2013年静岡県知事選挙
2013年静岡県知事選挙(2013ねんしずおかけんちじせんきょ)は、2013年(平成25年)6月16日に投開票が行われた静岡県知事を選出するための選挙。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
概要
現職の川勝平太の任期満了に伴う知事選挙。その川勝が2期目を目指し無所属で立候補したのに対し、共産党が公認する共産党県副委員長の島津幸広と政権与党の自民党が支援する多摩大学大学院教授などを歴任した実業家の広瀬一郎が立候補し、3氏による三つ巴の争いとなった。
主な争点は、福島第一原子力発電所事故などを受けた浜岡原発の再稼働の可否と現職が掲げる再稼働に関する住民投票の実施の可否、1期4年の川勝県政への実績の評価など。
各政党・団体の動向
先の衆院選で大勝し政権与党となった自民党は、2月中旬から県連幹部が同党からの候補擁立を模索し、現職の国会議員など十数人に出馬を打診したが、悉く固辞され人選は難航した[1]。そんな中で、ようやく3月上旬に入り感触を得たのが多摩大学大学院教授を務めていた広瀬であった[1]。その後、広瀬は親族などに出馬の自制を求められたが説得し、告示まで2か月を切った4月8日、ようやく広瀬の党からの擁立が決定した[1]。
その後、自民県連は広瀬への党本部推薦を上申し返答を待った[2]。しかし、ここで党本部推薦に異議を唱えたのが静岡県内で企業を経営する財界トップの有志らであった。その有志らは自ら自民党本部を訪れ、現職の川勝に失政がなく知事を交代する理由がない、県に政党間の争いを持ち込むべきではないなどとして広瀬の推薦を見送るように要請するという異例の展開となった[3]。その後、このことに危機感を抱いた自民県連は、再度党本部への広瀬推薦を求めた[4]。更に、広瀬自らも自民党本部に出向くなどした[5]が、最終的に自民党本部は広瀬の「推薦」を見送り、「支持」とすることを表明した[6]。
前回の選挙戦で現職の川勝を推薦していた民主党は、川勝が今回の選挙戦で推薦などを求めない「県民党」の立場で臨むことを表明した[7]ため、県連や党本部として特に推薦や支持をしなかったが、選挙戦では県内選出の衆議院議員で民主党幹事長の細野豪志や渡辺周などが川勝の応援演説に駆け付けるなど今回の選挙でも川勝の支援を強めている[8]。尚、川勝は県議会の民主系会派には自ら支援を要請している[9]。
自民党と自公政権を組んでいる公明党は、自民党県連から広瀬の推薦を要請された[10]が党本部として意見がまとまらず、広瀬を推薦せずに自主投票とすることを表明した[10]。その後、党本部も県本部の意思を尊重する形で自主投票を決定した[11]。
共産党は、党公認候補として党県副委員長を務めている島津を擁立した[12]。
第三極勢力として国政にも影響を与えている日本維新の会は、県総支部で広瀬を推す声が大勢を占め、党本部に広瀬の推薦を上申した[2]。しかし、自民党が広瀬の「推薦」を見送り「支持」としたことで、広瀬の推薦について自民党本部の推薦があることを前提としていた県総支部は一転して広瀬の推薦を取り消し、自主投票とすることを表明した[13]。
みんなの党は、各候補者から公認や推薦の申請がなかったとして、自主投票とすることを決定した[14]。
- その他の政党・政治団体
党の基本方針として脱原発を掲げる政治団体緑の党は、勝手連として川勝の支援を決めた[15]。
- 連合静岡
前回の知事選では川勝の勝利に大きく貢献していた連合静岡は、川勝が「県民党」を掲げ、各政党などに推薦を求めなかったことで、今回の知事選では川勝を支援することに留めた[16]。
- その他の団体
県医師連と県JAグループは、広瀬の推薦を決めている[17]。
この他、5月10日に行われた立候補予定者説明会には、静岡市清水区在住の自営業の男性が立候補を検討しているとして出席していたが、その後の目立った動きはなく、出馬を取り止めたと思われる[18]。
選挙データ
同日選挙
