(マンナズ、*Mannaz[1]*Manwaz)は、ルーン文字の一つである。*Mannazは「 (m) 」の再建された名称であり、性的に中立な意味において「人、人間(英語: person, human being)」をあらわすゲルマン祖語の単語である。

名称
Maðr
「人、人間」"man, human"
形状 ゲルマン共通ルーン アングロサクソンルーン 北欧ルーン
Unicode
U+16D7
U+16D8
U+16D9
翻字 m
転写 m
IPA [m]
アルファベット順 第20字母 第14字母
ゲルマン共通ルーン文字
第1類
*Fehu [f] *Ūruz [u]
*Þurisaz [θ] *Ansuz [a]
*Raiđō [r] *Kaunan [k]
*Geƀō [ɣ] *Wunjō [w]
第2類
*Haǥ(a)laz [h] Nauđiz [n]
*Isaz [i] *Jē2ra- [j]
2haz [æː] *Perþō [p]
*Algiz [z] *Sōwilō [s]
第3類
*Tē2waz [t] *Berkanan [β]
*Ehwaz [e] *Mannaz [m]
*Laguz [l] *Ingwaz [ŋ]
*Ōþalan [o] *Dagaz [ð]
その他のルーン文字
北欧ルーン文字
Yr [ɻ] Kaun [k, g]
Maðr [m] Óss [ɑ̃, o]
Ár [a] Sol [s]
アングロサクソンルーン文字
Ōs [o] Āc [a]
Æsk [æ] Cēn [k, c, tʃ]
Gēr [j] Īor [jo]
Ȳr [y] Ēar [æɑ]
Ing [ŋ] Cweorð [kw]
Calc [k] Stan [st]
Gar [g]

概要

単語「Mannaz」は、古英語の「man, mann(「人間、人」)」へと発展していった。 (他にドイツ語の「Mann」、古ノルド語の「maðr」、ゴート語の「manna」、いずれも英語の「man」と同義語である。)

この語は、インド・ヨーロッパ祖語の語根「*man-(異形の*mon-も含む)」に由来している。 (サンスクリット語あるいはアヴェスター語manu-ロシア語muzh。いずれも「人、男性」を意味する。)

語源

アメリカン・ヘリテージ辞典(en)がそうであるように、語源の説明のいくつかは、語根を独立したものとみなしている。

インド・ヨーロッパ系の神話において、*Manusは、最初の男の名でもあった。(マンヌスマヌを参照。)

語源説明1

他のインド・ヨーロッパ祖語との関連を証明する語源説明の中で、「man(考える人 the thinker)」は、最も従来からある説である――つまりこの単語は、語根「*men-」(「考えること」の意。「mind(心)」の同根語)とつながりがある。

この語源説明は、「合理的な動物」としてルネ・デカルトによって与えられた「人(man)」の定義に適合する。 この説明はしかし、一般には受け入れられていない。

ゲルマン語派の言語に属さないフィンランド語においては、この語源としてありそうな類比がある。 フィンランド語では、「人間」は「ihminen」という単語である。その意味するところは、「不思議に思っている誰か」である。

語源説明2

第2の語源説明は、「man」の原型が「human」の原型の縮小形だと主張している。 「Human(人間)」は、「*dhghem-」つまり英語の「earth(地球)」に由来している。 「*(dh)ghom-on-」は、ある種の「earthling(人間)」である。 単語は、まさにその最終的な音節である「*m-on-」にまで縮小する。 エリック・パートリッジ[2]語源辞典『Origins』において、「man(人)」の項目にこの考え方を見い出せるだろう。

こんにち我々にゲルマン語の語形だけがあるとすれば、その派生論は有望な説であろう。 (また、トゥイストーマンヌスの父神)が大地から出現した神であることにも注意が必要。) しかし、その証拠となるはずのインド・イラン語派の単語「manu」は、事実上その可能性を否定する。

意味の変化

11世紀ごろ、その意味を「成人男性」に制限した「man」の使われ方は、後期古英語に見られ始めただけであった。そして、往事は「男性(male sex)」を表していた単語wer」「were1300年頃には使われなくなった。(しかし、例えば「werewolf人狼)」や「weregild贖罪金)」という単語に残っている。)

単語「man」の本来の意味は、古英語「mancynn」に由来する「mankind(人類)」のような単語に残されている。

20世紀に入ると、「人(man)」の一般的な意味はまたさらに制限されてしまった。 (しかし、合成語である「mankind(人類)」、「everyman(全員)」、「no-man(つむじ曲り)」、その他の語として残っている。)

現在は、昔そうであったように、ほとんど独占的に「成人の男性」を意味する語としての用例が大部分である。

ラテン系言語における「homo」の変化

興味深いことに、まったく同じことが、ラテン系言語の単語「homo」に起こっている。ロマンス諸語においては顕著である。

homme, uomo, hombre, homem」は、残された一般的な意味として、主に「男性」に適用されるようになった。

ルーン詩

3つすべてのルーン詩に、ノルウェー語アイスランド語の詩では maðr として、そして古英語の詩では man として記録されている。

Rune Poem:[3] 現代英語訳:

古ノルウェー語

Maðr er moldar auki;
mikil er græip á hauki.
Man is an augmentation of the dust;
great is the claw of the hawk.

古アイスランド語

Maðr er manns gaman
ok moldar auki
ok skipa skreytir.
homo mildingr.
Man is delight of man
and augmentation of the earth
and adorner of ships.

古英語

Man byþ on myrgþe his magan leof:
sceal þeah anra gehwylc oðrum swican,
forðum drihten wyle dome sine
þæt earme flæsc eorþan betæcan.
The joyous man is dear to his kinsmen;
yet every man is doomed to fail his fellow,
since the Lord by his decree
will commit the vile carrion to the earth.

脚注

  1. 語の隣の「*」は、これが再建された語であることを示す。
  2. Eric Partridgeニュージーランド生、イギリス人の辞書編纂者。英語の語源や俗語に関する著書多数
  3. 元の詩と訳は Rune Poem Page による。

関連項目

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