軸受

軸受(じくうけ、: bearing)は、機械要素の一つで、回転往復運動する相手部品に接して荷重を受け、などを支持する部品である。

ボールベアリング

英語のbearingをカタカナで表記したベアリングを使うことも一般的である。bearは「支える、になう」という意味で、bearingは支えるものという意味。

概要

軸を正確かつ滑らかに回転させるために使用される。摩擦によるエネルギー損失や発熱を減少させ、部品の焼きつきを防ぐことが求められる。

輸送機械をはじめとして各種機械に多用されるが、それに限らず回転する部分がある機器には必ず存在する。幅広い機械製品で利用され、不可欠な部品のため「機械産業の米」とも呼ばれる[1]

2018年の世界出荷額を、日本経済新聞社は約4兆2600億円と推計している。企業別シェアは首位のSKFスウェーデン)が16.5%、2位のシェフラードイツ)が15.6%。3 - 5位は日本企業が占め、日本精工NTNジェイテクトで世界市場の4割近くを占める[2]

分類

俗に「メタル」と呼ばれるすべり軸受(平軸受)や玉軸受(ボールベアリング)やころ軸受(ローラーベアリング)などの転がり軸受などがある。

構造からの分類

動作例(保持器の無い理想図)

受ける荷重種類の分類

その他の特徴による呼び方

歴史

軸受の最古の実例としては、古代エジプトの絵に火起こしに軸受を使っている様子が描かれたものがある[3]

ネミ湖のローマ船古代ローマ時代、皇帝カリグラによって建造された巨大な船が湖底の泥中に沈み、酸素が断たれ良い保存状態となった。20世紀に発掘のために湖の水をまるごと抜いたところ、1900年もの時を経ても良い保存状態のまま出てきた。船はもともと湖面に浮かぶ宮殿や神殿として造られたもので、船上に庭園があり、その庭園には女神像が置かれ機械じかけで回転していたのだが、その回転テーブルに木製ボール・ベアリングが組み込まれている実物も湖底から出てきた。

復元された軸受の最古の例としては、共和政ローマ時代、ローマ皇帝カリグラ(在位37年 - 41年)が建造させたネミ湖のローマ船が紀元40年ごろに湖底の泥中に沈み、それが20世紀に発掘された時に出てきた、女神像を回転させるための回転テーブルの軸受け用の木製の玉がある[4][5]

軸受は輪軸の固定にも使われる。この場合に使われるのはすべり軸受で、輪軸で物を引っ張る際に軸が回転する長さより摩擦する長さを短くすることで、摩擦を大幅に軽減させる。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、ころ軸受の絵を1500年頃に描いており、これが世界初とされている。しかし、そのような軸受の絵を最初に出版したのはアゴスティーノ・ラメッリで、1588年に、ころ軸受とスラスト軸受の絵を掲載した本を出版している[6]玉軸受には、玉同士が擦れあって追加の摩擦を生じるという問題があるが、それぞれの玉をかごに入れて互いに擦れないようにすれば問題を避けることができる。このような技法を採用した玉軸受は、1600年にガリレオが記述しているのが最初である。しかし、そのような玉軸受はその後も長年作ることができなかった。玉軸受用の玉を挟む輪(レース)の最初の特許は、1794年、カーマーゼンPhilip Vaughan が取得した。

世界初の実用的なころ軸受を発明したのは時計職人のジョン・ハリソンで、1740年代中頃にH3という時計を作ったときのことだった。このときは非常に限られた振動的な動きに対する軸受だったが、後にハリソンは完全に回転する軸を固定する軸受も作っている。

玉軸受に関する最初の特許は1869年8月3日、フランスの首都パリの自転車職人 Jules Suriray が取得したものとされている。この軸受は、1869年11月に行われた世界初の自転車ロードレース(Paris-Rouen)で優勝した James Moore が乗っていた自転車に使われた[7]

フリードリヒ・フィッシャーは1883年、同じ大きさで真円のボールを製造できる機械を開発し、これが軸受製造の産業化に一役買うことになった。

19世紀の発明家 Henry Timken は1898年に円すいころ軸受の特許を取得した。翌年、その発明品を製造するための会社を起こした。その会社は Timken Company として軸受を中心とした各種製品を販売している。

現代的な自動調心式の玉軸受は、軸受製造企業SKFスヴェン・ヴィンクヴィストが1907年に開発し、スウェーデンの特許第25406号を取得している。

Erich Franke は1934年、ワイヤレース式の転がり軸受(wire race bearing)を発明し、特許を取得した。彼は接触面積を可能な限り小さくすることに取り組み、それを軸受けを囲んでいる部分にまで適用した。第二次世界大戦後、彼はGerhard Heydrichと共にFranke & Heydrich KGという会社を創業した(現在の Franke GmbH)。

初期のティムケン式円すいころ軸受。ノッチ付きローラーを使っている。

初期のすべり軸受と転がり軸受木材で作られていたが、セラミックスサファイアガラスなども使われる。最近では青銅などの金属、セラミックス、プラスチック(例えば、ナイロンポリアセタールポリテトラフルオロエチレンUHMWPE)などもよく使われる。腕時計などでは、軸受に複雑な機構を使えないため、合成コランダム(人造ルビーまたは人造サファイア)などの硬度が高い宝石(人工貴石)を使って磨耗を防いで精度を維持している。いわゆる「石数」は軸受としての宝石数を意味する。古い材質でも高い耐久性を示すことがある。例えば、古い水車では木製の軸受けが使われているが、水が冷却と潤滑の役目を果たすため、今も機能し続けている。

今日では、超高速回転用軸受が歯科用の機械で使われたり、航空宇宙用ベアリングマーズ・エクスプロレーション・ローバーで使われたりするなど、軸受は様々な用途で使われている。

主要ベアリングメーカー

脚注・出典

  1. 「ベアリングの価格カルテル 長年の悪弊断ち切れず」”. 産経新聞 (2012年4月21日). 2012年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月29日閲覧。
  2. 【点検 世界シェア】ベアリング/日本勢、通商摩擦で伸び悩み『日経産業新聞』2019年7月22日(自動車・機械面)。
  3. Guran, Ardéshir; Rand, Richard H. (1997), Nonlinear dynamics, World Scientific, p. 178, ISBN 978-981-02-2982-5, https://books.google.co.jp/books?id=ttBQ1k8MYZ4C&pg=PA178&lpg=PA178&redir_esc=y&hl=ja.
  4. Purtell, John (1999/2001). Project Diana, chapter 10:
  5. Bearing Industry Timeline - ウェイバックマシン(2009年4月1日アーカイブ分)
  6. American Society of Mechanical Engineers (1906), Transactions of the American Society of Mechanical Engineers, 27, American Society of Mechanical Engineers, p. 441.
  7. Bicycle History, Chronology of the Growth of Bicycling and the Development of Bicycle Technology by David Mozer
  8. 業界再編の動向・ベアリング

関連項目

外部リンク

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.