フィーヴァー (リトル・ウィリー・ジョンの曲)

フィーヴァーFever)は、エディ・クーリーとオーティス・ブラックウェルが共作した楽曲。ブラックウェルはこの曲のソングライター・クレジットではジョン・ダヴェンポート名義となっている。オリジナルのレコーディングは、R&Bシンガー、リトル・ウィリー・ジョンによるもので、彼のデビュー・アルバム『Fever』(1956年)のためにレコーディングされ、同年4月にシングルとしてもリリースされた。この曲はビルボードのR&Bチャートの1位を獲得、またポップ・チャートの24位を記録している[3]

フィーヴァー
リトル・ウィリー・ジョンシングル
B面 レター・フロム・マイ・ダーリン
リリース
規格 シングル
録音 1956年4月1日オハイオ州シンシナティ[1]
ジャンル リズム・アンド・ブルース
時間
レーベル キング・レコード (4935)
作詞・作曲 John Davenport, Eddie Cooley
プロデュース Henry Glover
チャート最高順位

24位 (米国ポップ・チャート) (1956年)

1位 (米国R&Bチャート) (1956年)[2]
リトル・ウィリー・ジョン シングル 年表
Need Your Love So Bad
(1955年)
Fever
(1956年)
Do Something for Me
(1956年)
ミュージックビデオ
Fever - YouTube

様々な音楽ジャンルの数々のアーティストによってカヴァーされている。中でも1958年に取り上げたペギー・リーのバージョンはよく知られており、彼女にとっても代表曲となっている。リーのバージョンは、オリジナルとは歌詞を書き換えて歌われており、編曲にも手が加わっている。英国とオーストラリアでチャートのトップ5に入ったほか、米国とオランダでもトップ10に入っている。「フィーヴァー」は1959年の第1回グラミー賞において、最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を含む3部門にノミネートされている。

その他「フィーヴァー」の著名なカヴァーにはエルヴィス・プレスリーボニーMマドンナクリスティーナ・アギレラマイケル・ブーブレ、ザ・マッコイズ、ラ・ルーペビヨンセらによるバージョンがある。マドンナは、この曲を5作目のアルバム『エロティカ』(1992年)からのシングルとして、1993年3月 ワーナー・ブラザースからリリースした。彼女のバージョンはフィンランドのチャートおよび米国のホット・ダンス・クラブ・チャートでトップを飾ったほか、その他多くの国々でトップ50に食い込んだ。マドンナはステファン・セドゥナウィを監督に迎えて ミュージック・ビデオを制作、またテレビ出演や1993年のガーリー・ショー・ワールド・ツアーで取り上げるなど、「フィーヴァー」の露出に貢献した。「フィーヴァー」は、様々なバージョンが多くの映画、演劇、テレビ番組などに使われている。

背景と反響

「フィーヴァー」のアイデアは、オーティス・ブラックウェルの旧友で「Priscilla」(1956年)のヒットで知られるエディ・クーリーからブラックウェルに対して示された[4]。ブラックウェルは以下の通り語っている。「エディ・クーリーは私のニューヨークの友人で、電話をしてきて『「フィーヴァー」という曲のアイデアがあるんだが、完成させることができないでいるんだ』と言うんです。私は当時まだ(音楽プロデューサーの)ジョー・デイヴィスとの契約が残っていたので、別の名前で曲を書かねばならなかったんです」。彼がこのとき使用したジョン・ダヴェンポートという名前はブラックウェルの義理の父の名前だった[5]。伝えられるところによると、リトル・ウィリー・ジョンはこの曲を気に入らなかったものの、説得を受けて1956年3月1日、キング・レコードの社長シド・ネイサンとアレンジャー/プロデューサーのヘンリー・グローヴァーの下、この曲をレコーディングした[6]。この曲は1956年リリースの彼のデビュー・アルバム『フィーヴァー』のタイトル曲となった[7]。「フィーヴァー」はマイナー調を使用したソウルリズム・アンド・ブルースの楽曲であり、レイ・フェルダーとルーファス・"ノーズ"・ゴアがプレイする低音のサクソフォンを含むアレンジが施されており、ギターはビル・ジェニングスが担当している。ジョンのヴォーカル・スタイルはうなり声(モーニング)に近いものがあり、背後にはムードを幾分か軽くする効果を持つ指を鳴らす音が入っている[4]

「フィーヴァー」は1956年4月にシングルとしてリリースされ、別面に収録された「レター・フロム・マイ・ダーリン」と合わせ、共にR&Bチャートでトップ10入りするヒットとなった。「フィーヴァー」は、1956年7月21日に米国ビルボードのR&Bベスト・セラー・チャートのトップまで上り詰め、3週間に渡りトップをキープした[8]Billboard Hot 100でも24位を記録するなど、ポップ・チャートにも食い込んでいる[8][9]。シングル盤は米国で100万枚を売り上げている[10]。またこの曲は、BMIの最優秀R&B楽曲賞を受賞している[11]

