クモンガ
クモンガ (Kumonga) は、特撮映画およびテレビアニメ「ゴジラシリーズ」に登場する架空の怪獣である。クモをモチーフとしており、別名は「巨大グモ[出典 1]」「大蜘蛛怪獣[4]」など。
クモンガ | |
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ゴジラシリーズのキャラクター | |
初登場 | 『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』 |
作者 |
登場作品
公開順。
- 『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)
- 『怪獣総進撃』(1968年)
- 『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)
- 『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』(2021年)
『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』[5][6]、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』[7]では、過去の映像の流用で登場する。
昭和ゴジラシリーズのクモンガ
クモンガ | |
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別名 | |
体長 | 45 m[出典 6][注釈 1] |
体重 | 8千 t[出典 8] |
出身地 | |
出現地 |
『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』
南太平洋に所在するゾルゲル島のクモンガの谷に棲息していた、肉食の巨大なクモ[出典 12]。同じくゾルゲル島に生息していたカマキラスと異なり、もとから怪獣と呼べるほどの大きさだった[45][46][注釈 3]。発見および命名は、太平洋戦争の終結後もゾルゲル島に残って調査活動を続けた考古学者・松宮正による。正のノートの記述によれば1955年以前から存在を確認されていたが、1967年に彼の娘である松宮サエコの存在が確認されるまでゾルゲル島は無人島と認識されていたため、クモンガの存在を認知していたのは松宮家のみであった。
外見はほとんどクモそのままであり[11]、狂暴に人間や他の怪獣を襲うが、土中で眠る習性を持ち、粘着質の強靭な糸を口から吐く[出典 13][注釈 4]。糸はゴジラの動きすら封じるほどの強靭さを持つが熱に弱く[9][35]、ライター程度の火で容易に焼き切れる。口には毒針も持っており[出典 14]、これは直接相手に突き刺せるほか、ある程度の距離まで撃ち出せる。興奮すると、青い目が赤くなる[出典 15]。低温に弱い[9]。
ゾルゲル島での気象実験が失敗して起こった異常気象の末、島内をカマキラスやゴジラなどの怪獣が徘徊する事態となっても眠っていたが、カマキラスとミニラの戦いで目覚める。その後、島を徘徊して人間を襲い、実験チームが避難していた洞窟の入り口に巣を作る。その場に現れたミニラを糸で捕縛すると、続けて現れたカマキラスも同様に捕縛し、毒針で仕留める。さらにミニラに止めを刺そうとしたところを、救出に現れたゴジラと戦う。強靭な糸や死んだふりからの毒針攻撃でゴジラの右目を潰すなど苦しめるが、ミニラの援護もあって次第に追い詰められていき、最後は雪が降る中でゴジラとミニラに放射能火炎を浴びせられ、炎上する[26][35]。なお、ゴジラの右目はまもなく回復している。
- 造形
- デザインは井上泰幸[20]。造型は利光貞三[出典 16]、八木勘寿[20]、八木康栄[20]。造形物の大きさは約5メートルである[出典 17]。
- 口から吹く糸はモスラ幼虫と同じくゴム糊をシンナーで溶いたものを噴出させて表現している[出典 18]。
- 人間を襲うシーンでは実物大の足が使用された[出典 19]。
- 操演
- カマキラスと共に操演技術が高く評価されている[出典 20]。特技監督の有川貞昌は、絵コンテの段階ではクモンガに複雑な動きをさせる予定ではなかったが、造形に惚れ込み、今までの映画にない新しいアクションをさせたいという欲求が湧いたと述べている[55]。
- ステージの天井の梁に上って行うピアノ線による操演には20人近く必要だった[出典 21][注釈 5]ため、操演以外のスタッフたちまでが総動員され[27][53]、強烈なライトの熱を受けながらの操作に、撮影中は彼らの流す汗が雨のように降り注いだという。操演に際しては脚にナンバーが振られ、有川が指示していった[出典 22]。
- ピアノ線の準備だけでも時間がかかるため、裏表間違えて設置した際には、円谷英二の言によりそのまま撮影された[27]。
- ジャンプするシーンでも、リアルさを表現するため脚を動かしながら飛ばしている[55]。
- 足に負担をかけないため、胴体の下に木の台を置いている[47]。
- 断末魔シーンの撮影では、丸2日が費やされている。有川は、操演が上手くいかずに肝心な箇所でピアノ線が切れて失敗するなどの苦労が多かったため、ラッシュフィルムを見て自分のイメージ通りに動いている姿に感動したと語っている[56]。
『ゴジラ FINAL WARS』のクモンガ
