隠岐諸島

隠岐諸島(おきしょとう)は、島根半島の北方約50 kmに位置する島々である。隠岐群島(おきぐんとう)、隠岐島(おきのしま)とも呼ばれる[注 1]。 現在は島根県隠岐郡に所属している。山陰地方では今[1]でも隠岐諸島を指して隠岐国(おきのくに)と呼ぶ場合がある。

隠岐諸島
島後(前)、島前(奥)
隠岐諸島の位置(日本内)
隠岐諸島
隠岐諸島
隠岐諸島の位置(島根県内)
隠岐諸島
隠岐諸島
地理
場所 日本海
座標 北緯36度12分00秒 東経133度10分00秒
島数 184以上
主要な島 知夫里島中ノ島西ノ島島後
面積 345.92 km2 (133.56 sq mi)
最高標高 608 m (1995 ft)
最高峰 大満寺山
行政
都道府県 島根県の旗 島根県
隠岐郡
町村 海士町
西ノ島町
知夫村
隠岐の島町
最大都市 隠岐の島町
人口統計
人口 20,126(2017年10月1日年時点)
人口密度 58.2 /km2 (150.7 /sq mi)
言語 日本語隠岐方言
追加情報
時間帯
隠岐諸島の地形図
島前(左)、島後(右)
島前は外輪山が中央火口丘を囲んだ形状をしている。
島前

概要

隠岐諸島は本州南西部の島根半島の北の日本海、北緯36度付近に位置する。隠岐諸島は島後水道を境に島前(どうぜん)と島後(どうご)に分けられる。

島前は「島前三島」と呼ばれる知夫里島知夫村)、中ノ島海士町)、西ノ島西ノ島町)から構成される群島である。これに対し、島後は1島(隠岐の島町)のみである。島後の面積は約242 km2で、日本列島では徳之島に次いで大きく、15番目の面積を持つ[2]。主な島は、これら4島だが、付属の小島は約180を数える。

隠岐諸島の最高峰は島後の中央やや東側に所在する大満寺山で、山頂の標高は608 mである。かつては摩尼山と呼称された。

島根県は隠岐諸島を管轄する隠岐支庁を置いており、支庁所在地は隠岐の島町(旧西郷町)である。人口18,548人、面積345.92km²人口密度53.6人/km²。(2023年6月1日、推計人口

1963年に隠岐諸島のほぼ全域が、大山隠岐国立公園に指定された。特に、島前の西ノ島町に所在する国賀海岸は、高さ100 mから257 mに達する海食崖が連なった景勝地として知られる。

地史・地質

隠岐諸島の地図

隠岐諸島にはユーラシア大陸の縁辺であった時代と、島根半島の先端であった時代とがある[3][4]。同諸島と島根半島の間の水深は70 mほどで[3]、2万年前の氷期には現在より海面が130 mほど低下し半島と陸続きとなっていた[3]。その後の海面の上昇によって約1万年前に現在のような離島となった[3]

また同諸島は、約500万年前に活動した火山でもある。侵食作用によって火山地形が失われたため、火山としてではなく第三紀火山岩類として扱われる[注 2]。島前火山はカルデラを形成しており、その中央火口丘焼火山(たくひやま)である[5]

火山の酸性土壌が多いため、隠岐の牧畑といった原始的農法も近年まで続けられたのである[6]

黒曜石の産地として有名であり、島後より産出される「隠岐片麻岩」は日本最古の石として知られる。

歴史・文化

後鳥羽上皇の隠岐配流を描いた障壁画安土桃山時代1600年頃)

隠岐諸島には縄文時代の早期か前期まではヒトが住みつき、本州と活発な交流が有った痕跡が、出土した石器や土器に現れている。

古事記』では「隠伎之三子島(おきのみつごのしま)」と記される[7]

日本神話「因幡の白兎」に登場し、古代には隠岐諸島に隠岐国が置かれていた。古くから遠流の島として知られ(例として、『続日本紀』天平宝字8年9月18日条など)、小野篁伴健岑藤原千晴平致頼源義親板垣兼信佐々木広綱後鳥羽上皇後醍醐天皇飛鳥井雅賢などが流された。

