JR東日本E493系電車

E493系電車(E493けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の事業用交直流電車牽引車)である。

JR東日本E493系電車
試運転中のE493系01編成
(2021年5月 仙台駅
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 新潟トランシス
製造年 2021年 - 2023年[1]
製造数 2編成4両
投入先 尾久車両センター
主要諸元
編成 2両編成[1]
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
交流20,000V
架空電車線方式
最高運転速度 100 km/h[1]
最高速度 100km/h[1]
起動加速度 1.5 km/h/s
減速度(常用) 4.2 km/h/s(常用最大)
減速度(非常) 4.2 km/h/s
編成定員 非営業車両
荷重 2t (Mzc1・Mzc2ともに) [2]
自重 58.0 t (Mzc1・Mzc2)
編成重量 116.0 t
全長 21,100 mm[1]
全幅 2,800 mm[1]
全高 3,410 mm[1]
パンタグラフ折り畳み時:3,980 mm)
車体 ステンレス
台車 DT89A形
主電動機 強制通風形誘導方式かご形三相誘導電動機
MT84形
主電動機出力 190 kW
歯車比 7.07
編成出力 1520kW(2両)
定格出力 1520kW
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 CI29形
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ(純電気式)
駐車ブレーキ
直通予備ブレーキ
抑速ブレーキ
耐雪ブレーキ
保安装置 ATS-PATS-Ps
EB装置
列車防護無線装置
備考 出典:交友社『鉄道ファン 2021年8月号』

概要

JR東日本ではこれまで、在来線における入換作業及び回送列車の牽引には日本国有鉄道(国鉄)から承継した機関車EF64形など)を使用していたが、機関車が製造から40年近く経過して老朽化が進行しており、これらの置き換えのために開発された[1]電化区間であれば電化方式を問わず走行可能なように交直流切り替え方式を採用し、電車方式を採用することにより、機関車・貨車特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃し、効率的なメンテナンスを可能とした[1]

入換・回送列車牽引用に機関車を所有していた事業者が電車で置き換えた(機関車を廃止した)事例としては東武鉄道相模鉄道西武鉄道近江鉄道などがあり、鉄道ジャーナリストの松沼猛は、旅客列車の電車化・気動車化が行われた中で、利用目的が限定的で動力車操縦免許が同一でも運転操作の異なる機関車を淘汰させる流れの一環ではないかと推察している[3]

構造

基本的な車体構造は同時期に導入が発表されたGV-E197系気動車とほぼ同一であり、 クモヤE493形 (Mzc1)・クモヤE492形 (Mzc2) の2両で1ユニットを組む[4]。牽引両数に応じて、2両単独編成から2編成連結させた4両での組成が可能となっている[4]

車体

オールステンレス構造で、全長21,100 mm、全幅2,800 mm、屋根高さ3,410 mmとなる[5]中央本線の狭小トンネルに対応するために屋根高さを他の車両よりも低くしている[6]。レール輸送用のキヤE195系(JR東海キヤ97系・東日本仕様)と統一感を持たせる為、正面窓下から側面にはJR東日本のコーポレートカラーであるグリーンと黒の帯を配し、前頭部は黄色く塗装されている[4]。帯に関しては量産先行車の01編成が車体を全周して装飾されているのに対し、量産車の02編成は車体前頭部のみに装飾されている。

前頭部は同社の一般型電車で多用されている正面非貫通で、踏切障害事故対策として衝撃吸収構造を採用しており、同時期に登場したGV-E197系気動車と車体構造を同一としている[4]

機器類

制御装置は半導体素子IGBTを適用した2レベル電圧形PWM-VVVFインバータ制御を採用した主変換装置(CI 29形・日立製作所[7])を搭載している[6]。1台のインバータ装置で主電動機2台を制御する1C2M構成となっている[8]

ブレーキ方式(ブレーキ制御装置)は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している[8]保安ブレーキとして直通予備ブレーキ、抑速ブレーキ耐雪ブレーキを有している[6]。その他に滑走防止機能が付いている[6]。今後多くの車両を牽引することを見据えて、乗務員室に設けられた指令切替スイッチにより、最大4モード(電気指令式ブレーキ車対応2モード・空気ブレーキ車対応2モード)の各運転モードに対応したブレーキ出力の切り替えが可能となっている[6][9]

