テロ支援国家

テロ支援国家(テロしえんこっか、英語: State Sponsors of Terrorism)とは、テロ行為を行っているか、テロリストに関連しているとアメリカ政府に判断された国家のこと。アメリカ合衆国法典第50編2405条に基づき、アメリカ国務省が指定を行っている[1]1979年12月29日に最初のブラックリストが作成され、以後更新が続けられている。

2020年12月14日現在のアメリカ合衆国とテロ支援国家
  アメリカ
  テロ支援国家

概要

アメリカの対テロ対策は多岐に渡るが、その対策の1つとしてテロリストによるテロ活動を支援している国家を「テロ支援国家」として指定・明確化し、経済制裁を実施する手法を取っている[1]。テロ支援国家に指定されると該当国に対するアメリカ政府の各種禁輸措置がとられ、武器を初めとする輸出入・経済援助に対する規制がかけられる[2]。また国際金融機関の融資についてもアメリカ政府が融資に反対するようになる為、その活用も行えなくなる[1]

なおアメリカ合衆国法典第22編2656f条において、アメリカ政府における国際テロリズムの定義が示されており、それに基づき国務省はテロ支援国家の状況も含め、テロリズムに関する調査及び年次報告書の作成などを行っている[1]1979年の指定開始以降何度かブラックリストの見直しが行われているが、シリアのみは一貫してリストアップされ続けている(2017年時点)。

指定の現状

指定の現状図(2020年12月14日時点)
青色:アメリカ
濃い緑色:現在のテロ支援国家
薄い緑色:過去のテロ支援国家

下記の状況は、2021年1月11日現在のテロ支援国家の情報である。概して中東北アフリカ地域のアメリカに敵対的な国々が指定されることが多く、過去に同地域以外で指定されたのはキューバ北朝鮮の2ヶ国のみである。

テロ支援国家に指定されている国々

以下の4ヶ国

過去にテロ支援国家に指定されていた国々

以下の4ヶ国。国旗は指定解除前のもの。

アメリカ以外の各国政府の見解

アメリカ以外の国々の政府・議会は、テロ支援国家という概念や言葉を自己表現としては使用していない。またアメリカの同盟国であっても、これら「テロ支援国家」と必ずしも対立関係にあるとは限らない。例えば日本政府アメリカ政府とは異なり、イラン[9]キューバ[10]シリア[11]スーダン[12]リビア[13]イラク[14]と国家単位では友好的な外交関係と貿易・投資関係を継続してきた(個人・団体単位では別途経済制裁有り)[15]。ただし北朝鮮に関しては拉致問題などもあり、アメリカ以上に深刻な対立関係にある。

国連総会では、1992年から2012年まで21年連続でアメリカに対して、キューバに対する敵視政策の中止及び外交関係の回復と貿易・投資の回復を勧告する決議案が提出され、毎年アメリカとイスラエルが反対し、それ以外の大部分の国々は賛成して決議案は採択されている[16][17]。2012年度の国連総会では、アメリカに対して、キューバに対する敵視政策の中止及び外交関係の回復と貿易・投資の回復を勧告する決議案は、賛成188ヶ国・反対3ヶ国(アメリカ・イスラエルパラオ)・棄権2ヶ国(マーシャル諸島ミクロネシア連邦)で可決された[16]

またウクライナ侵攻があった2022年には、11月23日に欧州議会がロシアをテロ支援国家に指定する決議案を採択した[18]。なおこの数時間後には同議会のウェブサイトがサイバー攻撃を受けたと議会の報道官が明らかにした[19]

脚注

  1. 9・11同時多発テロ事件以後の米国におけるテロリズム対策,井樋三枝子,外国の立法,228,P24-59,2006年
  2. U.S. Department of State>Under Secretary for Civilian Security, Democracy, and Human Rights> Bureau of Counterterrorism>Terrorist Designations and State Sponsors of Terrorism>State Sponsors of Terrorism
  3. “米トランプ政権 キューバをテロ支援国家に再指定”. NHK. (2021年1月12日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210112/k10012809451000.html 2021年1月12日閲覧。
  4. テロ支援国再指定促す=対北朝鮮、法案可決-米下院時事通信2017年4月4日配信記事)
  5. 米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除について 中曽根外務大臣談話,日本外務省,平成20年10月12日
  6. Executive Order: Continuing Certain Restrictions with Respect to North Korea and North Korean Nationals”. ホワイトハウス (2008年6月26日). 2017年11月21日閲覧。
  7. Remarks by President Trump Before Cabinet Meeting”. ホワイトハウス (2017年11月20日). 2017年11月21日閲覧。
  8. 米、スーダンのテロ支援指定解除 27年ぶり”. ロイター (2020年12月15日). 2020年12月15日閲覧。
  9. 外務省>各国・地域情勢>イラン・イスラム共和国
  10. 外務省>各国・地域情勢>キューバ共和国
  11. 外務省>各国・地域情勢>シリア・アラブ共和国
  12. 外務省>各国・地域情勢>スーダン共和国
  13. 外務省>各国・地域情勢>リビア
  14. 外務省>各国・地域情勢>イラク共和国
  15. 経済制裁措置及び対象者リスト-現在実施中の外為法に基づく資産凍結等の措置,日本外務省
  16. U.N.>General Assembly>Documents>Resolutions>67th - 2012>Necessity of ending the economic, commercial and financial embargo imposed by the United States of America against Cuba
  17. U.N.>General Assembly>Documents>Resolutions>
  18. 欧州議会、ロシアをテロ支援国家に指定」『Reuters』、2022年11月23日。2022年12月12日閲覧。
  19. 欧州議会サイトにサイバー攻撃、ロシアをテロ支援国家に指定後=報道官」『Reuters』、2022年11月23日。2022年12月12日閲覧。

関連項目

外部リンク

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