立候補者
3名、届け出順[22]。
立候補者 | 年齢 | 党派 | 新旧 | 肩書き |
---|---|---|---|---|
広瀬一郎 (ひろせ いちろう) | 57 | 無所属 (自民党 支持) | 新 | 無職、元大学教授 |
島津幸広 (しまづ ゆきひろ) | 56 | 日本共産党 | 新 | 共産党県委員会副委員長 |
川勝平太 (かわかつ へいた) | 64 | 無所属 | 現 | 静岡県知事 |
選挙のタイムライン
- 2013年4月11日 - 広瀬が東京都内のホテルで会見を開き、出馬を表明[23]。
- 2013年4月22日 - 川勝が県庁での定例会見で、出馬を表明[7]。
- 2013年5月7日
- 2013年5月14日 - 共産党県委員会が県庁で会見を開き、同党から島津を擁立することを発表[12]。
- 2013年5月18日 - 公明党県本部が幹事会を開き、自民党県連が同党に対し推薦を要請していた広瀬らを推薦せず、自主投票とする方針を決定した[10]。その後、同23日には、党本部としても自主投票とすることを決定した[11]。
- 2013年5月23日
- 2013年5月24日 - みんなの党が自主投票を決定[14]。
- 2013年5月27日 - 自民党本部は、同党県連が擁立し推薦を求めていた広瀬を推薦せず、支持に留めたことを決定[6]。
- 2013年5月28日 - 日本維新の会県総支部は、一旦は推薦を決めた広瀬を推薦せず、自主投票とすることを決定[13]。
- 2013年5月30日 - 告示。現職に対し、新人2人が挑む構図に。
- 2013年6月16日 - 投開票。
各候補の主な訴え
- 広瀬
- 浜岡原発再稼働は、専門性が高く国の意向も重要であるとして住民投票などでの県独自での再稼働の可否決定に否定的
- 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加反対
- 県の玄関口である静岡空港をより一層活用していき、観光業を活性化させ県の魅力を高めていく
- 教育にスポーツマンシップを導入
- 隣接県自治体との避難協定の締結
- メタンハイドレートの実用研究を進める など
- 島津
- 浜岡原発の即時廃炉
- 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加反対
- 静岡空港への税金投入を中止し、県民の暮らしや福祉を優先させる
- 競争教育からの離脱
- 県独自の奨学金制度の創設・拡充
- 上下水道などのインフラの耐震化強化
- 地場産業を生かしていき、災害対策などで雇用を創出 など
- 川勝
選挙結果
投票率は49.49%で、前回2009年の61.06%を大きく下回った(前回比 -11.57%)[24]。当日の有権者数は302万6955人[24]で投票者数は149万8069人であった[24]。
候補者別の得票数の順位、得票数[25]、得票率、惜敗率、供託金没収概況は以下のようになった。供託金欄のうち「没収」とある候補者は、有効投票総数の10%を下回ったため全額没収された。惜敗率は未発表のため暫定計算とした(小数3位以下四捨五入)。
順位 | 候補者名 | 党派 | 新旧 | 得票数 | 得票率 | 惜敗率 | 供託金 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
当選 | 1 | ■川勝平太 | 無所属 | 現 | 1,080,609 | 72.61% | ---- | |
2 | ■広瀬一郎 | 無所属 | 新 | 345,617 | 23.22% | 31.98% | ||
3 | ■島津幸広 | 日本共産党 | 新 | 61,980 | 4.16% | 5.74% | 没収 |
