使役犬

(しえきけん、: working dogは、人間のために利用される犬である。使役動物の一種。特定用途のために訓練・開発されることもある。しばしば、「働く犬」「職業犬」と呼ばれることもある。

海上自衛隊の警備犬

犬の仕事

現在、犬の多くはペットとして利用されているが、特定の用途のために訓練されている犬もいる。

名称(日本語)名称(英語)用途
番犬ばんけん watch dog
猟犬りょうけん hunting dog
そり犬そりいぬ Sled dog
牧羊犬ぼくようけん herding dog
軍用犬ぐんようけん dogs in warfare 軍務のために調練した犬。 自衛隊では警備犬けいびけん
災害救助犬さいがいきゅうじょけん search and rescue dog 捜索救難活動に参加し、被災者の捜索・救助を支援する。大きく分けて地震救助犬、山岳救助犬、水難救助犬の3つに分類される[1]
警察犬けいさつけん police dog
警備犬けいびけん guard dog 日本の警察自衛隊において、警備捜索活動や災害現場で被災者救助などを行う。
探知犬:犬の嗅覚を利用し、特定用途に活用する。
地雷探知犬じらいたんちけん detection dog
爆発物探知犬ばくはつぶつたんちけん
麻薬探知犬まやくたんちけん 麻薬を探知する。
銃器探知犬じゅうきたんちけん 銃器を探知する。
検疫探知犬けんえきたんちけん 動植物の検疫の検査を必要とする肉製品・果物などを嗅ぎ分けて発見する[2]
DVD探知犬 海賊版ソフトの密輸を防ぐために、 光ディスクの臭いを嗅ぎ分けて発見する。
がん探知犬 がん患者の早期発見に繋がる可能性があると言われる。実証中。婦人科がんは早期のものでも尿のにおいでほぼ確実に見分けられることがわかった[3]
シロアリ探知犬 シロアリを探知する。アメリカでは1970年代に誕生という説がある[4]
トコジラミ探知犬 トコジラミを探知する。宿泊施設などが対象[5]
コロナ探知犬 コロナウイルス陽性者を探知する[6]
人間の生活を支援する
身体障害者補助犬 assistance dog 盲導犬介助犬聴導犬のこと[7]
盲導犬もうどうけん guide dog または seeing-eye dog
聴導犬ちょうどうけん hearing dog または signal dog
介助犬かいじょけん service dog
セラピードッグ therapy dog 訪問活動犬
タレント犬 ペットモデル

探知犬

探知犬とは、犬の嗅覚を利用し特定の探知に使役される犬の総称。

麻薬探知犬

(まやくたんちけん)とは、の優れた嗅覚を利用して麻薬を探知する訓練が行われた犬である[8]

日本では国内への麻薬持ち込み阻止を目的として税関が用いており、1979年6月にアメリカから2頭導入されたのが始まりである[9]。1981年には国内犬では初の麻薬探知犬としてジャーマンシェパードのシェリー号が認定され、1987年には千葉県成田市に麻薬探知犬訓練センターが開設される[8]。麻薬探知犬にはアグレッシブドッグ(agressive dog)とパッシブドッグ(passive dog)の2種類があり、アグレッシブドッグは貨物などから麻薬のにおいを探し出して引っかいて知らせ、パッシブドッグは旅客や手荷物などから麻薬のにおいがするとその場でお座りをして知らせる[8]。2021年時点で、空港や港などの税関で130頭ほどの麻薬探知犬が活躍している[10]

銃器探知犬

(じゅうきたんちけん)とは、嗅覚で銃器の発見する能力を身につけた使役犬である。

日本では、税関が用いている。2009年4月より、銃器の密輸を水際で食い止めるため、オーストラリアで特別に訓練された銃器探知犬が成田空港で利用されるようになった[11]

爆発物探知犬

車内捜査に入る爆発物探知犬

(ばくはつぶつたんちけん)とは、嗅覚爆発物を探知する訓練が行われたである。爆発物探知のみがその役割であることは少なく、大抵は警察犬麻薬探知犬爆発物マーカーを嗅ぎ分けて発見するように訓練した犬である。火薬そのものは法規制が厳しく犬の訓練に使うことが難しいが、爆発物マーカーそのものは第一種指定物質であることを除けば入手や取扱いが比較的容易であるため民間でも訓練を行うことが出来る。民間警備会社での導入配備も期待されており、実際に欧米では民間の爆発物探知犬も数多く活躍している。

