鉄隕石

鉄隕石(てついんせき、: iron meteorite[1])は、ニッケル合金からなる隕石である。隕鉄(いんてつ、: meteoric iron[1])ともいう。

大型の鉄隕石(ホバ隕石

概要

分化した小惑星金属核が起源と考えられている。なお、これに対し、マントル石鉄隕石地殻エイコンドライトとなる。

鉱物的には、ニッケルに乏しいカマサイトとニッケルに富んだテーナイトからなる。このほか包含物もあり、鉄鉱物のトロイライト (FeS)、シュライバーサイト ((Fe,Ni,Co)3P)、コーヘナイト((Fe,Ni,Co)3C) が代表的である。軽い鉱物である石墨ダイヤモンドケイ酸塩鉱物を含むこともある。ケイ酸塩の比率が高くなると、石鉄隕石に分類される。

風化に強いため、古い鉄隕石も比較的よい状態で見つかる。発見された中で最大のホバ隕石を始め、最大級の隕石はいずれも鉄隕石である。

分類

構造的分類

構造により、ヘキサヘドライト (H)、オクタヘドライト (O)、アタキサイト (D) に大きく分けられる。構造の違いはニッケル含有比を反映している。

ヘキサヘドライトは、ニッケル比が4.5–6.5%で、カマサイトからなる。断面にはノイマンラインが見える。

オクタヘドライトは、ニッケル比が6.5–13%で、カマサイトとテーナイトの混合物である。カマサイトとテーナイトは正八面体構造を作るため、断面にはウィドマンシュテッテン構造が現れる。オクタヘドライトは、ウィドマンシュテッテン構造のバンドの幅により、最粗粒 (coarsest, Ogg)、粗粒 (coarse, Og)、中粒 (medium, Om)、細粒 (fine, Of)、最細粒 (finest, Off)、プレスティック (Opl) に分類される。大まかに言って、ニッケルが少ないほど粗粒になる。

アタキサイトは、ニッケル比が13%以上で、テーナイトと微量のカマサイトの細粒混合物、つまりプレッサイトからなる。内部には顕著な構造がなく、肉眼での判別は難しい。

化学的分類

構造的分類とは別に、微量元素も考慮した化学的分類がある。鉄隕石の87%は、元素比がほぼ等しい十数の化学的グループに分類されており、これらは鉄隕石の母天体に対応していると推測されている。

構造的分類化学的分類
ヘキサヘドライト (H)IIA
オクタヘドライト (O) 最粗粒 (Ogg)IIB
粗粒 (Og)IAB, IIIE
中粒 (Om)IID, IIIAB
細粒 (Of)IIIC, IVA
最細粒 (Off)IIID
プレスティック (Opl)IIC
アタキサイト (D)IVB
-IC, IIE, IIIF

これらは当初、I~IVの4つに分けられていたが、IA, IB, … などに細分され、その後一部が再統合され IAB (= IA + IB) などとなっている。

利用

金属の製錬技術を持たなかった時代あるいは地域の人々は、隕鉄を貴重な金属として、道具に使っていた。天からもたらされた物質であることが知られると、宗教的な意味づけが加わり、珍重されることもあった。現代では、もっぱら隕石としての博物学的な価値があるのみである。

古代の西アジアや中国では、鉄使用の初期の頃、隕鉄を利用したが、量が限られたため、青銅に代わって、鉄器が主流となることはなかった[2]

脚注

  1. 文部省日本天文学会編『学術用語集 天文学編』(増訂版)日本学術振興会、1994年。ISBN 4-8181-9404-2。
  2. 潮見浩 『図解 技術の考古学』 有斐閣選書 5刷1991年、1刷88年 p.82、全国書誌番号:88043403

関連項目

  • 隕石
  • 流星刀
  • 隕鉄(en:Meteoric ironen:Thokchaチベット文字ཐོག་ལྕགས; ワイリー方式thog lcags)- 空から落ちてきた神聖なものとして、武器や装飾具、楽器などに加工される
  • 鉄の男 - 隕鉄製の仏像


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