三菱・デリカ
概要
マツダ・ボンゴ等をライバルと想定した小型のキャブオーバートラック及びバンとして1968年に登場。国外では主にL300という名称で販売されている。バンをベースとしたワゴンも設定されていたが、1994年登場の4代目(デリカスペースギア)以降は商用車系とは離れて、乗用車設計となる。2011年以降、三菱は国内向けのミニバンの車名を「デリカ」に統一する方針を取っており、デリカD:5に加えてデリカD:2、デリカD:3が登場した。(D:2、D:3は他社からのOEM)
一方で、商用車系デリカの国内向け販売は1999年以降は他社からのOEMに切り替えられており、2019年にはOEMでの取り扱いも終了した。商用車系の輸出向けの自社生産は国内では2013年に終了したが、フィリピン・インドネシアでは2代目が(車名はL300)、台湾で3代目が継続生産されている。
歴史(デリカバン/デリカトラック)
初代(デリカバン 1969年-1979年/デリカトラック 1968年-1979年)
- 1971年10月
- トラックの最大積載量を750kg積に変更し、デリカ75シリーズとなる。エンジンはギャランFTO1400ccモデルと共通の1.4L・OHVガソリンエンジン(4G41・ネプチューン86エンジン、最高出力86ps)に変更。ベンチレーター周辺にガーニッシュが設けられたデザインとなり、フロントウインカー・サイドマーカーの形状を変更。
- バンはテールゲートのデザインが一新され、テールランプをテールゲート窓下から車体側に移設。これによりテールランプの形状が横型から縦型コーナーランプに変更される。
- 1974年11月
- マイナーチェンジ。今回は三角窓が廃止される(国外仕様は除く)と同時にフロント周辺のデザインを大幅に変更し(4灯式ヘッドランプおよび左右非対称フロントバンパー)デリカ1400シリーズとなる。これと同時にランサー1200ccモデルと共通の1.2L・OHVガソリンエンジン(4G42・ネプチューン70エンジン、最高出力70ps)を搭載し、マイナーチェンジ前のフロント部分の意匠をほぼ採用した廉価版のデリカ1200シリーズをラインアップに加えた。
- 1977年11月
- カラーリングを大幅に変更。リアバンパーが左右一体式に変更され、リアのナンバーをバンパー中央からテールゲート右下に移設(バン・ルートバンのみ)。1400ccモデルの最高出力は78psに再度スペックダウンされた。また、国外仕様はこの時点で三角窓がようやく廃止となった。
2代目(デリカバン 1979年-1986年/デリカトラック 1979年-1994年、 海外向けL300トラック 1979年-)
- 1979年6月
- フルモデルチェンジ。直線基調のボクシーなスタイルとなり、全幅が小型車サイズ一杯にまで拡大する。
バンは「デリカバンワイド」、デリカコーチは「デリカスターワゴン」となる。
エンジンはサターン4G33型1.4L・82馬力(バン/トラックのみ)。サターン4G32型1.6L・86馬力。1.6Lエンジン車には、バン/ワゴン共に5速MT車も設定された。
- 1982年11月
- マイナーチェンジ。フロントエンブレムが三菱のM字型からMMCマークになる。
同時に1.8Lガソリン仕様車を追加。このモデルには、当時の国産ワンボックスカー初となる4WDが採用された。
リヤドア後方をストレッチしたロングボディと、ディーゼルエンジン搭載車(ギャラン系と同じ4D55型2.3L・75馬力)を追加。
オプションの冷房装置が吊り下げクーラーからヒーター組み込みタイプに変更された。
- 1986年6月
- バンとスターワゴンはフルモデルチェンジをしたが、トラックはマイナーチェンジに留った。フロントガーニッシュを装着。ディーゼル車のエンジンを3代目同様の4D56型・2.5Lに変更。これに伴い、トラックの2WD車に後輪シングルタイヤ仕様を新たに追加(三方開・高床デッキ仕様および一方開仕様は前輪と同サイズのタイヤが用いられ、三方開・低床デッキ仕様は偏平率が60%の13インチ小径ワイドタイヤが用いられる)。
- 1988年
- トラックに4WDを追加(三方開・高床デッキ、2人乗りのみ。)。フロントガーニッシュにスリーダイヤマークが付く。
- 1994年
- 国内向けトラックをフルモデルチェンジ。
