潮社、2003年6月、252頁。
  2. 『村上朝日堂ホームページ』 読者&村上春樹フォーラム6(2006年3月18日~20日)。
  3. スメルジャコフ対織田信長家臣団朝日新聞社、2001年4月、読者&村上春樹フォーラム156(1998年9月3日~6日)。
  4. 村上春樹 「佐々木マキ・ショック・1967」 『佐々木マキのナンセンサス世界』思索社、1984年2月。
  5. ジェイ・ルービン 著、畔柳和代 訳『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』新潮社、2006年9月30日、307頁。

関連項目

外部リンク

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