小島勇之助

小島勇之助（こじまゆうのすけ[1]、1889年 - 1964年[1]）は、日本の実業家・郵趣家。松竹キネマなどの企業の重役などを務めるとともに、精力的な切手蒐集を行い、1925年には当時まで発行された日本切手を完集したと宣言するなど、著名なコレクターであった[1]。東京帝国大学在学中には陸上競技選手としても足跡を残している[2]。

生涯

東京生まれ[1]。父は実業家で衆議院議員も務めた山中隣之助[1]。生まれて間もなく小島兼美[注釈 1]の養子となる[3][4]。実兄には山中勇（東京山中銀行頭取[4]）がいる[3]。

学習院高等科を経て[3]東京帝国大学医科大学薬学科に学ぶ[1]。在学中にはスポーツに打ち込み、1911年（明治44年）11月の東京大学運動会では100m走で優勝（12秒26）[5][注釈 2]。1911年（明治44年）、日本が初めて出場する1912年ストックホルムオリンピックの代表選手を決める国際オリムピック大会選手予選会にも出場し、棒高跳では2.68m（初代日本記録）[7]で優勝。1913年（大正2年）には第1回日本陸上競技選手権大会において400m走で優勝（58秒8、三島弥彦の日本記録を更新）[8]。

1913年（大正2年）に東京帝国大学を卒業[3]した後は、東京山中銀行[3][1]、スタンダード運動具[3]、帝国電化[3]、大阪舎密工業[3][1][注釈 3]、松竹キネマ[3][1]などの重役を務めた[1]。

1920年（大正9年）、京都市上京区染殿町（梨木神社の北側）に移り住んだ[1][注釈 4]。敗戦後、小島邸は進駐軍に接収され（のち返還）、京都市立京極小学校の前に建てた住居で余生を送った[10]。

郵趣家として

福井和雄は「日本最高の日本切手収集家」「日本の切手収集の歴史の上で小島を上回る人物はいない」という評があることを紹介している[6]。福井自身は、当時と現代とでは収集方法も異なるとし、後に続いた国際的に著名な収集家として市田左右一や金井宏之の名を挙げているが、小島は日本の切手収集の歴史の上で忘れることはできない人物と記している[6]。

小島は、大正時代に随一のコレクターと言われた藤尾鷲三の日本切手コレクションを一括して買い受け、イギリスの切手商を通じてデュヴィーン・コレクションを入手するなど、内外の著名コレクションを集めた[6]。1925年（大正14年）11月には郵趣雑誌に日本の切手を「一葉の欠品もなく」蒐集したという挨拶広告を出している[6]。福井和雄は、小島のコレクションは質量ともに圧倒的で、これに匹敵するものは金井コレクション以外ないと評している[11]。

コレクターとしての態度は「非常に厳正」であったという[10]。好悪の情が激しく尊大との評もあったが、一方で自らが率いる日本愛郵協会の主催で1940年（昭和15年）に「切手祭典」を挙行し、郵趣家の親睦を図るなどの社交性も有していた[10]。切手祭典は敗戦の1945年（昭和20年）も含め1956年（昭和31年）まで毎年開催された[10]。

脚注

注釈

『人事興信録』によれば京都府士族[3]。
福井和男は、同じ東京帝国大学の三島弥彦とはライバル関係であった[6]と記す。
『日本鉱業名鑑 : 内地』（鉱山懇話会、1924年）によれば、大阪舎密工業は長崎県西彼杵郡香焼（現在の長崎市香焼町）で香焼炭鉱を経営しており、小島はこの会社の監査役を務めている。
なお、同じ町内には湯川秀樹（1907年生まれ）が父の小川琢治（京都帝国大学教授）ら家族と共に暮らしていた[9]。

出典

福井和男 2020, p. 10.
福井和男 2020, pp. 11–12.
“小島勇之助 (第8版 [昭和3(1928)年7月の情報)]”. 『人事興信録』データベース. 2022年3月9日閲覧。
“山中勇 (第8版 [昭和3(1928)年7月の情報)]”. 『人事興信録』データベース. 2022年3月9日閲覧。
福井和男 2020, p. 11.
福井和男 2020, p. 12.
“日本学生記録の変遷男子棒高跳”. 日本学生陸上競技連合. 2020年2月26日閲覧。
“日本学生記録の変遷男子400m”. 日本学生陸上競技連合. 2020年2月26日閲覧。
福井和男 2020, pp. 10–11.
福井和男 2020, p. 13.
福井和男 2020, pp. 12–13.