中世には国府尾城甲尾城)の隠岐氏が隠岐守護代として隠岐を支配した。隠岐守護は出雲の京極氏や尼子氏が兼ねたものの、本人が渡海した試しは無かった。

近世は初め出雲の堀尾氏や京極氏の分国であったが、後に江戸幕府の直轄領(天領)にされた。天領の統治は出雲の松平氏が任された。江戸時代に入ると、隠岐は西廻り航路に組み入れられ、北前船の風待ち港として繁栄し、日本各地の文化が流入した。明治元年(1868年)には松江藩と隠岐在住の住民間で隠岐騒動(雲藩騒動)と呼ばれる一連の騒動が発生した。

特異な民俗行事としては、「牛突き」が知られる。配流された後鳥羽上皇が喜んだという口承が伝わる日本最古の闘牛である。また隠岐には古典相撲が伝わっており、神社の遷宮やトンネル完工、校舎の新築など公共の慶祝事業に伴って、神社や仏教寺院の境内、学校の校庭など至る所で、土俵が設置される。なお、隠岐方言は雲伯方言に属している。

隠岐ジオパーク

隠岐諸島および海岸から1 kmの海域を合わせた、673.5 km2の範囲を「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」(隠岐ジオパーク)として、2009年10月に日本ジオパークネットワークに、2013年9月には世界ジオパークネットワークに認定された[8][9]。これは、日本国内では6地域目の認定である。これを受けて、島後に所在する隠岐空港にも「隠岐世界ジオパーク空港」の名が付された。

隠岐諸島内での主な交通手段として、レンタカー、観光タクシー、観光バス、サイクリング、路線バス、貸切バスが挙げられる[10]。ただし、路線バスは運行本数が少ない点に注意したい[11]

島前・島後間はフェリーまたは高速船レインボージェットで、島前3島間は内航船で移動できる[12]

運輸

隠岐諸島へのフェリー

隠岐諸島への一般的なアクセス方法は、フェリー、高速船、飛行機の3通りが有る。通年運行のフェリーは約2時間30分で本州と隠岐を結ぶ。高速船での所要時間は約1時間だが、冬期は運行していない。航空便については、島後に隠岐空港があり、出雲空港と大阪国際空港にそれぞれ1日1往復の便が運行されている。大阪国際空港発着の便は、夏期に機材が大型化(ボーイング737-800)される。

