陰嚢

陰嚢(陰囊、いんのう、: Scrotum)は、一部の哺乳類オスが持つ皮膚筋肉から成る器官で、睾丸(精巣)を包むコブ状の突出部。腹部の延長線に位置し、主にヒトやその他の一部哺乳類の場合、付け根は思春期以降陰毛によって覆われる。女性では、陰嚢は大陰唇に相当する。

陰嚢
正面から見たヒトの陰嚢
英語 Scrotum 
動脈 前陰嚢枝
後陰嚢枝
静脈 精巣静脈
神経 後陰嚢神経
陰部枝
会陰枝

一般に睾丸と混同される事があるが、睾丸が精巣すなわち性器自体を指すのに対し、陰嚢はそれを包む袋を指す。布久利(ふぐり)とも言い、俗に、(玉袋、皮袋)、いなり(おいなりさん)とも言われる。東北地方の一部の地域では、じじこまたはすずこ(ずの発音はじに近い)とも呼称される。

概要

現生哺乳類のうち、有袋類北方真獣類の大多数が持つ器官である。ただし、それぞれで独自の進化を遂げており、有袋類では陰茎の前側に位置し、ヒトを含む大多数の北方真獣類とは位置が異なる[1] [2]

ヒトの場合、男性のみに存在し、陰茎の付け根にあり、体外に膨らむ。表面はメラニン汗腺が多い。皮下脂肪はなく、表面から順に、表皮真皮、肉様膜、コールス筋膜、4層の被膜、睾丸鞘膜の9層の薄い平滑筋で構成する。厳密に言えばとは違うが、人間の皮の中で一番厚いと言われる。陰嚢の真ん中の線を陰嚢縫線という。中の2つの睾丸は平行でなく、左側の睾丸が右側よりも垂れ下がっている

精子の形成に適切な温度(34-35度)を維持する機能を持ち、温度によって伸展または収縮し、暑い時は広がって放熱を促進し、寒いときは縮まって放熱を抑止する。また、陰茎が勃起した際に皮が引っ張られ、性行為等における射精直前には縮み上がる。

陰嚢は男性器のタナー段階Iは思春期前・幼児型、II・III・IVで発達、Vで成人型となる

色は思春期前は肌色に近く、男性器タナー段階IIで思春期は始まる精巣容量が4ml以上になると共に(この段階で思春期に入った事に気づきにくく、身長の伸びのピークを迎えるか陰毛が発生(陰毛のタナー段階II、男性器のタナー段階IIIになってから約1年後)した時点で思春期に入った事に気づきやすい[3][4])陰嚢が増大し、しわがきめ細かく赤みが帯びる。IIIでさらに増大し、IVで陰嚢がさらに増大すると共に黒ずんでくる[5]

疾患

脚注

注釈・出典

  1. Kleisner, Karel; Ivell, Richard; Flger, Jaroslav (2010). “The evolutionary history of testicular externalization and the origin of the scrotum”. Journal of Biosciences 35: 27-37.
  2. 一方、一部の北方真獣類は位置が異なり、アナウサギ等では有袋類と同じように陰茎の前側に、アフリカイエローハウスコウモリでは肛門の後側にある。 ドリュー, リアム 著、梅田智世 訳『わたしは哺乳類です : 母乳から知能まで、進化の鍵はなにか』インターシフト、合同出版、2019年(原著2017年)、注(2)頁。ISBN 9784772695640。
  3. 「思春期早発症」とは(武田薬品工業)
  4. 思春期早発症の症状(武田薬品工業)
  5. 大山建司「<総説> 思春期の発現」『山梨大学看護学会誌』第3巻第1号、山梨大学看護学会、2004年、3-8頁、doi:10.34429/00003695ISSN 1347-7714

関連項目

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