降架

降架(こうか、: Deposition of Christ, Descent from the Cross: Ἀποκαθήλωσις, Apokathelosis)あるいは十字架降架(じゅうじかこうか)とは、磔刑により死んだイエス・キリスト十字架から降ろす場面を描いたキリスト教美術の主題であり、1611 - 1614年ルーベンスの描いたアントウェルペンの聖母大聖堂(ノートルダム大聖堂)の祭壇画が有名[1]

フランダースの犬』の最終回に登場したことでも有名なルーベンス作『キリスト降架』(アントウェルペン聖母大聖堂
ルーベンス作 The Descent from the Cross (1617 – 1618)、(リール宮殿美術館

ヨハネによる福音書[2]マルコによる福音書[3]ルカによる福音書[4]の3書[注 1]に基づきイエスの死体をアリマタヤのヨセフピラトに願って十字架から降ろした場面を指すが、ユダヤ教の習慣どおりにイエスの身体に香油を塗るために死体を横たえる場面を指すこともある[1]

変遷

初期の受難表現では「磔刑」の次はすぐ「復活」であるが、880 - 886年ビザンチン写本グレゴリウス説教集』の挿絵では、ヨセフとニコデモがイエスを降ろし聖母とヨハネがこれを見守る場面もある[1]980年頃に書かれた福音書のエグベルト写本では聖母は不在だが、中世末には聖母は不可欠の存在で、10世紀に描かれたカッパドキアのトカレ・カリッセではキリストの右手に接吻したり、1311年ドゥッチオの描いた祭壇画『マエスタ』ではキリストの死体を支えたりしている[1]1178年アンテラミの彫ったパルマ大聖堂の浮彫では、人数も増え梯子もかけられた[1]。気丈に立っていた聖母がのちには卒倒して、ヨハネやマグダラのマリアなどによって支えられる図像が現れるようになる[1]

ギャラリー

脚注

注釈

  1. ブリタニカ百科事典では、ヨハネによる福音書ではなくページ番号の明記なくマタイによる福音書となっている[1]。なお、マタイによる福音書でも27章58-59にイエスの死体を受け取る記述は有るものの[5]、十字架から降ろす記述は無い。

出典

関連項目

  • アンティミンス - 聖体礼儀の時に広げられる聖別された麻・絹製の布(降架の絵が描かれている)
  • エピタフィオス - キリストの受難と死を記念する聖金曜日の儀式に用いられる布(降架の絵が描かれている)
  • 新約聖書におけるキリストの一生 - 降架の後、キリストの哀悼が主題となる
  • 悲しみの聖母 - 聖書で聖母マリアが受けた「7つの悲しみ」を主題とした芸術作品群
  • ピエタ - 十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアを主題とした芸術作品群
  • バルトロメーオ・カルドゥッチによって1985年に制作され、現在プラド美術館に収蔵されている『キリストの十字架降架』

外部リンク

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