- 4輪駆動は国産クラス初で、当時の同車製1トン積みボンネットトラック、「フォルテ」のシャシに2WDモデルのボディを載せた為、非常に背の高いシルエットとなった[2]。
当時三菱自動車はフルラインターボを標榜し、様々な車種にターボ車を設定していた。デリカはディーゼルターボのみで、エンジンを共有するギャランΣや初代パジェロのようにガソリンターボは設定されなかった。
登場当初は、ワゴンはコラムシフトの1.6Lガソリン車のみであったが、当時のワンボックスワゴンで唯一5MTが設定されていた[3]。
3代目(デリカバン 1986年-1999年/デリカトラック 1994年-1999年、海外向け 1986年-)
- 1986年6月19日
- フルモデルチェンジ。
- 標準とロングの2種類のホイールベースに、平屋根のエアロルーフかハイルーフが組み合わされる。バン/ワゴン4WDは全高を小型車枠に収める関係でエアロルーフのみ、ワゴン4WDは、標準尺のみでのスタート。バンは両側スライドドア。
- G63B型2.0Lガソリンエンジン。バンには従来と同じ1.4Lと1.6Lのガソリンエンジン。
- 4D56型2.5Lディーゼルエンジン。85馬力のターボと76馬力の自然吸気。
- 1994年5月
- マイナーチェンジ。フロントバンパーおよび、クリアランス&ターンシグナルランプの形状を変更。スターワゴンは主力がスペースギアに移行した為、グレードを大幅に整理。トラックはようやく3代目ベースにフルモデルチェンジされた。トラックの標準ボディにはデリカバンと同じフロントだが、ロングボディには前期型スターワゴンと同じ、角形4灯ヘッドライトを採用する。
- 1999年11月
- 3代目デリカは日本の衝突安全基準に適合しなくなり、安全基準に適合させる開発をする為には販売台数が足りない為、国内向けデリカの商用系はボンゴのOEM供給車になる。国内向けスターワゴンは生産終了。
その後、3代目デリカは輸出専用となり日本での生産が2013年まで行われていた。その後は台湾の中華汽車での生産のみ継続されている。2019年9月には台湾で三菱の新しいデザインコンセプトであるダイナミックシールドに準じたデザインが与えられた改良モデルが発表された[5]。
4代目(デリカバン/デリカトラック 1999年-2011年)
5代目(デリカバン 2011年- 2019年)
- 2011年10月6日
- バンをフルモデルチェンジ(10月27日販売開始)。先代同様、OEM車種となっているが、本代は2010年12月に合意した日産自動車との協業に基づき、従来のマツダ・ボンゴバンから日産・NV200バネット(以下「バネット」)に変更(乗用モデルのデリカD:3もバネットベース)。ベース車の変更によりダウンサイジングされたが、全高を高めの1,855mmに設定したことで十分な積載性能を確保。また、全車「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」認定を取得するとともに、5MT車は「平成22年度燃費基準+20%」、4AT車は「平成22年度燃費基準+25%」をそれぞれ達成した(現在は5MT車は「平成27年度燃費基準+15%」、4AT車は「DX」のみ「平成27年度燃費基準+20%」をそれぞれ達成している)。尚、グレードは「DX」と「GX」の2グレードで、5MT車は「DX」のみの設定となる(尚、「DX」は5人乗り仕様のみの設定で、2人乗り仕様・ルートバンの設定はない)。また、装備内容もバネットと異なっており、バネットではメーカーオプション設定となっている助手席SRSエアバッグが標準装備されるほか、「GX」ではセカンドシート関連のセットオプション(テールゲートアシストベルト・上下調節式ヘッドレスト・6:4分割ベンチシート(リクライニング)・アシストグリップ・ISO FIX対応チャイルドシート固定専用バー・3点式ELR付シートベルト)も標準装備される。
- デリカバン単体のカタログは存在せず、構造が同一の乗用モデルであるデリカD:3のカタログにデリカバンの内容が掲載されている程度である。
- 2012年6月22日
- 同年6月のバネットのマイナーチェンジに伴い、一部改良。全車で安全に関する法規制強化に対応するため、スライドドアの補強を行ったほか、テールゲート内側にハンドルを追加。併せて、車両本体価格が変更となり、1万円値上げされた。
