耳栓
耳栓(みみせん、en:Earplugs)とは耳の穴を塞ぐ道具。このことで音を遮断する目的の道具、または器具を指す。また、水を耳に入れないための道具もある。 頭からかぶり耳全体を覆うタイプのものはイヤーマフ(en: Earmuffs)と呼ばれる。
概要
使用用途は主に音の遮断である。人間の耳は大音量にさらされると耳の機能自体に影響を与えて難聴になってしまう(主に騒音性難聴)。また、平衡障害、精神不安定、思考力・記憶力の低下といった症状を生じることもある[1]。 各国の保健機関により、一日に曝露しても問題ないとされる騒音の許容上限などが設定されており、その範疇に収めるためにこうした防音具が装着される。
一般に大音量の騒音が発生するような場所での作業に用いられるが、睡眠時や勉強に集中したいときなどに使用することもある。また、飛行機搭乗時などの気圧変化による耳の痛みを軽減するための耳栓や、アーティスティックスイミングなどの競技用で水中で水を耳に入れないための耳栓もある。 その他、騒音問題の対策としても利用される。
ノイズのレベル(dB) | 1日の最大曝露時間 |
---|---|
85 | 8時間 |
91 | 2時間 |
97 | 30分 |
103 | 7分 |
防音保護具
防音保護具としては防音耳栓と防音耳覆いの2種類がある[1](便宜上、防音耳覆いについてもここで解説する)。
着用時は聴覚を著しく制限されてしまうため、稼働機械や接近してくるものに気付かず思わぬ事故に繋がる危険性がある。そのため周辺確認を怠らない事はもちろん着用者同士での安全確認を行うことが望ましい。
原理別のタイプ
パッシブ
音波を物理的に遮断するタイプ。その特性上、低音域の音波の遮断には限界がある。
アクティブ
耳へ侵入する音波に対し、全く逆の位相を持つ音波を照射することにより打ち消すもの。アクティブノイズキャンセリング(ANC)と呼ばれる。 価格は高く、航空機整備、軍、シューティングなど高度の騒音が発生する場所で用いられる。
耳栓が使用されるシチュエーション
モータースポーツ
レース用の車両は大出力を絞り出すが公道のような騒音規制を受けない。そのためマシンの至近距離では極めてけたたましいエンジン音にさらされる。ピットスタッフは作業時には通常耳栓(ヘッドセット)を着用する。
アーティスティックスイミング
アーティスティックスイミングでは、耳からの水の浸入を防止する為にノーズクリップ等と同様に使用する。
射撃
銃の発砲音も繰り返されると聴覚へ悪影響を与える。特に音のこもりやすい室内のシューティングレンジでは、ヘッドフォン型のイヤープロテクターの着用が義務付けられる場合が多い。
ライブ
ライブ参加者は非常に大きな音により騒音性難聴をきたすものが多いことが知られる。これに対し、音質を維持しながら過度な音量のみを遮断して、ライブ公演の音を聴きやすくする専用の耳栓を用いる場合もある。
聴覚過敏
イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンを使用し、耳への刺激を遮断するのにも用いられる。
航空機内
長時間のフライトなどで機内で就寝する場合、耳栓が用いられる事が多い。機内サービスで耳栓が配布される航空会社もある。
航空機整備
航空機は騒音源の中でも最大の部類に属し、整備のために誘導する労働者は必ず防音具を装着することが各国で義務付けられている。
脚注
- 労働科学研究所出版部 1988 p.582
- JIS T 8161(日本産業標準調査会、経済産業省)
- 三浦 1988 p.212
- 大音量から耳を守れ ライブ専用の「耳栓」が広がる|NIKKEI STYLE
参考文献
- 『現代労働衛生ハンドブック 増補改訂第2版』労働科学研究所出版部 p.582 1988年
- 三浦豊彦『労働の衛生学』大修館書店 p.212 1988年
- 吉田泰幸「縄文時代における土製栓状耳飾の研究」『名古屋大学博物館報告No.19』名古屋大学 pp.29–54 2003年