この曲は、ロバート・クリストガウの著書「Christgau's Record Guide: Rock Albums of the '70s」(1981年)の1950年代、1960年代の「基本レコード集」に含まれている[12]。彼は後になってこの曲を「熱情的な」歌であると説明している[13]オールミュージック・ウェブサイトでビル・ダールは「フィーヴァー」について、「荒々しいティーンエイジャーだったジョンに幅広いオーディエンスを獲得させた曲」と評した[4]。彼は更にこう続ける「汗の飛び散るような愛に根差した『フィーヴァー』は彼の心奪われる強烈な個性を考えれば厳粛な歌であると言えるが、にも関わらず彼はそんなそぶりを見せないのである」[4]NME誌は「フィーヴァー」を1950年代のベスト・ソングの96位に挙げている[10]。評論家のデイヴ・マーシュは、1989年の著「史上最高のシングル1001枚」のリストの中で「フィーヴァー」について109位に挙げている[14]

チャート

チャート(1956年) 最高位
米国・Billboard Hot 100[15] 27位
米国・ポップ・チャート(ビルボード)[16][2] 24位
米国・R&Bチャート (ビルボード)[17][2] 1位
米国・DJが一番かけるR&B (ビルボード)[17][2] 1位
米国ジュークボックスで一番かかるR&B (ビルボード)[18] 1位

参加ミュージシャン

  • Little Willie John リトル・ウィリー・ジョン - vocals
  • Ray Felder レイ・フェルダー - tenor saxophone
  • Rufus Gore ルーファス・ゴア - tenor saxophone
  • Jon Thomas ジョン・トーマス - piano
  • Bill Jennings ビル・ジェニングス -guitar
  • Edwyn Conley エドウィン・コンリー - bass
  • Edison Gore エディソン・ゴア - drums[1]

脚注

  1. The Blues Discography 1943-1970 The Classic Years, Les Fancourt & Bob McGrath (Eyeball Productions), P. 309
  2. Joel Whitburn's Top R&B Singles 1942-1988 (Record Research), P. 222
  3. Little Willie John, "Fever" chart positions. 2023年6月30日閲覧
  4. Dahl, Bill. Fever - Little Willie John”. オールミュージック. 2023年6月30日閲覧。
  5. EDDIE COOLEY”. tims.blackcat.nl. 2023年6月30日閲覧。
  6. Peggy Lee - Research About The Song Fever”. Peggyleediscography.com. 2023年6月30日閲覧。
  7. Little Willie John > Fever”. オールミュージック. 2023年6月30日閲覧。
  8. Little Willie John - Awards”. オールミュージック. Rovi Corporation. 2014年9月8日閲覧。
  9. Whitburn, Joel (2004). Top R&B/Hip-Hop Singles: 1942-2004. Record Research. p. 301
  10. “100 Best Songs of the 1950s - #96 Little Willie John, 'Fever'”. NME. https://www.nme.com/list/100-best-songs-of-the-1950s/262449/article/262460 2014年9月7日閲覧。
  11. “BMI Best Songs”. Billboard: 34. (1956年12月22日). https://worldradiohistory.com/Archive-Billboard/50s/1956/Billboard%201956-12-22.pdf.
  12. Christgau, Robert (1981). “A Basic Record Library: The Fifties and Sixties”. Christgau's Record Guide: Rock Albums of the Seventies. Ticknor & Fields. ISBN 0899190251. https://www.robertchristgau.com/xg/bk-cg70/basics.php 2019年3月16日閲覧。
  13. Consumer Guide Reviews: Little Willie John”. Robert Christgau. 2014年9月7日閲覧。
  14. Marsh, Dave. The 1001 Greatest Singles, by Number”. Control.lth.se. 2002年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月11日閲覧。
  15. “The Billboard Popularity Charts... Pop Records”. ビルボード: 70. (1956年8月4日). https://worldradiohistory.com/Archive-Billboard/50s/1956/Billboard%201956-08-04.pdf.
  16. “The Billboard Music Popularity Charts...Pop Records & Sheet Music”. ビルボード: 56. (1956年8月18日). https://worldradiohistory.com/Archive-Billboard/50s/1956/Billboard%201956-08-18.pdf.
  17. “The Billboard Popularity Charts... Rhythm & Blues Records”. ビルボード: 49. (1956年7月21日). https://worldradiohistory.com/Archive-Billboard/50s/1956/Billboard%201956-07-21.pdf.
  18. “Most Played R&B in Juke Boxes”. ビルボード: 51. (1956年9月1日). https://worldradiohistory.com/Archive-Billboard/50s/1956/Billboard%201956-09-01.pdf.

外部リンク

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