立法院 (中華民国)

立法院(りっぽういん、中国語: 立法院, 拼音: Lìfǎ Yuàn)は、中華民国立法府。「国家最高の立法機関」(中華民国憲法62条)とされる一院制議会

立法院
立法院
Legislative Yuan
第10回立法院
紋章もしくはロゴ
種類
種類
沿革
設立1928年12月5日
役職
院長
游錫堃民主進歩党)、
2020年2月1日より現職
副院長
蔡其昌民主進歩党)、
2020年2月1日より現職
秘書長
林志嘉台湾團結聯盟)、
2020年2月1日より現職
副秘書長
高明秋
構成
定数113 [1]
院内勢力
欠員(1)
委員会
任期
4年
選挙
小選挙区比例代表並立制
前回選挙
2020年1月11日
議事堂
議場外観
議場内観
中華民国の旗 中華民国台北市中正区中山南路1号
立法院議場
ウェブサイト
立法院
憲法
中華民国憲法
脚注
  1. 10th Legislative Yuan Seat Composition.svg(中国語)
  2. 議長含む
立法院
立法院正門
各種表記
繁体字 立法院
簡体字 立法院
拼音 Lìfă Yùan
注音符号 ㄌㄧˋ ㄈㄚˇㄩㄢˋ
発音: リーファ-ユエン
台湾語白話字 Li̍p-huat-īnn
英文 Legislative Yuan of the Republic of China

概要

中華民国の建国者である孫文の「五権分立」理論に基づいて、行政院司法院考試院監察院と共に成立した一院制の立法機関。立法院に所属する議員を立法委員という。

中華民国には元来、総統副総統の任免権、憲法改正権を有する最高機関「国民大会」が存在したが、2005年に廃止された為、立法院が名実共に唯一の最高立法機関となった。

また、1948年から1991年までは中国大陸で選出された議員が大半を占めていたが、1992年以降は台湾島を中心とする有権者によって選出された議員だけで構成・改選されており、実質は中華民国台湾地区(台湾、澎湖、金門、馬祖)の最高立法機関となっている。

2月から5月まで、9月から12月までの二会期制を採用している。現在、議員定数113、任期4年。

権限

各国の立法機関と同様、法案・予算案の議決権、条約案の承認権、憲法改正案の発議権を有する他、2005年憲法改正により、次のような強力な権限が付与されているのが特徴である。

  • 正副司法院長、大法官(憲法裁判所裁判官)、正副考試院長、正副監察院長等の人事同意権:いづれも総統が任命権者。
  • 行政院長不信任案議決権(憲法増修条文4条1項):内閣全体に対して不信任を表明する日本の内閣不信任決議と異なり、行政院長のみが対象となる。これに対抗して、総統は立法院解散権がある。
  • 正副総統罷免案提案権(憲法増修条文2条9項):立法委員総数4分の1以上の発議、同3分の2以上で可決した時は、罷免案の国民投票を実施できる。
  • 正副総統弾劾案議決権(憲法増修条文4条7項、2条10項):立法委員総数2分の1以上の発議、同3分の2以上で可決した時は、司法院大法官(憲法裁判所の大法廷に相当)に弾劾審理を要請出来る。
  • 領土変更権(憲法増修条文2条5項):立法委員総数の4分の1以上の発議、同4分の3以上の出席、出席委員の4分の3以上で可決した時。更に、国民投票による承認が必要。

沿革

1928年民国17年)、中国国民党が中国統一を完成して軍政期から訓政期に移行し、首都南京で成立した。当初49名から発足したが(任期2年)、4期目から194名に増員された。抗日戦争中は任期が14年に延長されたが、この間に民法、刑法等の基本法典を制定した。

1947年(民国36年)中華民国憲法施行。翌1948年、憲政下初の立法委員選挙が実施され、第1期立法委員760人を選出した。

しかし、中国国民党が率いる中華民国政府(国民政府)は、中国共産党との内戦1949年台北に遷都した為、立法院も1950年に台北に移転した。この時第1期立法委員の内380人余りが台湾に移った。

立法委員の任期は3年と定められていたが(憲法65条)、台北遷都後は憲政停止と戒厳体制(動員戡乱時期臨時条款)により、第1期立法委員は1991年に総辞職する迄改選されず、万年議員と揶揄された。