- 2014年11月20日
- 同年10月のバネットの一部改良に伴い、一部改良[6]。「GX」において、シートをブラック生地に変更し、セカンドシートをバン専用シートに変更したことでセカンドシート収納時の荷室長を230mm延長し、積算容量を拡大した。なお、バネットで実施されたボディカラーの追加は行われず、従来通り2色展開となる。
- 2016年1月21日
- 一部改良[7]。全車でアクセサリーソケットを標準装備したほか、従来はメーカーオプション設定だったセカンドシート左右席の3点式ELR付シートベルト、同中央席の2点式シートベルト、リアドア(左右)の乗降用グリップを標準装備化した。
- 2019年4月
- 販売終了に伴い公式ホームページからも削除された。国内市場でのデリカの商用車ブランドは約50年の歴史に幕を下ろした。これによって三菱自動車は国内小型商用車市場から完全撤退した。
歴史(デリカカーゴ)
初代(1994年-1999年、海外向け1994年-2005年)
- 1994年5月12日
- スペースギアと同時にデリカカーゴ発売。3代目バン/トラックは継続生産。スペースギアの商用仕様で4ナンバー登録の標準ボディーと、1ナンバー登録のロングボディーを設定。2.0Lガソリンエンジン(115馬力)とインタークーラーのない2.5Lターボディーゼルエンジン(85馬力)のみの設定や、高荷重に対応したリアリーフ式サスペンションなどがデリカスペースギアと異なる。2WD(FR)と4WDをそれぞれ用意。
- 1997年
- スペースギアと共にマイナーチェンジ。ヘッドライト、フロントグリル、バンパーなどが新意匠となる。
- 1999年11月1日
- デリカカーゴ日本国内販売終了。一部輸出仕様(エクスプレス等)は2005年まで継続生産。また乗用仕様のスペースギアも車種整理を行いながら2006年後半まで継続生産され、翌年登場したデリカD:5にバトンタッチした。
- 概要
- ボディ形状と駆動方式
- 2WD ハイルーフ
- ショート
- ロング
- パートタイム 4WD エアロルーフ
- ショート
- 2WD ハイルーフ
- 最大積載量と登録区分
- ショート:750kg / 4ナンバー
- ロング:1000kg / 1ナンバー
- エンジン
- 4D56型ターボディーゼル:全車
- 4G63型ガソリンエンジン:2WD ショートで選択可能
- 座席定員:2 / 5名 一部グレードは3 / 6名(前席のみ / 後席を含む)
- サスペンション:前 トーションバー + ダブルウィッシュボーン / 後 リーフリジッド
歴史(乗用)
概要
同社のパジェロと並び、乗用四輪駆動車の先駆け的モデル。多くの日本製ワンボックスカー同様、スターワゴンも基本的には商用車と共通の設計ではあるが、快適装備の追加や見栄えの向上で差別化が図られている。
駆動方式はFR(スペースギアまで)と副変速機付きの四輪駆動(4WD)、エンジンは自然吸気ガソリンとディーゼルターボが用意されていた。
初代(1969年-1976年) デリカコーチ
- 1971年10月
- デリカ75コーチとなる。エンジンはギャランFTO1400ccモデルと共通の1.4L・OHVガソリンエンジン(4G41・ネプチューン86エンジン、最高出力86ps)に変更。ベンチレーター周辺にガーニッシュが設けられたデザインとなり、フロントウインカー・サイドマーカーの形状を変更。テールゲートのデザインが一新され、テールランプをテールゲート窓下から車体側に移設。これによりテールランプの形状が横型から縦型コーナーランプに変更される。
2代目(1979年-1986年)・3代目(1986年-1999年) デリカスターワゴン
三菱・デリカスターワゴンを参照。
- 2代目
- 2代目デリカ
- 3代目
- 輸出向けL300
スターワゴン2WD標準ボディーに相当 - スターワゴン4WD
エクシード
ハイルーフ
'90.9-'94.4 - スターワゴン4WD
アクティブワールド
エアロルーフ
'97.11-'99.11
デリカD:2(2011年- )
三菱・デリカD:2を参照。
- 初代 S
(2011年2月-2012年6月) - 初代 S
(2012年6月-2013年12月) - 初代 S
(2013年12月-2015年12月) - 2代目 HYBRID MZ Navi Package
