ナラタケ

ナラタケ楢茸Armillaria mellea subsp. nipponica)はハラタケ目キシメジ科ナラタケ属に分類され、主として植物寄生菌として生活しているキノコユーラシア北アメリカアフリカに分布する。

ナラタケ
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : 菌蕈亜門 Hymenomycotina
: 真正担子菌綱 Agaricomycetes
: ハラタケ目 Agaricales
: キシメジ科 Tricholomataceae
: ナラタケ属 Armillaria
: ナラタケ A. mellea
亜種 : ナラタケ A. mellea nipponica
学名
Armillaria mellea Vahl.:Fr.Kummer
subsp. nipponica Cha et Igarashi
和名
ナラタケ
英名
honey mushroom

特徴

以前はナラタケ属はナラタケモドキとナラタケの2種類とされていたが、最近は顕微鏡的特徴や生化学的手法によってさらに多くの種に細かく分類されている。

狭義のナラタケは、晩春、晩秋に広葉樹の枯木や生木から発生する。は黄色で饅頭型から中高扁平型。周辺に条線があり、ささくれは少ない。ひだはやや疎で垂生し、若いものは白いが、成熟すると褐色。つばは膜質。は白色で少し甘みや渋みがある。は傘と同じ色で中実。つばの上に条線がある。

この種は枯死植物を分解吸収して生活するのみならず、生きている植物に対する寄生性、病原性も強い[1]。ナラタケの寄生による病害は「ならたけ病」と呼ばれ、リンゴナシモモブドウクリなどの果樹、サクラナラ類などの木本類、ジャガイモニンジンなどでの発生が報告されている。

枯死植物や生木の寄生部分で生活する菌糸体はその部分だけで生活史を完了するのではなく、黒い木の根のような菌糸束を形成してこれを地中に伸ばし、離れたところに存在する枯れ木や生木に接触すると、これにも新たに菌糸を伸ばし、寄生する。一方、ラン科腐生植物であるツチアケビオニノヤガラはナラタケの菌糸束を地下茎や根に呼び込み、表層部の細胞内で消化吸収して栄養素を摂取している。

比較的他のキノコやカビに弱く、地面が新しい場所を好んで繁殖する。特に夏のうちに崩落を起こした斜面や沢の倒木の根などに大量発生する場合もある。沢沿いに菌が流されるため、下流で見つかれば上流方向にも生えている確率が高い。

根状菌糸束腐朽材発光する。しかしツキヨタケヤコウタケと異なり子実体(キノコそのもの)は発光しない。発光の詳しいメカニズムについてはまだわかっていない。

分類

従来ナラタケと呼ばれた種は数種に別れた。

ナラタケ Armillaria mellea (Vahl・Rries) Kurmmer
今までナラタケとされてきたのが本種。
オニナラタケ、ツバナラタケ A. ostoyae (Romagnesi) Herink
ヤワラナラタケ A. gallica Marxmuller et Romangnesi
コバリナラタケ A. jezoensis Cha et Igarashi
ホテイナラタケ A. sinapina Berube et Dessureault
ヒトリナラタケ A. singula Cha et Igarashi
ナラタケモドキ A. tabescens (Scopoli) Singer
キツブナラタケ(学名未記載) A. sp
A. cepistipes Velenovsky
A. hutea Gilet
  • いずれも純粋なナラタケの近縁であり、食用として美味である。

別名

北海道や下北地方ではボリボリ、ボリという名称で呼ばれている。津軽地方ではサモダシ、南部地方(三八上北+岩手県北部)ではカックイ、岩手県中域ではボリメキ、秋田県ではモダシと呼ばれる。秋田県南部の一部では、山や沢地に生えるものをサワボダシ、平地に生えるものをクネボダシと呼んでいる地域もある。中越地方ではアマンダレの名で呼ばれる。鳥海山東麓ではモタツの名でも呼ばれる。また多摩地方ではササコという名で呼ばれている。地方によって様々な俗称がある[2]。地面から生えるものをサモダシ、朽木に生えるものをオリミキと呼ぶ場合もある。見た目はサモダシの傘が丸みを帯び、オリミキが平べったいが、どちらも同じ菌糸で、生える場所によって傘の形状が異なることも珍しくない。ナラタケは天麻(オニノヤガラ)と共生することで中国では、天麻密環菌gastrodia tuder halimasch という名前である。

食用

優れた食菌として知られ、特に東日本では広く親しまれている。ただし、種や系統によっては生あるいは加熱しても消化不良などの中毒を起こすことがある。また、新鮮でないものも食べない方がよい。毒成分は不明。収穫したものは傷むのが早いので、生のまま塩漬けにするか、湯通しして水に晒しておく。塩漬けしたものは煮てから水に晒しておけば塩抜きできる。味噌汁や、鍋、煮付けや南蛮漬けなどにして食されているキノコである。秋田県では缶詰も売られている。

中華料理小鶏燉蘑菇(鶏ときのこの煮込み)では、主な具材の一つとしてナラタケを使用する。

原木栽培菌床栽培で人工栽培することが出来る[3]

類似の毒キノコ

参考画像

参考文献

  • 池田良幸『北陸のきのこ図鑑』ISBN 4893790927
  • 長沢栄史『日本の毒きのこ』 ISBN 4054018823
  • 日本植物病理学会・編『日本植物病名目録』 ISBN 4889260668

脚注

  1. ナラタケ分離系統の腐生力と寄生力の比較(第75回日本林学会大会講演要旨)日本林學會誌 Journal of the Japanese Forestry Society 46(3) pp.111-112 19640325 日本森林学会
  2. 日本の食べ物用語辞典
  3. ナラタケ属のきのこ(Armillaria spp.) (PDF) 特許庁

外部リンク

  • ナラタケ栽培における雑菌汚染 (PDF) - 北海道立林産試験場
  • 上山昭則、ケニヤの天然林におけるナラタケの分布 - 日本林學會誌 Journal of the Japanese Forestry Society 4(9), pp.328, NAID 110002839411
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