ただ、1969年の補選で11名増員され、1972年には任期3年の定数51名の台湾選出枠が設けられた(1999年から2016年迄立法院長を勤めていた王金平は1975年当選組)。この改選枠は1989年には定数130名迄拡大され、大陸で選出された「万年議員」と並存する状態が続いた。

1989年(民国78年)、戒厳令解除後では初となる改選で、合法化された民主進歩党(民進党)が21議席を獲得(国民党は72議席)。1991年李登輝総統の勧告により第1期立法委員が総辞職し、1992年、初の全面改選が実施され、第2期立法委員161人を選出した(国民党96、民進党50)。以後、3年毎に改選され、1998年には定数225名に拡大された。

民進党・陳水扁政権誕生後の2001年第5回選挙で、民進党が初の第一党となったが、過半数には達せず、少数与党となった。2008年第7回選挙で、国民党が第一党に返り咲いた。

2008年の第7期から定数113に半減、任期4年となり、正副総統の罷免・弾劾、行政院長不信任議決権、領土変更権など権限強化が図られた。他方、総統に立法院解散権が付与された(現在、立法院解散権が行使されたことはない)。

2016年1月16日総統選挙と同時に行われた第9回選挙により初めて民進党は単独過半数に達し、総統選挙に当選した民進党の蔡英文の下、多数与党を形成した。これにより、国民党は立法院成立以降守り続けていた立法院長(国会議長)の座を初めて他党に明け渡す事になった。

建物

南京に立法院があった時期、議事堂は南京市中山北路に建っていたが、現在は人民解放軍の軍人倶楽部となっている。

台北移転後は中山堂(日本統治時代の台北公会堂)を使用していたが、1960年(民国59年)以後は日本統治時代の「台北州立台北第二高等女学校」校舎(台北市中山南路)を使用している。

構成

選挙

2002年~2008年(第5期、第6期)は、定数225(中選挙区・一部小選挙区168、比例代表41、原住民枠8、海外華僑代表4)だった。

2008年(民国97年)1月12日第7回選挙より「単一選区両票制並立代表並立制」が採用され、定数113議席(小選挙区73、原住民6、比例代表・海外華僑代表34)、任期4年となった。

・有権者:20歳以上の中華民国国籍保持者

  選挙区(小選挙区候補者または原住民代表候補者)に対して1票、比例代表(政党)に対して1票、合計2票を投じる。

1.小選挙区(73議席):台湾地区全体を73選挙区に区分、各選挙区で最多得票の候補者1名が当選。原住民戸籍でない有権者が、本籍地の選挙区において投票可。当選者に男女数に関する制約はない。

2.原住民代表(6議席):台湾地区全体で1選挙区。6議席は、平地原住民代表3議席と山地原住民代表3議席。平地原住民戸籍または山地原住民戸籍の有権者が投票可。当選者に男女数、種族、地域に関する制約はない。そのため議席をもたない種族や地域もあり得る。

3.比例代表・華僑代表(34議席):台湾地区全体で1選挙区。また、台湾に居住していなくても、自由主義圏(米国や日本等の非共産主義圏)に居住している中華民国国籍保持者(華僑)であれば立候補可能。5%以上の得票を得た政党に議席が配分される。配分された議席を埋める方式は拘束名簿式。ただし比例代表での当選者は半分以上が女性候補でなければならない。その為、名簿順位下位の女性候補が上位の男性候補を飛び越えて当選する場合がある。

院内勢力

2020年1月11日に行われた第十回中華民国立法委員選挙の結果

政党議員数議席率
民主進歩党00610054.87%
中国国民党00380033.63%
台湾民衆党00050004.42%
時代力量00030002.65%
台湾基進00010000.88%
無所属00050004.42%
合計 0113 0100.00%

2022年1月14日現在、院内勢力別所属議員数

   政党名 小選挙区 原住民 比例代表 合計
民主進歩党 46 2 13 61
無所属(林昶佐趙正宇蘇震清黄国書 4 - - 4
泛緑連盟 50 2 13 65
中国国民党 23 3 13 39
無所属(高金素梅 - 1 - 1
泛藍連盟 23 4 13 40
台湾民衆党 - - 5 5
時代力量 - - 3 3
合計 73 6 34 113