クモンガ KUMONGA[出典 26] | |
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別名 | |
体長 | 60 m[出典 28] |
体高 | 35 m[出典 29] |
足の高さ | 40 m[出典 30] |
体重 | 3万 t[出典 28] |
出現地 | アリゾナ州[68][64] |
本作品でのクモンガは直線的な糸を噴出するだけでなく、一度空中へ噴出された黄色い糸がネット状に展開して相手を包み込むという能力強縛デスクロス・ネット[出典 31]を持つ[注釈 6]。他に武器として毒針を持っているが[34][60]、劇中では未使用。
X星人に操られてアリゾナを襲撃し、トレーラーハウスを破壊した後はニューギニアのジャングルでゴジラと対決する[62]。初代同様の身軽な動きでゴジラの周囲を回って翻弄し、糸を絡ませて動きを封じかけたものの、逆に糸をつかまれてねじり上げられると、ジャイアントスイング気味に振り回され、彼方へ投げ飛ばされた。それ以降の消息は不明。
- 制作
- デザインは西川伸司[出典 32]。西川は原典を見ずに、自身の中のクモンガをイメージして描き起こしたという[72]。決定デザインでは配色が異なる[73]。
- 造型はサンク・アールが手掛けた[出典 33]。造型プロデューサーの若狭新一は、造型段階では重量バランスがわからないため、完成してからピアノ線の位置を調整するなど、撮影前の準備に手間がかかったことを証言している[74][61]。
- 操演は、実際のクモの動きを参考にしている[78][79]。ゴジラに振り回されるシーンは、オープンセットでクレーン車を使用して撮影された[80][81]。操演の鳴海聡は、昔の作品では1/2サイズの造形物で撮影していたが、現在はクレーンを依頼するほうが安いのだろうと推測している[80]。ゴジラのスーツアクターを務めた喜多川務は、クモンガを振り回すシーンが本作品で一番苦労したと述懐している[82]。
- 糸の色は、特殊技術の浅田英一からの要望により黄色となった[83]。『東京SOS』のモスラ幼虫の吐く糸と同様に、シンナーでプラスチック成分を溶かしたものが使用された[出典 34]。特撮班助監督の石井良和によれば、撮影中に中毒症状が出たスタッフもいたという[84]。
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』のクモンガ
クモンガ | |
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全長 | 28 m[85] |
- クモンガ[85][86]
- マリーナ付近の造船所に現れた、クモを連想させる怪獣[85]。正式名称はクモンガ・サイトーデス[注釈 7][85]。体が切断されても再生して活動を継続できる強い生命力を持ち、破壊された肉体を断面から溢れ出た体液で元の姿を形成させることも可能なことから「再生怪獣」とも称される[85]。8本の脚のうち、大きな2本の前脚は返しがついたトゲのようになっている[85]。群生する習性を持ち、倉庫に糸状の粘液で巣を作り、そこに捕らえた人間を繭のように糸で包み、体液を失ってミイラ化した状態の食料としてまとめて備蓄する[85]。現場作業員による呼び名が通称としてそのまま定着した[85]。
- 円城塔執筆の小説版でクモンガは怪獣の中ではもっとも現実世界寄りに進化した種で、現実世界にある物質を摂取して生命活動ができる反面、現実世界の生物の法則性に縛られることになったとある。
- カマンガ[85]
- クモンガが変態した前脚が蟷螂のような巨大な鋭い鎌状となった姿[86]。正式名称はクモンガ・ファルシペス(「カマ状の脚」[85])。鎌の強度や鋭さはジェットジャガーの振るうアンギラスの槍を受け止めたほどであり[85]、鍔迫り合いで火花が生じたほど。
- ハネンガ[85]
- クモンガが背中に2対のトンボのような羽を持ち飛行が可能な形態に変化した姿[85][86]。正式名称はクモンガ・アラートゥス(「有翼」[85])。
- ゼンブンガ[85]
- クモンガ(サイトーデス)、カマンガ(ファルシペス)、ハネンガ(アラートゥス)全ての性質を備えるクモンガの最強形態[85]。学名はクモンガ・ウルティマ[85]。工場のスタッフが呼びだしたものが、そのまま通称となった[85]。
その他のクモンガ
- 小説『GODZILLA 怪獣黙示録』
- カマキラス同様、2030年代のアメリカ合衆国内に生息していることが言及されている[87]。また、北アフリカには小型種が存在していた[88]ほか、南米ブラジル周辺にも亜種が存在していた模様[89]。
脚注
注釈
出典
- ゴジラ1954-1999超全集 2000, p. 119, 「怪獣島の決戦 ゴジラの息子 キャラクター図鑑」
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- 怪獣大全集 1991, pp. 74, 75
- ゴジラ検定 2018, p. 61, 「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 今回の怪獣対決」