現職で2期目を目指す川勝は、浜岡原発の再稼働の是非を問う住民投票の実施を公約に掲げ、選挙戦では富士山の世界文化遺産登録に向けた活動や災害対策など1期目の実績を強調。特定の政党や団体などの推薦を受けない「県民党」の立場で臨みながらも、対立候補を擁立した自民党や川勝を実質支援した民主党などの政党支持層を始め、無党派層などの票もまとめ上げ、川勝が得票数2位の広瀬に対し3倍以上の票差をつけて圧勝した[26]。
自民党県連が擁立した広瀬は、県政と国政のねじれの解消を掲げ、選挙期間中には広瀬を「推薦」せず「支持」に留めた自民党本部からも石破茂自民党幹事長などの党三役などが応援演説に駆け付けるなど組織戦を展開。しかし立候補表明が4月と出遅れたのを始め、党本部が広瀬を「推薦」から「支持」に切り替えるなど混乱が続き、自民党の支持母体である財界や農協の支持も固められず、川勝に大差をつけられ敗れた。
共産党公認の島津は浜岡原発の廃炉を前面に掲げ、県政刷新を目指したが同党支持層もまとめきれず及ばなかった。
脚注
- “川勝流を問う(下) 前哨戦 自民「組織戦で勝算」”. 中日新聞. (2013年5月16日) 2013年6月1日閲覧。
- “広瀬氏の党本部推薦要請 自民県連、維新も”. 中日新聞. (2013年5月8日) 2013年6月1日閲覧。
- “広瀬氏の推薦慎重に 自民に財界トップら要請”. 中日新聞. (2013年5月14日) 2013年6月1日閲覧。
- “知事選 党本部推薦、改めて要請 自民県連 静岡”. 産経新聞. (2013年5月17日) 2013年6月1日閲覧。
- “自民党本部、支援確約も推薦“保留” 広瀬氏、幹事長らと面会 静岡”. 産経新聞. (2013年5月25日) 2013年6月1日閲覧。
- “自民は広瀬氏「支持」 党本部「推薦」見送り”. 中日新聞. (2013年5月28日) 2013年6月1日閲覧。
- “川勝氏が再選出馬表明 「総合計画を4年で実現」”. 中日新聞. (2013年4月23日) 2013年6月1日閲覧。
- “参院選前哨戦の様相 各陣営初日から幹部応援”. 中日新聞. (2013年5月31日) 2013年6月1日閲覧。
- “川勝氏、民主系会派に支援要請”. 中日新聞. (2013年5月2日) 2013年6月1日閲覧。
- “公明が自主投票へ”. 中日新聞. (2013年5月19日) 2013年6月1日閲覧。
- “公明党本部が自主投票決定”. 中日新聞. (2013年5月24日) 2013年6月1日閲覧。
- “共産・島津氏が出馬表明 「無駄省き福祉優先」”. 中日新聞. (2013年5月15日) 2013年6月1日閲覧。
- “広瀬氏推薦見送り 維新は自主投票へ”. 朝日新聞. (2013年5月29日) 2013年6月1日閲覧。
- “みんなの党は自主投票に 公認や推薦の申請なく”. 中日新聞. (2013年5月25日) 2013年6月1日閲覧。
- “緑の党が川勝氏を支援”. 中日新聞. (2013年5月24日) 2013年6月1日閲覧。
- “静岡県知事選告示、現職と2新人が立候補届け出”. 讀賣新聞. (2013年5月30日) 2013年6月1日閲覧。
- “県医師会が広瀬氏を推薦”. 中日新聞. (2013年5月24日) 2013年6月1日閲覧。
- “立候補予定者説明会に4陣営”. 中日新聞. (2013年5月11日) 2013年6月1日閲覧。
- 静岡県知事選挙の日程 - 6月16日(日曜日)静岡県知事選挙 特設ページ
- 2013年6月16日の選挙 -静岡県- - 政治山
- “知事選に投票を イメージキャラに佐津川さん起用”. 中日新聞. (2013年5月30日) 2013年6月1日閲覧。
- 静岡県知事選挙候補者届出 - 6月16日(日曜日)静岡県知事選挙 特設ページ
- “自民擁立の広瀬氏 正式出馬表明”. 中日新聞. (2013年4月12日) 2013年6月1日閲覧。
- 静岡県知事選挙の投票状況(確定) - 静岡県選挙管理委員会
- 静岡県知事選挙の開票状況(確定) - 静岡県選挙管理委員会
- “川勝知事 大差再選 自民系・広瀬氏ら破る”. 中日新聞. (2013年6月17日) 2013年6月17日閲覧。