補聴援助用ラジオマイク用特定小電力無線局

補聴援助用ラジオマイク用特定小電力無線局(ほちょうえんじょようラジオマイクようとくていしょうでんりょくむせんきょく)は、特定小電力無線局の一種であるラジオマイクのことである。

定義

総務省令電波法施行規則第6条第4項第2号(7)に、

補聴援助用ラジオマイク(聴覚障害者の補聴を援助するための音声その他の音響の伝送を行うラジオマイク用で使用するものであつて、次に掲げる周波数の電波を使用するものであつて、次に掲げる周波数電波を使用するもの
(一) 75.2MHzを超え76.0MHz以下の周波数
(二) 169.39MHzを超え169.81MHz以下の周波数

と定義している。

2012年(平成24年)12月5日[1]現在

促音の表記は原文ママ

概要

特定小電力無線局として共通の特徴は、特定小電力無線局#概要を参照。

電波産業会(略称ARIB)が、無線設備規則第49条の14第1号及び関連告示の技術基準を含めて、標準規格「ARIB STD-54 特定小電力無線局 補聴援助用ラジオマイク用無線電話用無線設備」[2]を策定している。

専用受信機を所持した聴覚障害者に、聾学校や公共施設内などで音声情報を提供することを目的としている。 当初は75MHzが割り当てられたが、後に欧州規格にあわせるために169MHzも割り当てられた。

技術的条件

電波法令には規定されていないが、ARIB STD-54のチャネル呼称の中で占有周波数帯幅の広いものから、169MHzはVM、75MHzはWNSと分類している。

169MHz
記号電波型式周波数占有周波数帯幅備考
V F3E、F8W 169.4375-169.7500MHz
(125kHz間隔5波)
30~80kHz
(ワイド)
単向通信方式
同報通信方式
M 169.4125-169.7875MHz
(25kHz間隔16波)
20~30kHz
(ナロー)
75MHz
記号電波型式周波数占有周波数帯幅備考
W F3E、F8W 75.2625-75.5125MHz
(62.5kHz間隔5波)
30~80kHz
(ワイド)
単向通信方式
同報通信方式
N 75.2250-75.5750MHz
(25kHz間隔15波)
20~30kHz
(ナロー)
S 75.2125-75.5875MHz
(12.5kHz間隔31波)
20kHz以下
(スーパーナロー)
共通
  • 空中線電力:10mW以下
  • 空中線(アンテナ)が無線機本体に装着されていなければならない。
    • 絶対利得が2.14dB以下でなければならない。
  • 混信防止機能として次のいずれか
    • 同一構内で用いるものは識別信号の送受信ができること
    • 周波数の切替え又は電波の発射停止が容易にできること

基本的な使用法として

  • 単向通信方式は、ダイバーシティ受信や漏洩同軸ケーブル配信などを想定し、単数または少数の受信機を受信相手とする
  • 同報通信方式は、個人が直接聴取することを想定し、多数の受信機を受信相手とする

としている。

チャネル、グループ

公共施設での利用者の利便性や、設置者の周波数管理の為には、周波数の呼称を統一することが望ましく、ARIB STD-54では占有周波数帯幅毎の記号及びチャネル番号を推奨している。

また、同一場所で複数の送信機を用いる場合、同一周波数ではもちろん使用できないが、近接した周波数を使用すると受信機側で三次相互変調歪が生じて受信波と同一になり混信してしまうことがある。 そこであらかじめグループ分けをし、他のグループと混用しないように注意せねばならない。 但し、グループ分割は状況によるので、ARIB STD-54ではグループは例示するにとどまっている。

169MHz

ワイド

チャネル 周波数(MHz) グループ分割例
1 2 3
V 01169.4375   
02169.5000   
03169.5625   
04169.6250   
05169.6875  
06169.7500   
グループ1は公共施設の案内放送に利用し、一般使用は可能な限り避ける。

ワイドによる案内放送は原則として169.4375MHzとする。
太字は欧州で補聴目的に割り当てられた周波数である。

ナローグループ内周波数間隔50kHz以上

チャネル 周波数(MHz) グループ分割例
1 2 3 4
M 01169.4125    
02169.4375    
03169.4625   
04169.4875    
05169.5125    
06169.5375    
07169.5625    
08169.5875    
09169.6125    
10169.6375    
11169.6625    
12169.6875   
13169.7125    
14169.7375    
15169.7625    
16169.7875    
グループ3は公共施設の案内放送に利用し、一般使用は可能な限り避ける。

ナローによる案内放送は原則として169.5125MHzとする。
太字は欧州で補聴目的に割り当てられた周波数である。

ナローグループ内周波数間隔150kHz以上

チャネル 周波数(MHz) グループ分割例
1 2 3 4 5 6 7
M 01169.4125       
02169.4375       
03169.4625       
04169.4875       
05169.5125      
06169.5375       
07169.5625       
08169.5875       
09169.6125       
10169.6375       
11169.6625       
12169.6875       
13169.7125       
14169.7375       
15169.7625       
16169.7875       
グループ6と7は公共施設の案内放送に利用し、一般使用は可能な限り避ける。