組織


中華民国政治関連項目

中華民国の政治
中華民国憲法
中華民国憲法増修条文

総統蔡英文
副総統頼清徳

中華民国総統選挙
中華民国立法委員選挙
中華民国立法委員選挙区

行政院 立法院
司法院 監察院
考試院

国民大会(-2005年

最高法院

政党制度政党一覧

与党
民主進歩党
62 長5)
立法委員を有する野党
中国国民党
(立38 県市長14)
台湾民衆党
(立5 県市長1)
時代力量(立3)

台湾問題中台関係

台湾独立運動
中国統一
担当機関:大陸委員会

その他台湾関係記事

文化 - 経済 - 地理
政治 - 教育 - 軍事
人口 - 言語 - 交通
歴史

中華民国関係記事

中華文化
中国の歴史

立法院長

中華民国国会議長に相当する。現在は、游錫堃民主進歩党)。

憲法施行前

氏名就任日退任日副院長秘書長
1 胡漢民1928年10月8日1931年3月2日林森李文範
2 林森1931年3月2日1932年1月1日邵元沖李曉生呉景鴻
代理 邵元沖1931年3月2日1932年1月1日
3 張継1932年1月1日1932年1月28日覃振張維翰梁寒操
代理 覃振1932年1月1日1932年5月14日
代理 邵元沖1932年5月14日1933年1月12日
4 孫科1933年1月12日1948年5月17日葉楚傖魏道明呉鉄城陳立夫呉尚鷹張肇元陳克文

憲法施行後

会期院長就任日退任日所属政党副院長所属政党
1 1孫科1948年5月17日1948年12月24日中国国民党陳立夫中国国民党
2 童冠賢1948年12月24日1950年12月1日中国国民党劉健群中国国民党
3 劉健群1950年12月5日1951年10月19日中国国民党黄国書中国国民党
代理 黄国書1951年10月19日1952年3月11日中国国民党--
4 張道藩1952年3月11日1961年2月20日中国国民党黄国書中国国民党
5 黄国書1961年2月28日1972年2月22日中国国民党倪文亜中国国民党
代理 倪文亜1972年2月22日1972年4月28日中国国民党劉闊才中国国民党
6 倪文亜1972年5月2日1988年12月20日中国国民党劉闊才中国国民党
代理 劉闊才1988年10月18日1989年2月24日中国国民党梁粛戎中国国民党
7 劉闊才1989年2月24日1990年2月20日中国国民党梁粛戎中国国民党
代理 梁粛戎1990年2月12日1990年2月27日中国国民党劉松藩中国国民党
8 梁粛戎1990年2月27日1991年12月31日中国国民党劉松藩中国国民党
9 劉松藩1992年1月17日1993年1月31日中国国民党沈世雄中国国民党
10 2劉松藩1993年2月1日1995年1月31日中国国民党王金平中国国民党
11 3劉松藩1995年2月1日1998年1月31日中国国民党王金平中国国民党
12 4王金平1999年2月1日2002年1月31日中国国民党饒穎奇中国国民党
13 5王金平2002年2月1日2005年1月31日中国国民党江丙坤中国国民党
14 6王金平2005年2月1日2008年1月31日中国国民党鍾栄吉親民党
15 7王金平2008年2月1日2012年1月31日中国国民党曽永権中国国民党
16 8王金平2012年2月1日2016年1月31日中国国民党洪秀柱中国国民党
17 9蘇嘉全2016年2月1日2020年1月31日民主進歩党蔡其昌民主進歩党
18 10游錫堃2020年2月1日現職民主進歩党蔡其昌民主進歩党

委員会

その他

1995年、立法院に対してイグノーベル賞(平和賞)が授賞されている[1]

授賞理由は「政治家にとって、他国と戦争するよりも、お互いに殴り、蹴り、騙しあう方が、より利益になる事の実証に対して」。1992年の全面改選以後、与野党(中国国民党民主進歩党)の対立から、立法院内で屡々議員間の乱闘行為が発生し、その模様が生中継されたことによる。

立法院における議員間の争いは2020年代も発生しており、2020年11月27日にアメリカ産豚肉の輸入規制緩和を決定した際には、野党議員らが議場で豚の内臓等を投げ付けて抗議する姿が見られた[2]

脚注

  1. The 1995 Ig Nobel Prize Winners”. Improbable Resach. 2017年6月27日閲覧。
  2. 台湾議会で豚の内臓飛び交う、米国産豚肉の輸入解禁に野党反発”. AFP (2020年11月27日). 2020年11月29日閲覧。

関連項目

外部リンク

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