さわぎり (護衛艦)

さわぎりローマ字JS Sawagiri, DD-157)は、海上自衛隊護衛艦あさぎり型護衛艦の7番艦。艦名は「沢に立つ霧」即ち「沢霧」に由来する。なお、艦艇名としては旧海軍通して初の命名である。

さわぎり
基本情報
建造所 三菱重工業長崎造船所
運用者  海上自衛隊
艦種 汎用護衛艦(DD)
級名 あさぎり型護衛艦
母港 佐世保
所属 護衛艦隊第13護衛隊
艦歴
発注 1985年
起工 1987年1月14日
進水 1988年11月25日
就役 1990年3月6日
要目
基準排水量 3,550 トン
満載排水量 4,950 トン
全長 137m
最大幅 14.6m
深さ 8.8m
吃水 4.5m
機関 COGAG方式
主機 川崎ロールス・ロイス スペイSM1Aガスタービン × 4基
出力 54,000PS
推進器 スクリュープロペラ × 2軸
最大速力 30ノット
乗員 220名
兵装 62口径76mm単装速射砲 × 1門
Mk.15 Mod12 高性能20mm機関砲CIWS) × 2基
ハープーンSSM4連装発射筒 × 2基
GMLS-3型A シースパロー短SAM8連装発射機 × 1基
74式アスロック8連装発射機 × 1基
68式3連装短魚雷発射管 × 2基
搭載機 HSS-2B/SH-60Jヘリコプター × 1機
C4ISTAR OYQ-7B 戦術情報処理装置
OYQ-101 対潜情報処理装置
SFCS-6C 水中攻撃指揮装置
レーダー OPS-24 対空
OPS-28C 水上
OPS-20 航海用
81式射撃指揮装置2型-23/2型-12G
ソナー OQS-4A
OQR-1 曳航式
電子戦
対抗手段
NOLR-8 ESM
OLT-3C ECM
Mk.137 デコイ発射機 × 2基
その他 AN/SLQ-25 曳航式デコイ

本記事は、本艦の艦暦について主に取り扱っているため、性能や装備等の概要についてはあさぎり型護衛艦を参照されたい。

艦歴

洋上を往く「さわぎり」
荒天下を進む「さわぎり」

「さわぎり」は、中期業務見積りに基づく昭和60年度計画3,500トン型護衛艦2228号艦として、三菱重工業長崎造船所で1987年1月14日に起工され、1988年11月25日に進水、1990年3月6日に就役し、同日付で第2護衛隊群隷下に新編された第47護衛隊に「あさぎり」、「やまぎり」とともに編入され、佐世保に配備された。

1992年1994年1996年と3回続けて環太平洋合同演習 (RIMPAC) に参加した。

1997年3月24日、隊番号の改正により第47護衛隊が第6護衛隊に改称。

1998年4月20日、練習艦「かしま」とともに東京晴海ふ頭出港後、南北アメリカ方面の遠洋練習航海に参加。9月11日に東京へ帰投する。

同年11月8日3等海曹の乗組員が艦内にて自殺する。下記参照

1999年3月18日、第2護衛隊群第2護衛隊に編入。

2003年、遠洋練習航海に参加。

2005年11月25日国際連合難民高等弁務官事務所の要請を受け、被災民救援活動として掃海母艦「うらが」と共にカラチ港に向かう。その後「さわぎり」は2002年2月までインド洋にてテロ対策特別措置法に基づく協力支援活動に従事し、4月25日に帰国した。

2007年、遠洋練習航海に参加。

2008年3月26日、護衛隊改編により第1護衛隊群第5護衛隊に編入。

2009年12月4日、08:45時ごろ高知県足摺岬沖合南約130kmにて、海賊対処訓練中に護衛艦「おおなみ」と接触する事故が発生した。双方ともけが人はなく自力航行は可能であった[1]。その後佐世保重工業にて修理がなされる[2]

2010年1月30日第4次派遣海賊対処行動水上部隊としてソマリア沖に向けて出航、僚艦となる護衛艦「おおなみ」とは途中で合流[3]2月25日から5月31日まで、32回の船団護衛で合計283隻の船舶を警護し、任務終了により7月1日に佐世保に帰港した。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災に対し、災害派遣される。

2012年5月12日第12次派遣海賊対処行動水上部隊としてソマリア沖に向けて佐世保から出航、僚艦となる護衛艦「いかづち」とは途中で合流し約3週間後から任務を開始し[4]、同年7月1日には日中印の三カ国協同による護衛編隊が組まれる[5]。同年10月24日、佐世保に帰港した。

2014年3月13日護衛艦隊直轄第13護衛隊に編入。

2015年7月5日第22次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦「あきづき」と共にソマリア沖・アデン湾に向けて佐世保基地から出航[6]、任務を終了し、同年12月18日に帰国[7]

2020年2月29日から3月5日にかけて護衛艦「すずなみ」とともに関東南方からグアム北方に至る海空域において米海軍と共同訓練を実施する。米海軍からは巡洋艦アンティータム」、「シャイロー」、駆逐艦バリー」、「マスティン」が参加し、各種戦術訓練を実施する[8]

