西谷墳墓群

四隅突出型墳丘墓[注釈 3]。土砂崩れと採土のため半分以上が失われ、南側のみが残る[4]。規模は不明であるが一辺15mを超えないものと推測され、西谷墳墓群の四隅突出型墳丘墓では最も小規模なものである[3]。内部主体は4個確認され、いずれも木棺直葬と考えられる土壙である[4]。

1号墓の北西側に番外1号墓と呼ばれる土壙墓[注釈 4]と、番外2号墓と呼ばれる土壙墓（内部に箱式石棺）[注釈 5]が存在する[10]。

現在、盛土のうえ東側突出部とその周辺の形状を復元する形で整備されている[14]。

四隅突出型墳丘墓[注釈 6]。全体の3/4が破壊された状況であるが、方形部南北35m×東西24m[注釈 7]になる大形の四隅突出型墳丘墓である[9]。第1主体（木棺もしくは木槨葬）の土壙の底に、砂利と赤色粘土もしくは赤色顔料[注釈 8]が敷かれていた。ただし第1主体は中心的な埋葬施設ではないと考えられる。ガラス腕輪や、吉備の特殊器台・特殊壺などが出土している。[11]

現在は全形を復元したうえで、内部に埋葬時の様子を見学できる装置と展示パネル[注釈 9]を用いた展示室が設けられている[14]。 2号墓の整備作業中に横穴墓群第2支群が発見された[12]。

四隅突出型墳丘墓[注釈 10]。島根大学考古学研究室によって発掘調査された。規模は東西40m×南北30m、高さ4.5m[注釈 11]。突出部は付け根の幅7～8m、長さ6～7mの幅広大形で、この突出部上面が墳頂への墓道と考えられている。斜面は貼石で覆われ、突出部から墳頂にかけての稜線部分は石を敷き詰めた道のようになっている。墳丘頂上には8つの埋葬施設があり、首長とその家族のためのいくつかの墓壙が掘られていた。そのうちの最大の墓壙の上には4つの柱穴が検出されており、何らかの施設があったものと考えられている。[6]

9号墓に次ぐ規模の四隅突出型弥生墳丘墓である。 江戸時代には仏教施設[注釈 12]があり周囲に基壇が設けられていた。

1983年から10年にわたる詳細な調査が行われた。上部に首長が埋葬された第4主体があり、脇にその家族が被葬された第1主体がある。第4主体は深さ1.4mの土壙が掘られ、木槨の内側に木棺を置く埋葬である。木棺内は水銀朱が敷きつめられており、ガラス管玉20個と鉄剣が出土した。第1主体からは副葬品として碧玉製管玉、ガラス製品（小玉、垂玉、管玉、勾玉など）が大量に出土している。埋土上から二百数十個の土器が検出されている。この土器のなかには吉備の特殊器台・特殊壺や北近畿・北陸地方の土器に似ているものが多い[15]。

墓穴の周囲に4箇所の柱穴が検出された。これは祭事のための一時的な施設であった可能性が指摘されている[5]。

現在は1m以上の盛土のうえ、斜面に貼石を施し、墳頂に第1主体と第4主体の遺構表示をおこなって、築造当時の姿に整形されている[14]。

四隅突出型墳丘墓[注釈 13]。規模は東西34m×南北27m[9]。この地点で出土した土器が「下来原西谷丘陵出土土器」[1]として報告されたため、旧来「西谷丘陵遺跡」として知られた[4]。地元の土器のほかに吉備の特殊器台・特殊壺、山口県西部の土器が出土している[10]。 墳丘構造が2号墓や3号墓に比べて雑な印象を受けるものの、2号墓・3号墓と同じくらいの被葬者が埋葬されていると考えられるという[14]。埋葬施設は調査されていない。

現在は、20cm程度の盛土のうえに張芝で保護してある[14]。 4号墓に20cmしか盛土をしなかったのに対し3号墓に大量の盛土をおこなったために、本来4号墓の墳頂のほうが高かったのが現状では逆転している[2]。

遺存状態が悪く、明確なことは分からない。従来は地形から前方後方形墳墓と推定されていた[4][3]が、近年では「長方形」[9]、あるいは「方形または楕円形」[14]と考えられている。規模は22m前後×約17m、高さ2m前後。配石はない。遺物も検出されておらず、築造年代は不明。[9] 隣接して、番外3号墓と呼ばれる小規模な石棺墓[注釈 14]が存在する。

現在は、墳形の復元はされていないものの盛土と張芝で保護されている[14][注釈 15]。

四隅突出型墳丘墓[注釈 16]。墳丘の大半が失われており、北側・東側に一部が残る。規模は不明だが、東西約17m×南北8m以上、高さ約2mと推測されている[注釈 17]。[4][9]

