藤家渓子

藤家 渓子(ふじいえ けいこ、1963年7月22日 - )は、京都府京都市出身[1]現代音楽作曲家[2]

藤家 渓子
Fujiie Keiko
生誕 (1963-07-22) 1963年7月22日
出身地 日本の旗 日本 京都府
学歴 東京芸術大学大学院
ジャンル クラシック音楽現代音楽
職業 作曲家

東京芸術大学大学院修了。学生時代の同級生に作曲家の野川晴義等がいる。尾高賞を2回受賞し[2]、作品は世界各国で演奏されている[3]。長年長崎県在住であったが、2020年から西アフリカブルキナファソに拠点を移している[4][5]。夫はギタリスト山下和仁。なお、著書およびホームページでは「藤家溪子」と表記している[4][6]

経歴

1963年京都に生まれた藤家[7]は、4歳からピアノを習い、小学校3年でオペラを作る[2]。東京芸術大学および大学院に学び、八村義夫間宮芳生に師事する[2]。1986年に「クラリネット協奏曲」が第55回日本音楽コンクール作曲部門で第1位入賞[7][8]、海外派遣特別賞も受賞した[2]。1988年に東京芸術大学大学院を修了し、1990年には「弦楽三重奏曲」がアジア作曲家連盟(ACL)青年作曲賞を受賞した[9]。1992年秋から翌年春にかけて、日米芸術交流プログラムの助成によりニューヨークに滞在した[7]

環境問題への関心から1994年に京都の22世紀クラブ主催のグリーン・コンサーツ「地球の緑のために」で、管弦楽曲「翡翠の海のパノラマ」を日本初演[2][10]。1995年に管弦楽のための「思い出す ひとびとのしぐさを」で尾高賞を女性として初めて受賞した[11][12]。曲名はチリの詩人ガブリエラ・ミストラルの詩「Beber」(飲む、という意味のスペイン語)の冒頭からとられている[13][14]。翌1996年には、初めてのモノローグ・オペラ「蝋の女」で中島健蔵音楽賞を受賞した[2]。1997年の2作目のオペラ「赤い凪」では台本を自ら執筆して発表、また京都大学創立100周年記念式典のための祝典曲の委嘱を受け、管弦楽曲「輝を垂れて千春を映さんとす」を作曲した[2]。曲名は李白の「古風」という詩[15]より引用されたもので,「その光りが千年の後まで照り映えるような、すばらしい詩を生みたいと思う」という意味である[16]。またこの年に京都で開催された「地球温暖化防止京都会議[17]に関連し、「京都・山河の響き~コントラバスとギターのための二重協奏曲~」を作曲[2]ゲーリー・カーと山下和仁のソロで初演した[7]。同年、初の作品集CD「家」をリリースしている[7]

1998年に、太平洋戦争下での日本人とフィリピン人との交流をテーマとした、ダンスとのコラボレーション「人々の靴を履いて」の公演のため、ニューヨークを再訪した[7]。この年から翌年にかけて、オーケストラ・アンサンブル金沢の第9代コンポーザー・イン・レジデンスを務め、1999年3月に「ギター協奏曲第2番“恋すてふ”」を山下和仁のソロで金沢にて初演する[18]。この曲は2度目の尾高賞を2000年に受賞した[11][19]。このころ雅楽への興味から、ヴァイオリンのための「深々と」(1998年)、龍笛篳篥、笙、楽琵琶楽箏のための「天のような地、そして地のような天」(1999年)などを作曲、初演している[2][20]。また1999年秋には、八ヶ岳高原音楽祭の音楽監督を務めた[21][22]

2001年に日本音楽コンクール70周年記念委嘱作品「ピアノ協奏曲第1番“一月の思い出”」を発表し[2]、サントリーホールで初演された[23][24]。この曲はウラジミル・ミシュクが演奏する自身のピアノ曲「水辺の組曲」を聴くために同年1月に訪れた、ロシアサンクト・ペテルブルグの思い出を込めたものである[25]。2004年には武蔵野市国際オルガンコンクール[26]委嘱で本選課題曲「オルガン協奏曲“フラ・アンジェリコの墓にて”」を作曲した[7]。同年2枚目の作品集CD「青い花」をリリース、またローマ国際ギター・フェスティバルで「藤家渓子ギター作品の夕」が開催された[7]

2004年から約10年間、家族とともに山下和仁ファミリー・クウィンテットを設立し、作曲と公演活動を行った。その後はオペラ作曲に力を注ぎ、2018年作曲のオペラ「蝕 (A Vermilion Calm)」を2020年9月にポーランドで初演した[27]。また同年から拠点を西アフリカブルキナファソに移し、現地の音楽家らとオペラを制作している[4]

