移動
空間における移動
生物の移動
生物学の分野では、生物がそれまで棲息していた場所から別の場所へ移ることを「移動」といい、「移住」ともいう[5]。運動性の大きい動物は速やかな移動を行う[5]。植物は様々な方法によって徐々に移動して分布域に変化をもたらすが[5]、その方法のなかで劇的な変化をもたらす可能性の高いものは、風媒による移動と動物の運動性を利用した移動である。
ある場所から別の場所へ出ていくことを「移出(英: emigration)」といい、入ってくることを「移入(英: immigration)」という[5]。この移出と移入が周期的に反復する移動を「回帰移動」といい、回帰しない移動を「非回帰移動」という[5]。渡り鳥や回遊魚は回帰移動をする動物の代表的なものである[6]。ヨーロッパ大陸のレミングの移動や、有史以来諸大陸で記録されてきたバッタの大発生(cf. 蝗害)のような、過密した集団の緩和のための移動(密度依存的移動[5])は、非回帰移動の代表例である[6]。
動物の、運動器官を用いた移動運動(英: locomotion;ロコモーション)で能動的なものは[3]、索餌や捕食を目的とした移動が中心であるが[5]、捕食者や敵からの逃避としての移動[6][5]、繁殖のための移動[5]、越冬のための移動[5]、乾季に水を求めての移動[6][5]、雨季に出水を避けるための移動などもある[6]。一方で、受動的な移動としては、気流や水流(特に海流)によって運ばれてしまうケースがこれにあたる[6][3]。受動的移動は、小動物[5]でよく起こると考えられるが、植物の種子や[5]真菌類の胞子の散布移動は[5]むしろ大いにこの移動に頼っているところがある。
また、行動圏自体の位置が変わるために起こる移動も2種類に分類され、一つは、一生のある時期に定住地を変える移動であり、今一つは、新生個体の出生地から定住地までの分散と呼ばれる移動である。
数学における移動
言語における移動
移動動詞
移動にまつわる語としては、行く、来る、進む、戻る、帰る、出る、入る、上るなど、主体の位置を変えるような動作を表す動詞は移動動詞である。本項では、これらの語についてとその概念について解説する。
行くと来る
行く(ゆく、いく)はあるものが中心になる点から遠ざかっていくこと、来る(くる)は、逆に近づいていくことである。この2つは移動動詞の基本的な存在で、方向性をもつ。必ず主体と到達点を記す必要があり、主に中心となるのは、話し手が多いが、話し手自身が主体になることもあるので、その場合は、最初の位置、または現在位置が基準となる。また、文によっては、主体が省略されていることもある。 意味としては、「~が~から~へ行く」または来るで、が格に自力で移動できる物がたって移動、移動できない物が立ったときは誰かによりもたらされるという意味の届く、「~は~へ行く」のときは交通機関や施設、道路がが格に立って通じる、「~を行く」のときは、特定の方向への移動でない通行、「~まで行く」のときの事柄が在る程度の度合いに達する抽象的な到達、「~が来る」であれば、時期を表す語が主語に立つ到来、因果関係を表し、が格に生じた事実、から格には結果の立つ由来などがある。
なお、「行く」は「ゆく」と読むのが通例であるが、「いく」という読み方も奈良時代から使われており、鎌倉時代に入って一時ほとんど見えなくなったが、現在では、書き言葉では「ゆく」、話し言葉では「いく」と使い分けられることが多い。