(2015年12月-2018年8月) - 3代目 HYBRID MZ 全方位カメラパッケージ 4WD
(2020年12月- )
車名の由来
- デリカ(DELICA)
- 語源は、delivery(運ぶ・配達する)+car(車)の造語である。
- スターワゴン(STAR WAGON)
- 「みんなに愛されるワゴン車でありたい」という意味合いを込めて名づけられた。
- スペースギア(SPACE GEAR)
- 英語の「車内空間の活用性に富んだ車」という意味。類似するネーミングでは同社が発売する一部のSUV・ステーションワゴンなどなどに設定されているスポーツギアがある。
- D:5(ディーファイブ)
- 「デリカ(DELICA)」の「5代目」。また、デリカD:2の登場を機に5段階でもっとも大きいモデルという意味も込められ、これを機に三菱のミニバンシリーズは今後「デリカ○○」のネーミングで統一されることとなった(デリカミニを除く)。
- デリカ伝統の特別仕様「シャモニー(CHAMONIX)」「ジャスパー(JASPER)」
- 冬季限定の前者はシャモニー=モン=ブラン、夏期限定の後者はジャスパー国立公園に由来。
ラインナップ
日本国外専用
- L300デリカ
- L400デリカ
- Mahindra Voyager(マルヒンドラ・ボヤージュ)
- インドのマヒンドラ&マヒンドラで生産されている。三菱は、L300 の部品の供給及び図面などの技術情報の提供を行っている。1996年3月より生産を開始しており、当時インドにはフルプレスボディーの9人乗りミニバスがなかった様である。
- FORD HUSKY(フォード・ハスキー)
- 南アフリカのSAMCOR(南アフリカ共和国自動車工業)(フォード南アフリカ)が現地生産してオーストラリア等海外にも輸出していた。マツダと提携していた当時フォードでは、同クラスの「スペクトロン/エコノバン」(≒ボンゴ)が製造販売されていた。何故、フォードと三菱が手を組んだのかと言う経緯は不明である。
- ISUZU BISON(いすゞ・バイソン)
国内販売終了
- 乗用仕様
- デリカコーチ(初代デリカ)
- デリカスターワゴン(2・3代目デリカ)
- デリカスペースギア(4代目デリカ)
- デリカD:3(日産・NV200バネットのOEM)
- 商用仕様
- デリカカーゴ(末期はボンゴブローニィバンのOEM)
- デリカトラック(末期はボンゴトラックのOEM)
- デリカバン(末期はNV200バネットのOEM)
その他
- JB470など、改造メーカによるキャンピングカーも存在する。
- スターワゴンとスペースギアは、只でさえ横転しやすいワンボックスカーの最低地上高をさらに上げたにも拘らず、5ナンバー枠に留まったりタイヤのトレッドの拡大などの対策を採られていなかったことから横転しやすい車体構造となってしまった。ABSが標準装備されるようになってからは安定性は大きく改善された。
- 一部の中古車販売店の中にはデリカシリーズのワゴン系だけを集めた専門店も存在する。
- カナダでは15年以上経った日本車を輸入することが可能になり、3代目と4代目はブリティッシュコロンビア州のバンクーバー等で、右ハンドル仕様のまま中古車として取引されている。
脚注
- 1970年5月31日までは三菱重工業名義。
- 他社のワンボックス4WDでは、操縦安定性や乗降性をできるだけ悪化させない様、駆動系の追加に伴う必要最小限の車高アップに留められている。
- 販売台数で勝るタウンエースには1.8Lの設定もあったが、MTは4速のみであった。
- “三菱自、新小型トラック「L300」投入”. NNA ASIA. (2019年9月30日) 2019年11月27日閲覧。
- “三菱新型「デリカ」を発表!「オラオラ顔」採用の商用車として新登場”. carview. (2019年9月13日) 2019年11月27日閲覧。
- 小型商用車『デリカバン』を一部改良 - 三菱自動車工業 ニュースリリース 2014年11月20日
- 5ナンバーミニバン『デリカD:3』と小型商用車『デリカバン』を一部改良 - 三菱自動車工業 ニュースリリース 2016年1月21日
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