現在は、西側・南側の土の流出を防ぐための保護が施されている[14]。

古墳時代前期（4世紀）の方墳であるが、弥生時代の伝統を引き継いでおり特異な墳墓として注目される。 溝で区画した基壇の上に長方形墳が西よりに築造されたと推定されている[注釈 18]。規模は東西約22m×南北17.5m、高さ1～2m。埋葬施設は2基ある。 主体部の直上に土器を集積している点、標石をおく点などは弥生時代の四隅突出型墳丘墓にも共通する葬送儀礼・後片付けの痕跡である。さらに、基壇の2隅（北西・南西）に溝で区画された突出部が築造されていることも弥生時代以来の要素である[注釈 19]。 一方で埋葬施設は刳抜木棺であり、これは古墳時代の新たな要素といえる。[9][16][10]

7号墳裾に番外5号墓と呼ばれる石棺墓[注釈 20]が存在する。

墳形不明の墳墓であるが、四隅突出型墳丘墓の可能性もある。1972年に宅地造成工事により調査がおこなわれることなく壊滅した。推定規模は31m×31m、高さ2m以上とかなり大形である。 造成工事に携わった人によると、赤色顔料と細砂が判別されたという。[4]

四隅突出型墳丘墓[注釈 21]。他の四隅突出型墳丘墓とは離れた墳丘に築造されている。 規模は東西42m×南北35m[注釈 22]、高さ5mで、この墳墓群中最大規模の四隅突出型墳丘墓である。 墳裾の配石構造が3段の敷石・立石で構成されており[注釈 23]、これは西谷9号墓に唯一見られる特徴である。 墳丘規模や配石構造から、特別な被葬者を葬ったと考えられる。[10]

1962年以降、墳頂に三谷神社が鎮座している。 2004年から2005年にかけて、墳丘崖面の保護工事がおこなわれている[14]。

方墳[4][注釈 24]。規模は9m×約10m。盛土で整形する[10]。

円墳[10][注釈 25][注釈 26]。規模は径約18m。盛土で整形する[10]。

小形の円墳ながら円筒埴輪が出土しており注目される。出雲平野において古墳時代中期中葉の円筒埴輪が発掘調査で出土した初例である。

方形墓[4]。一部原形を損なうが、現状で一辺約10m程度の規模である[3]。

発掘調査はおこなわれていない。

方形墓[3][注釈 27]。規模は一辺約10mをはかる[3]。

他の墳墓が丘陵の尾根上に築かれるのに対し、13号墳は斜面中腹に築かれている[3]。

発掘調査はおこなわれていない。

円形墓[4]。原形を損ねているが、本来は径約12m程度の規模と思われる[10]。

発掘調査はおこなわれていない。

方墳[注釈 28]。規模は一辺約15m、高さ0.9m。消滅。 埋葬施設は木棺直葬と推定される。遺物は刀子1点と須恵器、土師器片が出土している。[7]

北東部がややいびつな円墳[注釈 29]。規模は径11m、高さ0.5～1m。消滅。 埋葬施設は石棺で、盗掘を受けていた。 遺物は鉄製の鍬・鋤先、鉄斧、鉄剣2点のみである。[7]

「8m以上、高さ70cm以上の円形もしくは方形」の墳丘[9]、「方墳の可能性が高い」[10]などと推定されてはいるものの、削平されていて不明な部分が多い。3号墓の南隣にある。

墳裾に土壙1基[注釈 30]が存在する。

方墳[注釈 31]。規模は約9m、高さ約1mと考えられる[10]。

方墳[注釈 32]。規模は約13m四方、高さ約2m。

盛土が確認されているが、確実に墳墓と関係する遺構は検出されていない[10]。

方墳[3][注釈 33]。規模は南北10m×東西8m、高さ1.5mで小形である。盛土で整形する。

方形墓[3]。規模は現状で13m×10m、高さ約1.5m。

発掘調査はおこなわれていない。

円形もしくは方形墓[3]。かなり原形を損なっているが、現状の規模は9m程度、高さ0.75m。

発掘調査はおこなわれていない。

方形墓[3]。規模は現状で一辺12.5m、高さ（南西側）1.5m。

発掘調査はおこなわれていない。

円墳[3][注釈 34]。規模は径約24m、高さ2.5m～0.5m。

25号墳の北に番外4号墓と呼ばれる土壙墓[注釈 35]が存在したが、消滅。

方墳[3][注釈 36]。規模は南北13m×東西約17m、高さ2.5m～1m。

方墳[10][注釈 37]。規模は南北7m×東西5m、高さ1m。盛土で整形する。

西谷墳墓群の一部が、史跡に親しんでもらえるように出雲市によって整備され公開されている。

公園内にある西谷2号墳展示室は、石で装飾された墳丘の表面や墓穴が復元され、埋設施設が再現されている。

西谷墳墓群史跡公園に隣接する博物館。2010年（平成22年）に開館した。

出雲市内の史跡を案内する「ガイダンス施設」と埋蔵文化財発掘調査の拠点となる「埋蔵文化財センター」の機能を兼ねている。

1階は資料室と研修施設。2階は展示室。常設展示では、西谷墳墓群で発掘された出土品と模型、西谷3号墳の10分の1ジオラマが展示されている。所在地は島根県出雲市大津町2760番地。開館時間は9時から17時。入場料は無料。毎週火曜日及び年末年始は休館。