ナローによる案内放送は原則として169.5125MHzとする。
太字は欧州で補聴目的に割り当てられた周波数である。

チャネル呼称

占有周波数帯幅と周波数の組合せをチャネル呼称といい、次のとおり表す。

 
チャネル番号
占有周波数帯幅の記号

75MHz

ワイド

チャネル 周波数(MHz) グループ分割例
1 2 3
W 0175.2625   
0275.3250   
0375.3875  
0475.4500   
0575.5125   
ナロー

チャネル 周波数(MHz) グループ分割例
1 2 3 4
N 0175.225    
0275.250    
0375.275     
0475.300    
0575.325   
0675.350    
0775.375    
0875.400    
0975.425    
グループ4は公共施設の案内放送に利用し、一般使用は可能な限り避ける。
スーパーナロー

チャネル 周波数(MHz) グループ分割例
1 2 3 4 5 6 7
S 0175.2125       
0275.2250       
0375.2375       
0475.2500       
0575.2625       
0675.2750       
0775.2875       
0875.3000       
0975.3125       
1075.3250      
1175.3375       
1275.3500        
1375.3625        
1475.3750       
1575.3875       
1675.4000       
1775.4125       
1875.4250       
1975.4375       
2075.4500       
2175.4625       
2275.4750       
2375.4875       
2475.5000       
2575.5125       
2675.5250       
2775.5375       
2875.5500       
2975.5625       
3075.5750       
3175.5875      

沿革

1997年(平成9年)

  • 特定小電力無線局の一種別として制度化[3][4]
    • 当初は75MHzのみで、呼出名称記憶装置の搭載が義務付けられていたが、メーカー記号と製造番号を送信するもので具体的な使用者を特定できるものではなかった。
  • ARIBが「 STD-54」を制定[2]

1998年(平成10年)- 呼出名称記憶装置の搭載が廃止、混信防止機能の搭載が義務付け [5]

2006年(平成18年)- 電波の利用状況調査結果の中で、770MHz以下の免許不要局の出荷台数が公表 [6]

  • 以降、三年周期で公表

2007年(平成19年)- 169MHzが追加 [7][8]

2012年(平成24年)- 電波の利用状況調査の周波数の境界が770MHzから714MHzに変更 [9]

出荷台数

周波数平成14年度平成15年度平成16年度出典
75MHz 611275711 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[10]
周波数平成17年度平成18年度平成19年度出典
75MHz 522285110 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[11]
169MHz --1,346
周波数平成20年度平成21年度平成22年度出典
75MHz 13105 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[12]
169MHz 000
周波数平成23年度平成24年度平成25年度出典
75MHz 101110 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[13]
169MHz 0743
周波数平成26年度平成27年度平成28年度出典
75MHz 20218 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[14]
169MHz 0020
周波数平成29年度平成30年度令和元年度出典
75MHz 202020 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[15]
169MHz 000

旧技術基準による機器の使用期限

無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準の改正[16]により、旧技術基準に基づき認証された適合表示無線設備に使用期限が設定[17] された。

この期限は、後にコロナ禍により延期[18]されている。

詳細は特定小電力無線局#旧技術基準による機器の使用期限を参照。

脚注

  1. 平成24年総務省令第99号による電波法施行規則改正
  2. 標準規格概要(STD-T54) ARIB - 標準規格等一覧
  3. 平成9年郵政省令第26号による電波法施行規則改正
  4. 平成9年郵政省告示第270号による平成元年郵政省告示第42号改正
  5. 平成10年郵政省令第86号による電波法施行規則改正
  6. 「平成17年度電波の利用状況調査の調査結果(暫定版)」の公表及び「平成17年度電波の利用状況調査の評価結果の概要(案)」に対する意見の募集(総務省 報道資料 平成18年6月8日)(2007年8月8日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  7. 平成19年総務省告示第440号による平成12年郵政省告示第746号改正
  8. 平成19年総務省告示第444号による平成元年郵政省告示第42号改正
  9. 平成24年総務省令第100号による電波の利用状況の調査等に関する省令改正
  10. 平成17年度電波の利用状況調査の調査結果(暫定版)平成18年6月 p.1811(平成17年度電波の利用状況調査の調査結果(暫定版)及び評価結果の概要(案)」の公表及び「平成17年度電波の利用状況調査の評価結果の概要(案)」に対する意見の募集 別紙(総務省 報道資料 平成18年6月8日))(2007年8月8日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  11. 平成20年度電波の利用状況調査の調査結果(770MHz以下の周波数帯)平成21年5月 p.1101(「平成20年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成20年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙1(総務省 報道資料 平成21年5月14日))(2009年7月22日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  12. 平成23年度電波の利用状況調査の調査結果(770MHz以下の周波数帯)平成24年5月 p.969(「平成23年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成23年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 平成24年5月18日))(2012年6月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  13. 平成26年度電波の利用状況調査の調査結果(714MHz以下の周波数帯)平成27年4月 p.1059(「平成26年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成26年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 平成27年4月9日))(2015年5月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  14. 平成29年度電波の利用状況調査の調査結果(714MHz以下の周波数帯)平成30年5月 p.1203(「平成29年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成29年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 平成30年5月25日))(2018年6月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  15. 令和2年度電波の利用状況調査の調査結果(714MHz以下の周波数帯)令和3年5月 p.2-1(「令和2年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「令和2年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 令和3年5月21日))(2021年6月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  16. 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  17. 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  18. 令和3年総務省令第75号による無線設備規則改正

関連項目

外部リンク

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