セナガアナバチ科
セナガアナバチ科(せながあなばちか・背長穴蜂[4]科 / Ampulicidae)は、膜翅目ハチ亜目(細腰亜目)ミツバチ上科に属する科の1つ[5]。世界に6属約200種を擁するハチ(狩人蜂)[注 1]の仲間である[6]。
セナガアナバチ科 | ||||||||||||||||||||||||
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エメラルドゴキブリバチ(セナガアナバチ属)の成虫 | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Ampulicidae Shuckard, 1840[3] |
主に森林性ゴキブリ類の若虫(幼虫)を狩り幼虫の餌とする[5]。かつてはいくつかの科とともにジガバチ科あるいはアナバチ科[注 2]に分類されていたが、独立した科に再分類された[7]。
特徴・生態
本科はミツバチ上科のアナバチ型ハチ類の中でも最も原始的なグループである[5]。
属する種は体長5 - 20 mm程度の細長い体形で、美しい金属光沢を有する種が多い[8]。他のアナバチ類と異なり、前胸部が前方に長く伸びる点が特徴で[8]、その点から「セナガアナバチ」と命名された[5]。このほか、他科のアナバチ類とは「後翅の臀睡が小さいか、完全にない」「中脚の脛節にある棘は2本」「跗節の爪は内歯を持つか分岐する」点が異なる[5]。
主にゴキブリ類を狩って幼虫の餌とするが[8]、完璧な巣は作らず、既存の物の隙間に獲物のゴキブリを運び込み産卵する[5]捕食寄生生物である[1]。本科のメス成虫は獲物をみつけるとそれに針を刺して麻酔させ、自然の坑道・窪みなどに搬入して産卵し、木屑・土塊を用いて入口を簡易的に閉塞する(既存坑充填閉鎖型)[8]。
分類
本科のハチは触角挿入孔の付着形状・後胸腹板の形状などからセナガアナバチ亜科 Ampulicinae とヒメセナガアナバチ亜科(アマミセナガアナバチ亜科) Dolichurinae の2亜科に区分されていたが[5]、近年は両亜科とも1つに統合されるようになってきた[8]。日本に生息する種は計3種(セナガアナバチ属の2種・ヒメセナガアナバチ属の1種)である。
セナガアナバチ属
セナガアナバチ属 Ampulex Jurine, 1807 は(セナガアナバチ亜科) Ampulicinae Shuckard, 1840 の族 Ampulicini Shuckard, 1840 に属する[9]。同属に分類される種は全身が金属光沢を持ち、触角挿入孔が双葉上の額片で覆われる[8]。
- エメラルドゴキブリバチ A. compressa - 東南アジアなど熱帯地域に生息する種。
- サトセナガアナバチ A. dissector (Thunberg, 1822)[注 3][8] - 日本(本州・四国・九州および対馬・種子島・屋久島)および東アジア・東南アジアに生息し[8]、主に家屋性のゴキブリ(クロゴキブリ・ワモンゴキブリ・コワモンゴキブリなど)を狩る[11]。過去にはアカアシセナガアナバチ、もしくは単にセナガアナバチの和名で呼称されていた[10]。
- ミツバセナガアナバチ A. compressa Tsuneki, 1982[8] - 琉球列島に生息し、森林性のゴキブリを狩ると考えられている[11]。
- 沖縄島から1926年に未知種(頭楯前縁が2歯状)のメス1個体が採取され、フタツバセナガアナバチ A. dentata Matsumura & Uchida, 1926 として新たに記載された[11]。同種はかつて「ハダカセナガアナバチ」の和名で呼称され、後にYasumatsu (1936) により石垣島産のメス2個体・オス1個体および奄美大島産のオス1個体を検視個体として再記載されたが、その際に用いられた標本は頭楯前縁が3歯状であったため別種とされ、Tsuneki (1982) が石垣島産の個体をホロタイプ標本として用い、3歯状の別種をミツバセナガアナバチとして記載した[11]。A. dentata のタイプ標本は2016年時点でも所在不明で、混入した海外の採取品である可能性も指摘されている[11]。
ヒメセナガアナバチ属
ヒメセナガアナバチ属 Dolichurus Latreille, 1809 は(ヒメセナガアナバチ亜科)Dolichurinae Dahlbom, 1842 の族 Dolichurini Dahlbom, 1842に分類される属である[12]。全身黒色で、触角挿入孔が2つに裂けない額片で覆われる[11]。ヒメセナガアナバチ亜科を認める場合、本属は同亜科に位置づけられる[11]。
脚注
注釈
出典
- kotobank-カリバチ.
- 東海大学出版部 2016, p. 1.
- "Ampulicidae Shuckard, 1840" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2020年5月16日閲覧。
- kotobank-背長穴蜂.
- 須田 2011, p. 22.
- 東海大学出版部 2016, pp. 1–2.
- 平嶋 & 森本 2008, p. 554.
- 東海大学出版部 2016, p. 2.
- "Ampulex Jurine, 1807" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2020年5月16日閲覧。
- 須田 2011, p. 23.
- 東海大学出版部 2016, p. 3.
- "Dolichurus Latreille, 1809" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2020年5月16日閲覧。
参考文献
- 動植物名よみかた辞典 普及版. “背長穴蜂”. コトバンク. 2020年5月17日閲覧。
- 日本大百科全書(ニッポニカ). “カリバチ”. コトバンク. 2020年5月17日閲覧。
- 平嶋義宏・森本桂(監修者)『トンボ目・カワゲラ目・バッタ目・カメムシ目・ハエ目・ハチ目 他』 第3巻(新訂版初版発行(旧版初版発行:1965年5月30日))、北隆館〈新訂 原色昆虫大圖鑑〉、2008年1月20日、554頁。ISBN 978-4832608276。
- 須田博久「サトセナガアナバチの知見 Notes on Anpulex dissector (Ampulicidae, Ampulicinae)」『月刊むし』第488号、むし社、2011年10月1日、22-28頁、ISSN 0388-418X。 - 2011年10月号
- 寺山守(編著者)、須田博久(編著者)『日本産有剣ハチ類図鑑』(第1版第1刷発行)東海大学出版部、2016年3月30日、1-3頁。ISBN 978-4486020752。