馬鹿洞人

馬鹿洞人(ばろくどうじん、英語: Red Deer Cave people)は、知られているうちで最も新しい、現生人類に似ていない先史時代人類である。年代測定で14,500-11,500年前と判定された化石中国の馬鹿洞と老磨槽洞で発見された。旧人類現生人類の特徴を合わせもつ彼らは比較的最近まで生存していた人類の別のと見られ、現生人類の遺伝子プールに寄与することなく絶滅したと考えられている[1]。馬鹿洞においては大きなシカを調理していた痕跡が残されている[2]

馬鹿洞人
絶滅 (EX)
隆林洞で発見された頭蓋骨の一部
地質時代
0.0145–0.0115 Ma
更新世後期
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 有胎盤下綱 Placentalia
: サル目 Primates
亜目 : 直鼻猿亜目 Haplorrhini
下目 : 真猿型下目 Simiiformes
上科 : ヒト上科 Hominoidea
: ヒト科 Hominidae
亜科 : ヒト亜科 Homininae
: ヒト族 Hominini
亜族 : ヒト亜族 Hominina
: ヒト属 Homo
: 判別不能

発見

下アゴ

1979年穴居者頭蓋骨の一部が中国広西チワン族自治区百色地区隆林各族自治県徳峨郷にある老磨槽洞で発見された。さらに1989年には雲南省紅河ハニ族イ族自治州蒙自県文瀾鎮にある黄家山馬鹿洞においても追加の人骨が出土した[3]。中国とオーストラリアの研究チームによる研究成果は2012年3月14日付で『PLoS ONE』のオンライン版に掲載された[4]。20年以上も前に発見されていたが、最近になるまで分析されていなかった[5]。馬鹿洞の穴居者の化石は化石堆積層の中から発見されたを使用した放射性炭素年代測定で14,500-11,500年前の間と判定された[5]。この期間中にネアンデルタール人など他のすべての先史時代人類は死滅したと考えられている[5]。つまり、馬鹿洞人は13,000年前と判定されたホモ・フローレシエンシスよりもさらに新しい時代に生きていたことになる[5]

解剖学

比較的最近の時代にもかかわらず、化石は原始的な人類の特徴をいくつも備えている。のっぺらとした、幅広のおとがいの小さい突き出たアゴ大きな臼歯眼窩上隆起の発達、分厚い頭蓋骨、適度な脳容積などの現生人類とは異なる目立った特徴を持っていた[5]

未知の種の可能性

馬鹿洞人の物理的特徴は現生人類とは異なる未知の種の可能性もあるとして注目されているが、発見した研究チームは新種として分類することに慎重な姿勢を見せている[5]ロンドン自然史博物館クリス・ストリンガーは彼らが現生人類デニソワ人交配した結果である可能性を示唆している[2]。他の科学者はその独自の特徴がヒト個体群に予想される変動の範囲内であるとして依然として懐疑的である。ワシントン大学自然人類学者エリック・トリンカウスは「頑健な初期現生人類を不運にも過大に誤って解釈したものであり、おそらくは現在のメラネシア人に近い存在だろう」と話し、ドイツマックス・プランク進化人類学研究所に所属する自然人類学者フィリップ・ガンツも馬鹿洞人の奇妙な外見的特徴はおそらく「現生人類が多様性に富んだ種であることを示すものにすぎない」と述べている[5]

DNAを抽出する試みはこれまでのところ成功していないが、今も継続している。抽出が成功すれば、このグループと他の現生人類との関係を判定することが可能になる[5]

異称

中国語の「马鹿(馬鹿)」は「アカシカ」を意味する語で[6]日本語における「馬鹿」のような侮蔑の含意はない。英語では洞窟の名「馬鹿洞」を意訳して Red Deer Cave とし、馬鹿洞人を Red deer cave people (human) [7]、あるいは Red deer people [8]と表記している。

日本語では「馬鹿」の表記を避け(あるいは英語表記からの翻訳形で)、「アカシカ人」、「赤鹿人[9]、あるいは「紅鹿人[10]とする例がある。

また、中国語においても、「赤鹿人」、「赤鹿洞人[11]、「紅鹿洞人[12]などとする例がある。

出典

  1. Deborah Smith (2012年3月14日). “Scientists stumped by prehistoric human whose face doesn't fit”. Brisbane Times. http://www.brisbanetimes.com.au/national/scientists-stumped-by-prehistoric-human-whose-face-doesnt-fit-20120314-1v3m0.html 2015年10月23日閲覧。
  2. Barras, Colin (2012年3月14日). Chinese human fossils unlike any known species”. New Scientist. 2015年10月23日閲覧。
  3. Curnoe, D.; Ji, X.; Herries, A. I. R.; Bai, K.; Taçon, P. S. C.; Bao, Z.; Fink, D.; Zhu, Y. et al. (2012). Caramelli, David. ed. “Human remains from the Pleistocene-Holocene transition of southwest China Suggest a complex evolutionary history for East Asians”. PLoS ONE 7 (3): e31918. doi:10.1371/journal.pone.0031918. PMC 3303470. PMID 22431968. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3303470/.
  4. 中国で発見の化石、未知の人類か”. NikkeiBP.co.jp (2012年3月15日). 2015年10月23日閲覧。
  5. James Owen (2012年3月14日). “Cave Fossil Find: New Human Species or "Nothing Extraordinary"?”. National Geographic News. http://news.nationalgeographic.com/news/2012/03/120314-new-human-species-chinese-plos-science-red-deer-cave/ 2015年10月23日閲覧。
  6. 马鹿”. Weblio日中中日辞典. 2023年2月19日閲覧。
  7. Scientists Sequence Genome of Red Deer Cave Human”. Sci.News.. 2023年2月19日閲覧。
  8. A new chapter in human history: Startling discovery of Stone Age cavemen in China who 'are an entirely new species'”. Mail Online (Daily Mail). 2023年3月15日閲覧。
  9. 人類は多くの人類と共存した ネアンデルタール人、アカシカ人、デニソワ人、フローレス人”. こういち (2015年8月14日). 2015年10月26日閲覧。
  10. 未知の原始人類? 中国の「紅鹿人」 豪中研究”. AFPBB (2012年3月16日). 2015年10月26日閲覧。
  11. 石器時代的新人種:赤鹿人,在中国被發現”. 360doc (2012年3月17日). 2015年10月26日閲覧。
  12. 全新人種 中國發現「紅鹿洞人」具古今雙特徴”. ETtoday東森新聞雲 (2012年3月16日). 2015年10月26日閲覧。

関連項目

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