身辺警戒員

身辺警戒員(しんぺんけいかいいん、: Protection Officer、略称: PO)とは、暴力団から危害を加えられる恐れのある保護対象者の警護を行う警察官である[1]

身辺警戒員の訓練風景

概要

暴力団排除条例施行で全国的に暴力団排除の機運が高まるなか、暴力団排除に取り組む企業や役員の自宅などが拳銃手りゅう弾で襲撃される事件が福岡県を中心に相次ぎ、北九州市では建設会社役員の男性が工藤會に襲われ拳銃で殺害される事件も発生した。こうした深刻な事態を受けて、警察庁は保護対策実施要綱を改正することとした[2]

2011年12月、改正保護対策実施要綱を受けて、警察庁は全国の警察本部にPOを設置した。警戒員は、柔・剣道に秀でるなど厳しい条件を満たした警察官が指定されている。保護対象者を警護するとともに襲撃者の逮捕も求められており、警戒員は通常の公務の傍らさまざまな場面に応じた訓練を重ねている[3]。POは、暴力団員から危害を加えられる恐れのある民間人を対象に24時間体制で身辺警護を実施している[4]。具体的には、暴力団との取引を断った企業関係者や暴力団排除活動に取り組む地域住民らのほか、暴力団関係者の刑事裁判にかかわった裁判員も保護対象者に含まれる。POは暴力団捜査を担当する捜査4課や所轄警察署などから指定され、自宅や勤務先の警戒や移動に付き添うほか、必要に応じて24時間体制での警護も行う[5]

都道府県には保護対象者の選定や保護計画の策定を担当する「保護対策官」も配置され、保護対象者の身辺警戒を実施するため、全国の警察が連携している[4]。保護対策官は、保護対象者が他の県などに移動する際は、現地の警察本部に速やかに連絡することで身辺警戒に漏れがないよう徹底する[6]

福岡県警2011年12月21日、暴力団から狙われる恐れのある暴力団排除活動の関係者らの身辺を警護する専門部隊「暴力団対策身辺警戒隊」を設置した[7]。福岡県内で多発する企業などを狙った発砲事件や改正県暴力団排除条例の成立を受けて新設されたもので、福岡県内にいる数百人の保護対象者以外でも必要に応じて出動する。警戒隊は組織犯罪対策課などの計数十人が兼務していた[8]2013年3月28日、福岡県警は、警戒隊を改組して「保護対策室」を約110人体制で発足させた。専門組織としては全国最大規模であり、襲撃に及ぶ危険性が高いと判断したに対し過去の事件を掘り起こすなどして検挙につなげる攻めの捜査を展開するとしている。対策室は警護に加えて、暴力団内部から得た情報から脅迫や傷害などの過去の事件も捜査する[9]

装備

武器・防具

POの武器けん銃である。自動式けん銃、もしくは回転式けん銃を選んで使用している。警視庁POの警察官が装備するけん銃は回転式のほか、自動式大型けん銃も確認されている[10]佐賀新聞社の報道によれば、佐賀県警のPOは回転式けん銃を手にセダン型警察車両から身を乗り出して周辺を警戒し、警視庁警備部警護課SPと同様に防弾カバンを手にするPOも確認されている[11]

けん銃以外の武器として、特殊警棒を腰周りに携行している[12]。POが携行するブリーフケース、ガーメントバッグ、薄い手さげカバンの中には、防具として折り畳み式の防弾盾が仕込まれており、被襲撃時には保護対象者の周りで盾を広げ、銃弾刃物から守るとされている[13]。さらには、これらの防具を至近距離から犯人の手足や首に叩きつけて瞬時に制圧する格闘術も訓練されている[10]マル暴が捜査に使用する捜査車両の一部には防弾加工が施された車両も全国的に配備され、身辺警戒にも使用されている。これはかつて暴力団事務所付近で警戒中の捜査車両が敵対する暴力団員と間違われ、捜査員が射殺される事件を受けてのことである[4]

脚注

出典

参考文献

  • 山崎准・伊藤俊之 編『日本の警察力』宝島社、2016年。ISBN 978-4-8002-5424-5。
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