シグナス CRS OA-5

シグナス CRS OA-5は、NASAオービタルATK社(以下、オービタル社)の間で締結された商業補給サービス契約に基づき打ち上げられる無人宇宙補給機 シグナスの7番目(国際宇宙ステーションへの補給は6回目)の飛行ミッションである[6][7]。オービタル社は商業軌道輸送サービス計画において中型ロケット アンタレスと補給用宇宙機 シグナスの開発・製造を担当している。また、シグナスの与圧貨物モジュールはタレス・アレーニア・スペースが供給している[8]

シグナス CRS OA-5
ISSのカナダアーム2でキャプチャされるシグナス CRS OA-5。
任務種別国際宇宙ステーションへの補給
運用者NASA
COSPAR ID2016-062A
特性
宇宙機種別拡張型シグナス[1][2]
製造者オービタルATK
タレス・アレーニア・スペース
任務開始
打ち上げ日2016年10月17日 23:45 UTC[3]
ロケットアンタレス 230[4][5]
打上げ場所中部大西洋地域宇宙基地 LP-0A
打ち上げ請負者オービタルATK
軌道特性
参照座標地球周回軌道
体制低軌道
近点高度213km
遠点高度361km
傾斜角51.62 °
元期計画値
ISSのドッキング(捕捉)
ドッキング ユニティ 天底側[3]

NASAのミッションパッチ

このミッションで打ち上げられたシグナス補給船は、スペースシャトルの船長を務めた宇宙飛行士 Alan G. Poindexter(故人)にちなみ、S.S.Alan Poindexter と名づけられた[9]

歴史

2013年9月に商業軌道輸送サービスの実証飛行が成功し、オービタル社は商業補給サービス計画に基づき2014年中に2回のISS補給ミッションを請け負うことになった。しかし、3回目の打ち上げとなるシグナス CRS Orb-3はアンタレスが離床直後に爆発したため失敗に終わってしまった。オービタル社はAJ-26 62エンジンを使用するアンタレス 100シリーズの廃止を決め、新たな推進システムの導入を急ぐことになった。アンタレスは、信頼性の向上とペイロードの増加を図るべく第1段エンジンに新規に製作されたRD-181エンジンを搭載するようアップデートされた[10]

2014年末にオービタル社はアトラス Vロケットを用いてフロリダ州ケープ・カナベラルから2015年末にシグナス CRS OA-4、2016年にもう一機を打ち上げる契約を結んだ[10][11]。オービタル・サイエンシズは2016年に第1四半期(シグナス CRS OA-6)、第3四半期(シグナス CRS OA-5)、第4四半期(シグナス CRS OA-7)の計3回の打ち上げを計画しており、OA-5とOA-7はアンタレス 230、OA-6はアトラス Vを使用する予定であった。この3つのミッションにより、オービタル社は商業補給サービス契約を完了することになっていた[11]

シグナス補給船の製造・組立はバージニア州ダレスで行われた。シグナスのサービスモジュールは射場で与圧貨物モジュールと結合され、運用はダレスとヒューストンの管制センターで行われた[8]

機体

このフライトはオービタル社とNASAとの間で締結された商業補給サービス契約において10回中6回目にあたり、シグナス拡張型としては3回目のフライトである[11]。2016年10月17日23時45分UTC(米国東部時間では同日19時45分)に打ち上げられた[3]

このミッションで打ち上げられたシグナス補給船には、オービタル・サイエンシズの慣習に従い、NASAの宇宙飛行士にちなんでS.S. Alan Poindexterの名が与えられた(Alan G. Poindexterは2008年と2010年の二度、スペースシャトルに搭乗した)。

打ち上げ要目

  • 総重量:4,900キログラム (10,700 lb)
    • 科学研究用機材:498.0キログラム (1,097.9 lb)
    • クルー向け補給品:585.0キログラム (1,289.7 lb)
    • ISS資材:1,023.0キログラム (2,255.3 lb)
    • 宇宙遊泳用機材:5.0キログラム (11 lb)
    • コンピュータ関連:56.0キログラム (123.5 lb)
    • ロシア製資機材:42.0キログラム (92.6 lb)
  • 梱包材等を含んだ総重量:2,342.0キログラム (5,163.2 lb)
  • CubeSat(非与圧): 83キログラム (183 lb)[12]
  • 廃棄物(大気圏突入により処分): 1,690キログラム (3,720 lb)[12]

今後のミッション

NASA はシグナス CRS OA-7を2016年12月30日に打ち上げる予定であったが、2016年10月になってNASAのペイロードを追加搭載するため打ち上げロケットをアンタレスからアトラス Vに変更して2017年3月に打ち上げると発表した[13]

2015年に締結されたNASA CRS-1契約において、オービタル・サイエンシズは2017年から2018年にかけて3回の追加ミッションを獲得した。シグナス CRS OA-8Eを2017年6月12日、同年中にシグナス CRS OA-9E、2018年にシグナス CRS OA-10Eを打ち上げる予定であるが、補給機の打ち上げスケジュールはISS参加国の要望により大きく変わりうる。また、スペースXボーイングが予定している初の有人商業飛行(アメリカの有人宇宙機としては2011年のスペースシャトル引退以来)の影響を受ける可能性もある[7][14]

CubeSat放出

ISS離脱後の2016年11月25日に高度500kmまで軌道を上げ、Spire Global社のCubeSat Lemur-2を放出した[15]

参考文献

  1. Bergin, Chris (2012年2月22日). Space industry giants Orbital upbeat ahead of Antares debut”. NasaSpaceflight (not affiliated with NASA). 2012年3月29日閲覧。
  2. Orbital ATK Team on Track for Fall 2015 Cygnus Mission and Antares Return to Flight in 2016”. Orbital ATK (2015年8月12日). 2015年8月12日閲覧。
  3. OA-5 Mission Page”. Orbital ATK (2016年10月15日). 2016年10月17日閲覧。
  4. Launch Schedule”. spaceflightnow.com. 2016年6月25日閲覧。
  5. Scimemi, Sam (2015年7月). International Space Station Status”. NASA. 2015年8月15日閲覧。
  6. Worldwide launch schedule”. spaceflightnow.com. 2015年2月12日閲覧。
  7. International Space Station Flight Schedule”. Students for the Exploration and Development of Space (2013年5月15日). 2015年8月12日閲覧。
  8. Cygnus Fact Sheet”. Orbital ATK (2015年3月24日). 2015年8月14日閲覧。
  9. “S.S. Alan Poindexter: Orbital ATK freighter named for late shuttle astronaut”. collectSPACE. (2015年6月7日). http://www.collectspace.com/news/news-060716a-orbital-atk-oa5-alan-poindexter.html
  10. Gebhardt, Chris (2015年8月14日). Orbital ATK make progress toward Return To Flight of Antares rocket”. NASASpaceflight.com. 2015年8月14日閲覧。
  11. Leone, Dan (2015年8月17日). NASA Orders Two More ISS Cargo Missions From Orbital ATK”. SpaceNews.com. 2015年8月17日閲覧。
  12. OA-5 Fact Sheet”. Orbital ATK. 2016年10月10日閲覧。
  13. https://www.nasaspaceflight.com/2016/11/oa-7-atlas-v-high-praise-antares-rtf/
  14. Krebs, Gunter Dirk (2015年8月18日). Cygnus-PCM (enhanced)”. Gunter's Space Page. 2015年8月18日閲覧。
  15. Foust, Jeff (2016年11月26日). “Spire deploys four satellites from Cygnus”. Space News. http://spacenews.com/spire-deploys-four-satellites-from-cygnus/
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