義民が駆ける
あらすじ
江戸時代後期、財政難に苦しむ川越藩藩主松平斉典は、徳川家斉の二十四番目の男子斉省を養子に迎えていることから、その生母おいとの方に働きかけ、幕府首脳に多額の賄賂をばら撒いた上で、川越よりもはるかに経済状況の良い荘内への国替えを画策した。庄内藩はよく耕された肥沃な田地を持ち、良質の米を産して富裕な藩と見なされていた[1]。
荘内藩を長岡に、長岡藩を川越に、川越藩を荘内に移す三方領地替えという形で突如幕府から国替を命じられた荘内藩は、藩主酒井忠器、世子忠発、その他藩首脳、商人本間光暉、佐藤藤佐らがそれぞれの立場から善後策を練る。また、荘内藩農民たちは江戸に上り諸大名や幕府役人に直訴を試みる。
将軍家斉はおいとの方から川越の庄内移封の望みを聞かされ、老中首座水野忠邦に命じた。忠邦は「国替えは一藩の大事、本来相当の理由がなくてはなりませぬ。ここからして、このたびの川越、庄内の1件、じかに交替を命じてはちと思惑が露骨に過ぎ、思わぬ世上の噂を醸し出すことにもなりかねませぬ。かかる場合は、間に一藩を差しはさみ、かつはしかるべき理由を符し、当方の意図を韜晦にみちびくことが上策とされましょう。三方国替えは従来例のあることでございます。」と家斉を誘導し、川越・庄内の間に長岡を差し込み、三藩の国替えを仕組んだ[2]。
登場人物
荘内藩首脳
荘内藩の家臣領民商人
- 本間光暉(荘内藩御用商人。国替えにあたり多額の献金を要請される)
- 佐藤藤佐(荘内出身の商人)
- 本閒辰之助(京田通西鄕組書役)
- 文隣和尚(玉龍寺住職)
諸大名
脚注
- 藤沢周平著 『藤沢周平全集 第17巻』 文藝春秋 1993年 414ページ
- 藤沢周平著 『藤沢周平全集 第17巻』 文藝春秋 1993年 412-413ページ
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