台車には軸はり式軸箱支持機構を備えるボルスタレス台車であるDT89A形(全電動台車)を採用している[6]空転滑走防止のためのセラミック噴射装置と車輪摩耗低減のためのフランジ塗油装置を備えている[6]。連結器は双頭連結器を装備している。

モニタ装置はMON30を搭載しており、乗務員支援機能、検修機能、運転状況記録機能を有している。制御伝送(加減速の伝送)機能は有していない。検修支援機能としては、各種記録情報をCBM目的でモニタ装置内のSSDに保存している。編成内基幹伝送はイーサネット、編成間基幹伝送はARCNETによる[2]

運用

量産先行車の01編成が2021年2月9日に新潟トランシスを出場し、郡山総合車両センターに回送され[10]、2021年3月26日付で尾久車両センターに配置された[11]。新潟トランシスがJR各社向けに電車を製造するのは初めてのことである。

2021年4月には常磐線にてに試運転を実施[12]

2021年5月17日から20日にかけ、田端運転所 - 長野総合車両センター間にて、非通電のEF64形を牽引し、配給列車を想定した性能確認試運転を実施した。

2022年9月2日には篠ノ井線における試運転に伴い、長野総合車両センターへ回送、同5日から8日までの間、同センター - 松本駅間を単独で1日1往復ずつ実施。9日には尾久車両センターへ返却のため回送された。以降、松本駅 - 富士見駅間でも試運転を実施した。

各種試験を完了し、2023年に量産車を投入[13]。1本目となる02編成が新潟トランシスを出場し、3月14日までに郡山総合車両センターに回送された。今後はATC(自動列車制御装置)採用区間を除く、JR東日本管内すべての電化区間で配給回送列車を中心に運用する予定としている[4]

脚注

注釈

    出典

    1. (PDF)『新型砕石輸送気動車および事業用電車の投入について』(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2021年1月19日。 オリジナルの2021年6月24日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210624201125/https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210119_ho01.pdf2021年7月3日閲覧
    2. 運転協会誌第64巻1号(2022/1) P35-39 新型車両プロフィールガイド E493系事業用交直流電車(量産先行車)の概要 (吉場 裕一)
    3. 松沼 猛 (2021年1月31日). 客を乗せない「事業用車両」に訪れた大変革時代 「機関車と貨車」から電車・気動車に置き換えへ”. 東洋経済オンライン. 2021年7月3日閲覧。
    4. 『鉄道ファン』通巻724号、p.78。
    5. 『鉄道ファン』通巻724号、p.80。
    6. 『鉄道ファン』通巻724号、p.79。
    7. イカロス出版『j-train』Vol.87「新時代を迎える事業用車GV-E197系砕石輸送用気動車とE493系牽引車」pp.48 - 55。
    8. 『鉄道ファン』通巻724号、pp.79 - 80。
    9. 「東日本旅客鉄道(株)の新型事業用車両向けブレーキシステム」 三菱電機技報 2022年1月号 一般論文 (PDF)
    10. E493系が甲種輸送される”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース (2021年2月10日). 2021年7月3日閲覧。
    11. ジェー・アール・アール編 (2021). 『JR電車編成表』2021夏. 交通新聞社. p. 356. ISBN 9784330025216
    12. “JR東日本、新型車両E493系が常磐線で試運転 - GV-E197系は高崎に”. マイナビニュース. (2021年4月10日). https://news.mynavi.jp/article/20210410-1868420/
    13. (PDF)『新型砕石輸送気動車および事業用電車の量産車新造について』(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2022年5月13日https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220513_ho04.pdf2022年5月13日閲覧

    参考文献

    • 安在恵一郎、吉場裕一(東日本旅客鉄道鉄道事業本部運輸車両部車両技術センター)「E493系事業用交直流電車」『鉄道ファン』第61巻第8号(通巻724号)、交友社、2021年8月1日、pp.78 - 80・175 - 176、OCLC 61102288

    関連項目

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