諸島一覧

島名 標高 (m) 位置 島名 標高 (m) 位置
島前グループ 島後グループ
中ノ島246,2北緯36度05分00秒 東経133度06分00秒 島後607,7北緯36度15分00秒 東経133度17分00秒
別府立島37北緯36度08分09秒 東経133度02分37秒 黒島北緯36度20分59秒 東経133度16分16秒
シシカ立島47北緯36度07分59秒 東経133度03分17秒 松島66北緯36度21分00秒 東経133度16分35秒
鼻津島62北緯36度08分06秒 東経133度03分42秒 沖ノ島45北緯36度21分16秒 東経133度16分38秒
星神島74北緯36度09分13秒 東経133度04分23秒 白島67北緯36度21分10秒 東経133度16分50秒
冠島94北緯36度08分17秒 東経133度05分30秒 小白島36北緯36度21分01秒 東経133度16分57秒
見付島25北緯36度06分23秒 東経133度02分32秒 長島北緯36度20分41秒 東経133度17分21秒
小桂島13北緯36度03分01秒 東経133度00分32秒 帆掛島26北緯36度20分35秒 東経133度17分15秒
大桂島48北緯36度02分54秒 東経133度00分16秒 雀島北緯36度20分13秒 東経133度17分30秒
瀬脇南小島北緯36度03分31秒 東経132度57分14秒 釜島47北緯36度19分47秒 東経133度18分44秒
大神立岩52北緯36度04分55秒 東経133度56分50秒 烏帽子島北緯36度19分43秒 東経133度18分42秒
平島北緯36度05分38秒 東経132度57分59秒 琴島22北緯36度19分41秒 東経133度19分22秒
亀礁北緯36度05分56秒 東経132度57分35秒 出島北緯36度18分35秒 東経133度19分39秒
天上界北緯36度05分55秒 東経132度57分47秒 沖ノ島北緯36度18分31秒 東経133度20分38秒
鬼ヶ島23北緯36度06分59秒 東経132度58分54秒 黒島北緯36度18分06秒 東経133度20分42秒
黒島北緯36度07分10秒 東経132度59分17秒 後平島7北緯36度18分00秒 東経133度21分16秒
亀島22北緯36度06分59秒 東経132度59分14秒 長島39北緯36度18分00秒 東経133度21分39秒
たんなかや北緯36度06分55秒 東経132度59分36秒 ローソク島北緯36度17分53秒 東経133度21分44秒
小黒島北緯36度17分57秒 東経133度21分55秒
西ノ島451,7北緯36度04分40秒 東経133度02分00秒 大黒島北緯36度17分52秒 東経133度22分00秒
二股島72,6北緯36度08分51秒 東経133度07分23秒 大鼻島北緯36度17分55秒 東経133度22分18秒
小森島53,9北緯36度07分41秒 東経133度07分16秒 三峰島77北緯36度17分48秒 東経133度22分13秒
オイシマ北緯36度06分49秒 東経133度07分33秒 ガタガタ島北緯36度17分43.5秒 東経133度21分48.5秒
大森島154,8北緯36度08分09秒 東経133度10分30秒 松島北緯36度17分39秒 東経133度21分44秒
船島2北緯36度17分39秒 東経133度21分44秒 平島北緯36度17分35秒 東経133度21分33秒
境礁北緯36度7分39秒 東経133度10分39秒 平島4北緯36度16分56秒 東経133度21分59秒
松島126,4北緯36度6分23秒 東経133度9分49秒 殿島北緯36度16分53秒 東経133度22分19秒
ヒーゴ島59,0北緯36度4分9秒 東経133度8分12秒 黒島北緯36度16分50秒 東経133度22分24秒
金床岩5北緯36度4分14秒 東経133度7分55秒 松島33北緯36度16分46秒 東経133度22分29秒
居島北緯36度4分9秒 東経133度4分36秒 黒島21北緯36度16分17秒 東経133度23分9秒
カズラ島22北緯36度6分55秒 東経133度5分8秒 カビ島北緯36度16分14秒 東経133度23分26秒
カモ島北緯36度7分5秒 東経133度5分21秒 ツル島18北緯36度15分36秒 東経133度23分1秒
三郎岩36北緯36度7分12秒 東経133度5分45秒 津ノ目島75北緯36度15分3秒 東経133度22分39秒
沖津ノ目島48北緯36度14分57秒 東経133度22分53秒
知夫里島324,5北緯36度00分55秒 東経133度01分58秒 殿島北緯36度14分2秒 東経133度22分41秒
鈴島15北緯36度1分59秒 東経133度0分43秒 サザエ島北緯36度13分46秒 東経133度22分37秒
ウデ島19北緯36度1分56秒 東経133度1分13秒 立島北緯36度12分25秒 東経133度22分14秒
表島北緯36度1分59秒 東経133度1分39秒 大亀島31北緯36度12分24秒 東経133度20分51秒
竹島50北緯36度0分40秒 東経133度4分27秒 小亀島北緯36度12分24秒 東経133度20分44秒
根イ島24北緯36度0分29秒 東経133度4分16秒 京ヶ島北緯36度12分16秒 東経133度20分41秒
赤島北緯36度0分7秒 東経133度3分57秒 姫島北緯36度11分46秒 東経133度20分20.5秒
小波加島26北緯35度59分56秒 東経133度4分22秒 黒島北緯36度10分9秒 東経133度20分35秒
大波加島78北緯35度59分48秒 東経133度4分40秒 コグリ島北緯36度10分23秒 東経133度17分56秒
渡神北緯36度0分11.5秒 東経133度3分14秒 中ノ島25北緯36度10分29秒 東経133度17分34秒
船島14北緯36度0分9秒 東経133度3分5秒 松島16北緯36度11分13秒 東経133度16分52秒
島津島64北緯35度59分53秒 東経133度3分5秒 アヅキ島北緯36度10分41秒 東経133度16分42秒
鵜島北緯35度59分53.5秒 東経133度2分19秒 松島18北緯36度9分28秒 東経133度15分12秒
浅島30北緯35度59分45秒 東経133度2分23秒 神島25北緯36度9分14秒 東経133度15分18秒
沖ノ島北緯35度59分30秒 東経133度2分3秒 四敷島15,0北緯36度9分25秒 東経133度14分17秒
御鳥居島北緯35度59分40秒 東経133度1分53秒 大潟島13北緯36度9分50秒 東経133度14分24秒
神島84,4北緯35度59分37秒 東経133度1分42秒 鵜図島82,4北緯36度10分11秒 東経133度13分53秒
音部島11,6北緯36度10分42秒 東経133度11分54秒
那久岬北緯36度12分42秒 東経133度10分54秒
箱島北緯36度14分45秒 東経133度11分16秒
元島北緯36度14分59秒 東経133度10分32秒
三岩北緯36度16分16秒 東経133度11分11秒
弁天島71北緯36度17分2秒 東経133度11分45秒
小島北緯36度17分37.5秒 東経133度11分35秒
夜母瀬来北緯36度18分5秒 東経133度11分42秒
イガイ島北緯36度18分16.5秒 東経133度11分49秒
黒島北緯36度18分16秒 東経133度11分54.5秒
平島北緯36度18分43.5秒 東経133度12分30秒
蝋燭島北緯36度18分44秒 東経133度12分39秒
鉄砲岩北緯36度18分47秒 東経133度12分50秒
馬背島北緯36度18分50秒 東経133度12分52秒
立島北緯36度18分55秒 東経133度13分00秒
松島北緯36度18分52秒 東経133度13分12秒
赤島北緯36度18分53秒 東経133度13分17秒
黒島48北緯36度20分05秒 東経133度14分09秒

