奈良府民
奈良府民(ならふみん)とは、奈良県に居住しながら県内ではなく大阪府および京都府、とりわけ大阪市内へ通勤を行う労働者を指す言葉である。奈良県民のおよそ8分の1を占める[1][2][3]。参考までに付け加えると、奈良県は全国47都道府県中、最も県外就業率の高い県である事が各年の国勢調査より明らかになっている[4]。また、京都府内への日常流動も京都市にある大学などに通学する者を中心として一定の数が存在する。
奈良府民は家に生活しに帰るためだけに奈良県に居住するため、地域への関心が薄いとされる[5]。
「奈良府」は現在は存在してはいないが、かつては存在していた(後述)。
特徴
無党派が多く[6]、そのため『奈良府民』が多い奈良盆地の自治体(奈良市、生駒市など)が関係する選挙の予想はつきにくく、テレビや新聞が予想していた結果とは正反対になる事が多くある[注釈 1]。
上記の事象に関連して、2015年にはこの『奈良府民』という言葉を公式の場で奈良県の地元国会議員が発言し、賛否を呼んだこともあり[8]、このような発言が生まれる程、奈良県には『府民』が多い事情がある。
この奈良盆地を通る近畿日本鉄道(奈良線と大阪線、京都線、橿原線など)と西日本旅客鉄道(関西本線(大和路線)と奈良線など)にとって、この『奈良府民』の通勤通学者は大きな収入源となっている。
奈良県の市町村 | 大阪府 | 京都府 | 奈良県の市町村 | 大阪府 | 京都府 |
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生駒市 | 44.5% | 3.9% | 王寺町 | 39.1% | 1.7% |
三郷町 | 37.5% | 1.5% | 香芝市 | 36.6% | 1.2% |
平群町 | 33.7% | 2.2% | 斑鳩町 | 30.2% | 1.8% |
上牧町 | 30.4% | 1.3% | 河合町 | 29.9% | 1.7% |
奈良市 | 24.0% | 6.3% | 広陵町 | 25.1% | 1.5% |
安堵町 | 24.6% | 1.7% | 大和高田市 | 22.3% | 1.3% |
葛城市 | 21.6% | 0.9% | 大和郡山市 | 19.0% | 3.3% |
橿原市 | 16.6% | 1.8% | 川西町 | 13.6% | 3.0% |
田原本町 | 13.4% | 2.3% | 御所市 | 14.4% | 0.9% |
三宅町 | 13.3% | 1.9% | 桜井市 | 13.5% | 1.6% |
明日香村 | 12.1% | 1.7% | 高取町 | 11.6% | 1.7% |
宇陀市 | 11.1% | 1.1% | 天理市 | 7.5% | 1.9% |
大淀町 | 8.2% | 0.7% | 五條市 | 8.1% | 0.5% |
下市町 | 6.2% | 0.8% | 吉野町 | 5.1% | 0.5% |
実在の奈良府民
1868年(明治元年)に「奈良府」が設置され、1869年に「奈良県」に改称されるまでの間は、奈良府民が実在した。
1876年(明治9年)に奈良県は堺県に編入されて消滅。その堺県も1881年(明治14年)に大阪府と合併して大阪府となったため、旧奈良県地域も大阪府となった。1887年(明治20年)に大阪府から分離されるまでの約7年間、それまでの奈良県民は「大阪府民」であった。
参考文献
出典
- 「ことば - 奈良府民」毎日新聞 大阪夕刊 15頁 1992年1月31日閲覧
- “「奈良府民」どうみる 県人口の8分の1、大阪・京都に通勤”. 朝日新聞 (2004年7月9日). 2010年3月31日閲覧。
- “県外通勤の実態”. 読売新聞 (2008年1月3日). 2010年3月31日閲覧。
- 県外就業率、全国1位 生駒市、56%で最も高く 22年国勢調査 奈良 産経新聞 2012年8月3日閲覧。
- “奈良県の観光交流政策への提案”. 奈良のむらづくり協議会. 2010年3月31日閲覧。
- 朝日新聞 2007年7月10日付 夕刊、社会面、P.12
- 朝日新聞2006年1月31日
- “自民党奈良県連の奥野信亮会長「『奈良府民』気に入らない」!?…”. 産経新聞. (2015年1月14日) 2015年7月16日閲覧。
注釈
- その代表例として、2006年度生駒市長選挙がある[7]
外部リンク
- 奈良府民”から“県民”へ (読売新聞)