F-16XL (戦闘機)
F-16XLは、ジェネラル・ダイナミクス(のち軍用機部門はロッキード・マーティンに売却)が開発した試作戦闘爆撃機。
F-16XL
ジェネラル・ダイナミクス F-16XL
- 用途:戦闘機
- 分類:戦闘爆撃機
- 製造者:ジェネラル・ダイナミクス社
- 運用者: アメリカ合衆国(NASA)
- 初飛行:1982年7月3日
- 生産数:2機
- 原型機:F-16 ファイティング・ファルコン
概要
F-16 ファイティング・ファルコンをベースに大幅な改造を加えた試作戦闘爆撃機で、F-16の派生型である。第4.5世代ジェット戦闘機に分類される機体で、機体の大型化や主翼のクランクト・アロー・デルタ翼化によってF-16以上の搭載量を誇った。
アメリカ空軍の強化型戦術戦闘機(ETF:Enhanced Tactical Fighter)計画[注 1]に参加したが、ライバル機のマクドネル・ダグラス社(のちボーイング社によって買収)のF-15E ストライクイーグルに敗れ、採用を逃した。選定終了後、残った試作機2機は、NASAに引き渡され、飛行研究に使用された。
経緯
ETF計画への参加
開発は、1970年代後半から始まった。当時アメリカ空軍で使用されていた大型戦闘爆撃機F-111の老朽化に伴い、アメリカ空軍はEnhanced Tactical Fighter(ETF:強化型戦術戦闘機)計画 を発表した。計画では、制空戦闘能力、対地攻撃能力、超音速巡航性などを必要性能とした。これに対しジェネラル・ダイナミクスも、「既存機の改修という形でも、超音速巡航は可能」と、F-16の改修プランを提案した。ところが、ETF計画はまとまらず中止となってしまった。
しかし、マクドネル・ダグラスがF-15の派生型F-15E ストライクイーグルのプロトタイプを1981年に初飛行させたことから計画が再開、ライバルのジェネラル・ダイナミクスも前述の改修プランを元にF-16を大幅に改造した派生型F-16XLを1982年7月3日に初飛行させた。元は超音速巡航性能を達成するためのものであるが、要求仕様の変更で、搭載量や航続距離の向上を図った機体となり、超音速巡航性能は切り捨てられた[注 2]。
F-16XL 試作1号機はF-16 FSD(Full-Scale Development、全規模開発機) 5号機(75-0749、単座型)から改造された単座型、試作2号機はFSD 3号機(75-0747、単座型)から改造された複座型である。試作1号機と2号機の全長は同じである。
飛行テストは1984年2月に行われた。テストには、試作機の2機とも参加した。しかし、空戦能力、兵器搭載能力や被弾時の生存率、コスト(後述)など評価はF-15Eの方が高く、F-16XLは不採用となってしまった。
なお、F-16XLが採用されれば単座型にはF-16E、複座型にはF-16Fの名称が与えられる予定であった[注 3]。
特徴
基本構造
機体は、F-16をベースとしたこともあり、似ている部分や流用されている部分も多くあるが、その姿はF-16とは大幅に変わっている。
主な改造点は主翼にあり、標準型のF-16の主翼より20%大きく、クランクト・アロー・デルタ翼を採用している。それにより水平尾翼は無くなった。主翼の素材には、複合材料の一種の炭素繊維合成物(いわゆるカーボン複合材)が使用されていることもあり、それほど重くはならなかったが、それでも標準型のF-16より2,800lb(1,300kg)重くなっている。なお、当時はカーボン材の技術が現在の様に発展しておらず、難加工性や製造コストの高さから量産時の機体コストがF-15E(こちらは機体全体にチタン合金を使っている)よりも大幅に掛かる事もネックとなった。
機体は1.4m延長され、2枚のベントラルフィンは無くなり、尾翼部分は後ろにさらに3度傾けられた。このような改良によって、音速以下での低速飛行における安定性が向上させられた。元々F-16は運動性向上のため安定性を意図的に下げており(CCV技術)、戦闘機としての性能を一部妥協し、攻撃機・爆撃機としての性能を追求しているのがわかる。
スペック
- 乗員数:1-2名
- 全長:16.51m
- 翼幅:10.44m
- 全高:5.36m
- 最大離陸重量:22,000kg
- エンジン:GE F110-GE-129 ターボファンエンジン×1
- 最高速度:マッハ2.0
- 航続距離:4,590km
脚注
注釈
- 後の複合任務戦闘機(DRF)計画
- そのためのエンジンを搭載しない
- このE/F型の名前は、アラブ首長国連邦が採用しているF-16C/D Block 50/52の発展型のF-16E/F Block 60/62につけられている