出身人物、ゆかりのある人物

脚注

注釈

  1. 隠岐島は「隠岐島」という名を持った、1つの島嶼を指すのではなく、隠岐諸島を総称する言葉である。また「隠岐島」という名を持つ単独の島嶼は、そもそも隠岐諸島内に存在しない。
  2. 「火山」とは第四紀に活動した物を指し、第三紀に活動した場合は「火山岩類」と称されている。

出典

  1. 隠岐國商工会ウェブサイト 2012年7月28日0:35閲覧
  2. 国立天文台理科年表 平成19年丸善、2007年、565頁頁。ISBN 4621077635http://www.rikanenpyo.jp/
  3. 隠岐ジオパーク、2017年5月閲覧
  4. 日本海側の代表的な島嶼・隠岐諸島における生物多様性の調査研究 - 林蘇娟・初見真知子ら、2017年5月閲覧
  5. B1-25 隠岐島前火山,焼火山火砕丘の噴火機構(ラハール・水蒸気爆発・熱水系,口頭発表) 『日本火山学会講演予稿集』 2014巻 セッションID:B1-25, doi:10.18940/vsj.2014.0_69
  6. 藤岡謙二郎『五訂 人文地理学 <改訂版>』 (大明堂、1982年)107頁
  7. 伊東ひとみ『地名の謎を解く』新潮社、2017年、10頁
  8. 隠岐ジオパークが世界ジオパークに認定されました(速報)”. 隠岐の島町 (2013年9月9日). 2013年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月4日閲覧。
  9. “世界ジオパーク:島根・隠岐諸島が認定 国内6地域目 -”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2013年9月9日). オリジナルの2015年1月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150128112950/http://mainichi.jp/feature/news/20130910k0000m040111000c.html 2019年3月4日閲覧。
  10. 隠岐の島町観光協会 隠岐の島へのアクセスをご紹介
  11. 隠岐の島町観光協会 路線バス
  12. しまね観光ナビ 絶景を巡る!隠岐の船旅「フェリー・高速船」編

参考文献

関連項目

外部リンク

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