爆発物探知機と同様の誤認問題はあるものの、移動の利便性や臭いを追跡して場所を特定する能力に関しては爆発物探知機を上回る利便性がある。

検疫探知犬

(けんえきたんちけん)とは、国外からの伝染病などの侵入を防ぐために、動植物検疫の対象となる食肉製品や果物などのにおいを探知する訓練がされた犬のことで、日本では農林水産省動物検疫所が導入し、2005年12月に成田空港にパッシブドッグのビーグルが2頭配置されたのが最初である。[12]

2006年には検疫探知犬イメージキャラクター「クンくん」が誕生[13]。2020年10月1日現在で、検疫探知犬はビーグル犬とラブラドールレトリバーを合わせて96頭がいる[14]

日本

法律

教育訓練施設

健康管理

  • 税関では、嗅覚を酷使し激務である探知犬の健康診断を、「心身ともに健康で、探知業務ができるように」毎年春と秋に実施している[15]

引退と余生

実務に耐えられない若しくは定年を迎えた使役犬は、その功に報いて引退生活を歩むことになる。長い時を共にし情を感じる関係者や引退犬飼育ボランティアに引き取られ、ペットとして引き取られた先の家族として生きて行く犬もいる。もしくは訓練所の引退施設でノンビリと引退生活を送る犬もいる。「盲導犬の里 富士ハーネス」[16]によれば、本施設に引退犬専用棟があるという。

慰霊

日本では、厳しい試験・訓練・実務に耐えてくれた使役犬を弔うため、各管理者が慰霊碑を設け、関係者により慰霊祭が行われている。

  • 警察犬慰霊碑
    • 警視庁警察犬慰霊碑 - 東京都の動物霊園「東京家畜博愛院」に建立されている。警視庁で活躍した警察犬や警備犬が埋葬されている。春と秋の彼岸に関係者とともに現役の警察犬が参加して慰霊祭が行われている。
    • その他の道府県の直轄警察犬訓練所内にも設置され、その警察ごとに慰霊祭が行われている。
  • 犬魂碑 - 東京税関監視部麻薬探知犬訓練センター内に建立されている。毎年11月に慰霊祭が行われている。
  • 盲導犬慰霊碑 - 各地の盲導犬訓練施設などに慰霊施設を設けられている。
  • 警備犬慰霊碑 - 海上自衛隊の各警備隊に設けられ、警備犬が亡くなった際には追悼式を行う。

犬種一覧

国際畜犬連盟 (FCI) で使役犬グループに登録されている犬種一覧。猟犬以外の使役犬として誕生した犬種であり、番犬、作業犬のほか、闘犬も含まれる。

FCI10グループでは使役犬に分類されていないものの、FCIの各犬種概要「用途」の中で使役犬としても指定されている犬種

脚注

  1. 育成と認定について | 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(2021年7月3日閲覧)
  2. 動植物検疫探知犬について:動物検疫所(2021年7月11日閲覧)
  3. 読売新聞、2012年4月25日掲載。
  4. 新宿を往く!謎のビーグル犬集団の正体は? p.1:日経ウーマンオンライン【働くワンコ大集合!】
  5. 新宿を往く!謎のビーグル犬集団の正体は? p.2:日経ウーマンオンライン【働くワンコ大集合!】
  6. 無症状感染者も嗅ぎ分け、的中率95%!“落ちこぼれ訓練生”が全米初のスター・コロナ探知犬に  人間の60倍、約3億個以上の嗅覚受容体を持つバフィーの「あきらめない根性」、FNNプライムオンライン(2021年6月11日)2021年7月4日閲覧
  7. 身体障害者補助犬 |厚生労働省(2021年7月3日閲覧)
  8. 麻薬探知犬とは - コトバンク(2021年7月3日閲覧)
  9. 税関-麻薬犬
  10. 麻薬探知犬メキメキ成長4カ月 成田の訓練センター、朝日新聞デジタル、2021年1月20日(2021年7月3日閲覧)
  11. 銃器探知犬、成田空港に導入 1500万円かけ海外で養成”. 共同通信 (2009年3月7日). 2012年9月17日閲覧。
  12. 検疫探知犬とは - コトバンク(2021年7月3日閲覧)
  13. 動植物検疫探知犬について:動物検疫所(2021年7月4日閲覧)
  14. 「ハム、ベーコン全部だめ」検疫探知犬クンくん…クセになる動画が話題 職員「どこよりもかわいい」|まいどなニュース(2021年7月4日閲覧)
  15. 「ぼくらも体が資本です!」 成田の麻薬探知犬が健診産経新聞ネット版 2009.4.24
  16. 盲導犬の里 富士ハーネス

関連項目

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.