熱運動速度

熱運動速度(ねつうんどうそくど、: thermal velocity, thermal speed)とは、気体、液体などを構成する粒子の熱運動の代表的な速度である。よって、この速度は温度によって間接的に測ることができる。専門的に言えば、この物理量はマクスウェル・ボルツマン分布におけるピーク幅を測ったものである。厳密に言えば、熱運動「速度」はスカラー量速さであるのでベクトル「速度」ではないことに注意。

熱運動速度はあくまで「代表的な」速度であるから、さまざまな定義が存在し、実際に用いられている。

kBボルツマン定数T を温度、 m を粒子の質量とすると、相異なる熱運動速度の定義を後述のように書き下すことができる。

一次元において

vth を各単一次元(各方向)に沿った粒子速度の二乗平均平方根により定義すると、次のように書ける。

vth を各単一次元(各方向)に沿った粒子速度の大きさの平均と定義することもでき、次のように書ける。

vth を熱分布ピークの 1/e 値幅と定義する、もしくは

vth をエネルギー kBT を持つ粒子の速度と定義するならば以下のように書ける。

上の定義のどれを採用しても、vth は以下の範囲に収まる。

三次元において

vth を粒子の速さの最頻値と定義すると以下のように書ける。

vth を三つの方向それぞれの速度すべての二乗平均平方根をとったものと定義すれば以下のように書ける。

vth を原子や分子の速度の大きさの平均と定義すれば、以下のように書ける。

上記のどの定義を採用しても、vth は次の範囲に収まる。

一般的な気体の室温における熱運動速度

20 °C (293 K) における一般的な気体の平均熱運動速度は以下のようになる[1][2]

20 °C (293 K) における気体の平均熱運動速度
気体平均熱運動速度(m/s)
水素 1754
ヘリウム 1245
水蒸気 585
窒素 470
空気 464
アルゴン 394
二酸化炭素 375

脚注

  1. Thermal velocity”. Pfeiffer Vacuum Group. 2016年11月4日閲覧。
  2. Karl Jousten (November 1, 2000). Wutz Handbuch Vakuumtechnik (7th ed.). Braunschweig/Wiesbaden: Vieweg Verlag. p. 667. ASIN 3528548843. ISBN 978-3528548841. OCLC 248105804. Table 17.5
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