主な受賞歴と受賞作

代表作

  • クラリネット協奏曲 Op.7(1986年)
  • 思いだす ひとびとのしぐさを Op.33(1994年)[28][29]
  • 輝を垂れて千春を映さ んとす (京都大学創立100周年記念 委嘱作品) (1997年)
  • ギター協奏曲第2番「恋すてふ」Op.60(1999年)
  • ピアノ協奏曲第1番「一月の思い出」Op.73(2000年)
  • ギターソナタ第1番「青い花」Op.75(2002年)

ディスコグラフィー

  • 1995年 - 21世紀へのメッセージ Vol.2 (グラモフォン POCG-1860)[30][31]
  • 1997年 - Works for guitar solo: La casa = 家 (KYBR-9701)[32][31]
  • 1997年 - 舞う~ダンス・コレクション/梅津美葉 (RCA)[33][31]
  • 1999年 - Trio Akkobasso (ANTES BM-CD31.9071): 「黄色い牛」[34][31]
  • 2001年 - 尾高賞受賞作品6 伝説のN響ライブ(キング KICC-3041)[35][31]
  • 2001年 - エレジー~クラリネット小品集~ (マイスター・ミュージック)[36]
  • 2004年 - The Blue Flower - sonata for guitar solo 青い花 藤家溪子ギター曲集 (RCA BVCC-31081)[37][31]
  • 2005年 - フレデリック・シャンピオンorgan Frédéric Champion organ: live at Musashino[38][31]
  • 2006年 - アメイジング・グレイス 山下和仁ギター小品集第3集 (クラウン・クラシックス CRCC-37)[39]

著作

参考文献

  • 小林緑、藤家溪子「対談 女性と作曲家の仕事」. 小林緑編著『女性作曲家列伝』平凡社、1999, p309-326[41]

脚注

  1. 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.520
  2. 日本の作曲家:近現代音楽人名事典. 日外アソシエーツ, 2008, pp576-577
  3. 藤家渓子ホームページ - ウェイバックマシン(2005年2月4日アーカイブ分)
  4. 藤家溪子プロフィール 2022年3月5日閲覧。
  5. アフリカの新しいオペラ!ブルキナファソで、現地の人々とじっくり・ガッツリ・コラボ”. camp-fire.jp. 2022年9月12日閲覧。
  6. 藤家溪子『小鳥のように、捉えがたいヴォカリーズ』東京書籍、2005
  7. 藤家, 2005, p214
  8. 入賞者一覧 第51~60回|日本音楽コンクール 2022年2月24日閲覧。
  9. ACL青年作曲賞歴代受賞者|日本作曲家協議会 2022年2月24日閲覧。
  10. 1991~2001 グリーン・コンサーツ 地球のみどりのために(京都市)|一般財団法人地域創造 2022年3月5日閲覧。
  11. 「尾高賞」受賞作品|N響 2022年2月24日閲覧。
  12. フィルハーモニー = Philharmony. 67(3)(704) - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2022年9月2日閲覧。
  13. 「21世紀へのメッセージ」Deutsche Grammophon/Polydor POCG-1860 ライナーノート
  14. フィルハーモニー = Philharmony. 67(4)(705) - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2022年9月2日閲覧。
  15. 国立文化財機構所蔵品統合検索システム 2022年3月2日閲覧。
  16. 京都大学広報委員会「京大広報 号外 1」『京大広報』9711g1創立百周年記念特集、京都大学広報委員会、1997年11月。
  17. 地球温暖化防止京都会議 2022年3月2日閲覧。
  18. オーケストラ・アンサンブル金沢 2022年3月2日閲覧。
  19. [録音] 映照 : オーケストラのための / 北爪道夫 . ヴィオラ協奏曲「悲歌」 / 林光 . 悲しみの森 : オーケストラのために / 池辺晋一郎 . ギター協奏曲第2番「恋すてふ」 / 藤家溪子 NCID BA54821478, 桐朋学園大学附属図書館OPAC, 2022年2月27日閲覧。
  20. 藤家, 2005, p207
  21. 八ヶ岳高原音楽祭 '99|アルク出版企画 2022年3月5日閲覧。
  22. 藤家, 2005, p31
  23. サントリーホール公演アーカイブ 2022年2月27日閲覧。
  24. 音コンの歴史|日本音楽コンクール 2022年2月27日閲覧。
  25. 藤家, 2005, p42, pp47-50
  26. 武蔵野市国際オルガンコンクール 2022年3月2日閲覧。
  27. Franek Wardyński 2022年3月5日閲覧。
  28. 東京藝術大学附属図書館OPAC 2022年2月27日閲覧。
  29. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  30. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  31. 藤家, 2005, p206
  32. Works for guitar solo : La casa = 家 / by Keiko Fujiie 2022年2月27日閲覧。
  33. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  34. HMV 2022年3月5日閲覧。
  35. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  36. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  37. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  38. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  39. NDL Online 2022年2月27日閲覧。
  40. NDL Online 2022年2月24日閲覧。
  41. 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2022年10月16日閲覧。

外部リンク

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