2021年3月3日九州西方海空域において、ミサイル艇おおたか」及びSH-60J/K 2機とともに海上保安庁との不審船対処に係る共同訓練に参加する。海保からは巡視船あそ」と「ほうおう」が参加し、情報共有、共同追跡・監視、停船措置訓練等を実施する[9]

2022年10月19日東シナ海において、佐世保地方総監部、ミサイル艇「おおたか」、回転翼機(SH-60K)とともに海上保安庁と共同訓練実施した。海保からは第七管区海上保安本部、巡視船「あまみ」・「ほうおう」・「ちくご」が参加し、重要施設等に向かう不審船を想定し、共同追跡・監視訓練、停船措置訓練、情報共有訓練を実施した[10]

現在は、護衛艦隊第13護衛隊に所属し定係港は佐世保である。

歴代艦長(特記ない限り2等海佐
氏名在任期間出身校・期前職後職備考
01伊藤清海1990.3.6 - 1991.8.6さわぎり艤装員長海上自衛隊幹部学校教官
02伊藤修一1991.8.7 - 1993.3.30北海学園大
22期幹候
いしかり艦長はまな副長
03大島幸男1993.3.31 - 1994.12.14くまの艦長海上幕僚監部調査部調査第1課
04森 善昭1994.12.15 - 1995.7.9 佐世保基地業務隊補充部付佐世保基地業務隊補充部付
05小田和春1995.7.10 - 1997.3.24防大18期海上自衛隊第1術科学校教官海上自衛隊幹部候補生学校主任教官
06土方利昌1997.3.25 - 1998.10.19防大19期自衛隊愛知地方連絡部募集課長海上幕僚監部人事教育部援護業務課
07青山春光1998.10.20 - 2000.3.23 海上自衛隊第1術科学校教官海上幕僚監部調査部調査第3班長
08舩渡 健2000.3.24 - 2001.8.19岐阜大
29期幹候
うみぎり艦長阪神基地隊総務科長
09佐伯精司2001.8.20 - 2002.8.19東大法学部・
35期幹候
第1護衛隊群司令部幕僚海上幕僚監部人事教育部補任課
10宮﨑 守2002.8.20 - 2004.1.19はるゆき艦長
11溝江和彦2004.1.20 - 2005.3.24防大28期自衛艦隊司令部幕僚 
12髙田昌樹2005.3.25 - 2006.8.6防大29期統合幕僚会議事務局第3幕僚室大湊地方総監部管理部人事課
13松原 匡2006.8.7 - 2008.7.31防大26期海上幕僚監部
指揮通信情報部情報課
大湊地方総監部管理部人事課長
14柴田公雄2008.8.1 - 2010.8.9防大26期あさゆき艦長舞鶴海上訓練指導隊船務航海科長
15廣中敬三2010.8.10 - 2011.7.31防大39期第3護衛隊群司令部幕僚自衛艦隊司令部幕僚
16西澤俊樹2011.8.1 - 2012.11.439期幹候海上自衛隊幹部学校付海上訓練指導隊群司令部幕僚
17藤井健一2012.11.5 - 2014.1.16防大39期あしがら副長海上幕僚監部
指揮通信情報部指揮通信課
18白方将司2014.1.17 - 2015.4.23防大40期おおすみ運用長兼副長しらせ運用長
19佐藤 剛2015.4.24 - 2016.6.12みょうこう副長統合幕僚監部運用部運用第1課
20寺嶋太郎2016.6.13 - 2018.3.19しまかぜ砲雷長海上自衛隊幹部学校付
21榎谷真一2018.3.20 - 2019.3.19こんごう船務長まきなみ艦長
22田中政臣2019.3.20 - 2020.6.21海上幕僚監部防衛部運用支援課海上自衛隊幹部学校付2020.1.1
1等海佐昇任
23加倉井善明2020.6.22 - 2022.6.27防大45期海上幕僚監部防衛部防衛課海上幕僚監部副監察官
24山内 敦2022.6.28 -第4護衛隊群司令部

さわぎり事件

艦内で1999年(平成11年)11月8日に発生した、当時21歳の機関科所属の3等海曹自殺について、遺族が国家賠償請求を起こした。自衛官の自殺をめぐる国賠訴訟は、これが最初である。この事件を契機に自衛隊内でのメンタルヘルスが研究されるようになったとされるが、自殺者は自衛隊全体で事件後も減っていない。自殺の原因は不明だが遺族によると、上官からの執拗な「いじめ」を受けていたという。

この裁判の中で、艦内の飲酒や博打、別の3曹学生(訓練中の海上自衛官)の貯金を上司が勝手に引き出したという事実も発覚した。このため、艦長および三尉以上の同艦幹部9人らをはじめとして乗員180名のうち61名の大量の処分者をだした。艦長らは2000年3月24日付で異動させられた[11]

さわぎりの係争は2008年8月、自殺と上官の言動に因果関係があった旨認定され、遺族に350万円の賠償を命じる判決が国に下った(「自衛官自殺 いじめ認定、原告側が逆転勝訴 福岡高裁」毎日新聞8月25日)。

脚注

参考文献

  • 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』(並木書房、2002年)
  • 世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』(海人社、2004年)
  • 三宅勝久『悩める自衛官―自殺者急増の内幕』(花伝社、2004年9月)ISBN 978-4763404299
  • 『世界の艦船』第750号(海人社、2011年11月号)

関連項目

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