参考文献

福井和雄「新上京の昔ばなし染殿町の二人―湯川秀樹と小島勇之助―」『上京史蹟と文化』第59巻、上京区民ふれあい事業実行委員会、10-13頁、2020年。

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[4] 『人事興信録』によれば京都府士族[3]。

[8] 福井和男は、同じ東京帝国大学の三島弥彦とはライバル関係であった[6]と記す。

[11] 『日本鉱業名鑑 : 内地』（鉱山懇話会、1924年）によれば、大阪舎密工業は長崎県西彼杵郡香焼（現在の長崎市香焼町）で香焼炭鉱を経営しており、小島はこの会社の監査役を務めている。

[13] なお、同じ町内には湯川秀樹（1907年生まれ）が父の小川琢治（京都帝国大学教授）ら家族と共に暮らしていた[9]。

[FOOTNOTE福井和男202010-1] 福井和男 2020, p. 10.

[FOOTNOTE福井和男202011–12-2] 福井和男 2020, pp. 11–12.

[who8-8499-3] “小島勇之助 (第8版 [昭和3(1928)年7月の情報)]”. 『人事興信録』データベース. 2022年3月9日閲覧。

[who8-23723-5] “山中勇 (第8版 [昭和3(1928)年7月の情報)]”. 『人事興信録』データベース. 2022年3月9日閲覧。

[FOOTNOTE福井和男202011-6] 福井和男 2020, p. 11.

[FOOTNOTE福井和男202012-7] 福井和男 2020, p. 12.

[iuau-mPV-9] “日本学生記録の変遷男子棒高跳”. 日本学生陸上競技連合. 2020年2月26日閲覧。

[iuau-m400-10] “日本学生記録の変遷男子400m”. 日本学生陸上競技連合. 2020年2月26日閲覧。

[FOOTNOTE福井和男202010–11-12] 福井和男 2020, pp. 10–11.

[FOOTNOTE福井和男202013-14] 福井和男 2020, p. 13.

[FOOTNOTE福井和男202012–13-15] 福井和男 2020, pp. 12–13.

日本陸上競技選手権大会男子400m優勝者
1910年代	13 小島勇之助 14 津村清次 15 沢田一郎 16 山岡慎一 17 山内晋作 18 佐伯巖 19 佐伯巖
1920年代	20 島村鉄也 21 島村鉄也 22 納戸徳重 23 納戸徳重 25 納戸徳重 26 松居久 27 松重秀男 28 松重秀男 29 西貞一
1930年代	30 箱島武男 31 西貞一 32 増田礒 33 西貞一 34 今井慶二 35 今井慶二 36 森町三之助 37 相原豊次 38 佐藤勝三 39 三木重雄
1940年代	40 船田幸一 42 吉田正平 46 吉田正平 47 首藤慎二 48 坂根懋 49 坂根懋
1950年代	50 岡野栄太郎 51 高橋桂 52 ハーブ・マッキンリー 53 赤木完次 54 赤木完次 55 赤木完次 56 赤木完次 57 赤木完次 58 早瀬公忠 59 大串啓二
1960年代	60 早瀬公忠 61 大串啓二 62 早瀬公忠 63 ハンス・ヨアヒム・レスケ 64 早瀬公忠 65 吉田正美 66 坂井義則 67 大沢克之 68 天野義裕 69 友永義治
1970年代	70 友永義治 71 友永義治 72 友永義治 73 友永義治 74 友永義治 75 水野利夫 76 松本彰 77 原田康弘 78 原田康弘 79 名取英二
1980年代	80 名取英二 81 名取英二 82 高野進 83 川角博美 84 川角博美 85 高野進 86 高野進 87 高野進 88 高野進 89 小中冨公一
1990年代	90 渡辺高博 91 高野進 92 高野進 93 苅部俊二 94 大森盛一 95 簡優好 96 大森盛一 97 山村貴彦 98 田端健児 99 小坂田淳
2000年代	00 山村貴彦 01 小坂田淳 02 田端健児 03 佐藤光浩 04 佐藤光浩 05 金丸祐三 06 金丸祐三 07 金丸祐三 08 金丸祐三 09 金丸祐三
2010年代	10 金丸祐三 11 金丸祐三 12 金丸祐三 13 金丸祐三 14 金丸祐三 15 金丸祐三 16 ウォルシュ・ジュリアン 17 北川貴理 18 ウォルシュ・ジュリアン 19 ウォルシュ・ジュリアン
2020年代	20 伊東利来也 21 川端魁人 22 佐藤風雅 23 中島佑気ジョセフ
は大会記録 100m 200m 400m* 800m 1500m 5000m 10000m 3000mSC 110mH 400mH