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- 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, p. 64, 「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」
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- FWコンプリーション 2023, p. 38, 「デザインワークス」
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- FWコンプリーション 2023, p. 81, 「50周年の集大成 東宝怪獣オールスター戦!!」
- FWコンプリーション 2023, p. 149, 「〈特写〉祭の追憶」
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- FWコンプリーション 2023, pp. 18–31, 「シーンメイキング」
- 東宝SF特撮映画シリーズSPECIAL EDITION 2005, p. 27, 「[インタビュー] 鳴海聡」
- 東宝特撮映画大全集 2012, p. 287, 「『ゴジラ FINAL WARS』撮影秘話」
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- GFW超全集 2005, p. 94, 「MAKING OF ゴジラファイナルウォーズ 撮影」
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- ファンブック 2021, pp. 44–45, 「怪獣設定 クモンガ/カマンガ/ハネンガ/ゼンブンガ」
- 宇宙船YB2022 2022, p. 31, 「ゴジラS.P」
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- プロジェクト・メカゴジラ 2018, pp. 53–85, 第6章『長征』
- プロジェクト・メカゴジラ 2018, pp. 164–180, 断章(2048年)(3)
- New species of Filistatidae, Palpimanidae and Scytodidae (Arachnida: Araneae) from southern Iran - ReserchGate(英語) p.124の箇所に"The specific epithet is a noun in apposition and refers to a fictional, mutated, enormous “spitting” spider first appearing in Toho’s 1967 movie Son of Godzilla."とある。
出典(リンク)
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- 西川伸司『西川伸司ゴジラ画集』洋泉社、2016年6月24日。ISBN 978-4-8003-0959-4。
- 『ゴジラの超常識』[協力] 東宝、双葉社、2016年7月24日(原著2014年7月6日)。ISBN 978-4-575-31156-3。
- 『シン・ゴジラWalker [怪獣王 新たなる伝説]』KADOKAWA、2016年8月6日。ISBN 978-4-04-895632-1。
- 『ゴジラ解体全書』宝島社〈TJ MOOK〉、2016年8月15日(原著2014年7月26日)。ISBN 978-4-8002-5699-7。
- 若狭新一『ゴジラの工房 若狭新一造形写真集』洋泉社、2017年10月21日。ISBN 978-4-8003-1343-0。
- 『「ゴジラ検定」公式テキスト』監修 東宝株式会社/協力 東宝 ゴジラ戦略会議、宝島社、2018年11月3日。ISBN 978-4-8002-8860-8。
- 『ゴジラ 全怪獣大図鑑』講談社〈講談社 ポケット百科シリーズ〉、2021年7月2日。ISBN 978-4-06-523491-4。
- 『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>ファンブック』双葉社、2021年7月13日。ISBN 978-4-575-45883-1。
- 講談社 編『ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK』 vol.0《ゴジラ&東宝特撮作品 総選挙》、講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2022年12月21日。ISBN 978-4-06-530223-1。
- 『ゴジラ FINAL WARS コンプリーション』ホビージャパン、2023年4月4日。ISBN 978-4-7986-3135-6。
- 雑誌
- 「宇宙船vol.176特別付録 宇宙船YEARBOOK 2022」『宇宙船』vol.176(SPRING 2022.春)、ホビージャパン、2022年4月1日、ISBN 978-4-7986-2796-0。
- 小説
- 劇場パンフレット
- 『ゴジラ FINAL WARS』パンフレット 2004年12月4日発行 / 発行所:東宝(株)出版・商品事業室