来迎寺 (松阪市白粉町)

来迎寺（らいごうじ）は三重県松阪市白粉町にある天台真盛宗の仏教寺院である。山号は教主山。院号は無量寿院。塔頭に覚性院。本尊は阿弥陀如来。

沿革

永正年間、北畠材親により松ヶ島城下に創建された[1]が、1588年(天正16年)、蒲生氏郷の松阪城築城に伴い城下の現地に移転した[2]。 1716年(享保元年)の松阪大火で表門(現在の裏門)を除き焼失したが、豪商三井家などの尽力により8700両の費用をかけて再興された[3]。

紙本墨書真盛自筆消息　二月十七日盛音坊あて（指定昭和46年3月17日）
- 天台真盛宗の開祖・真盛から蓮性寺(松阪市射和町)の住職・盛音にあてた文書。内容は、「いさわ寺」の坊主の修行成果が上がらないことへの不満[5]。

来迎寺裏門（指定昭和63年4月26日）[6]
- 松坂城の中門を移築したものと伝えられる[7]。
北畠具教制翰（指定昭和53年11月11日）
- 伊勢国司北畠具教が来迎寺に下した法度。寺内での殺生や軍勢による宿取り、酒が寺内に入ることなど様々な禁止行為を示す内容[8]。
角屋七郎兵衛等供養碑（指定昭和60年3月30日）
- 江戸時代初期の貿易家・角屋七郎兵衛（1610年 - 1672年）と、その一族の供養碑。七郎兵衛は1631年(寛永10年)貿易のためベトナムに渡ったが、その2年後に鎖国令が出たため、二度と日本に帰ることは叶わなかった。ベトナム中部の町・ホイアンの日本人街の長を務めたという[9]。
松本駝堂墓（指定昭和60年3月30日）
- 江戸時代の外科医・松本駝堂（1673年 - 1751年）の墓[9]。彼は植物から薬を発見する本草学者で、薬用人参の研究者だった[10]。当時の医薬不足の解消、薬効研究のため、各地で医薬となる植物を調査、採集し[11]、天然の和人参を江戸幕府に奉じて賞を賜った[12]。上記の角屋家の別家の出身[9]。

江戸時代の国学者本居宣長は、来迎寺の僧・戒言(かいごん)を門人としていた。戒言は宣長の奈良への旅に同行したほか、宣長の源氏物語講釈に参加したり、寺で花見・月見・紅葉等の歌会を開いたりしたという[13]。

当寺のある松阪市には、飯南町にも来迎寺という同名の寺があるため来訪や検索の際には注意が必要である。ちなみに白粉町の来迎寺は「らいごうじ」と濁る[4]が、飯南町の来迎寺は「らいこうじ」と、濁らない[14]。来迎寺（曖昧さ回避のページ）も参照。

櫻井祐吉(桜井祐吉)（著）『安南貿易家角屋七郎兵衛:附・松本一族』角屋七郎兵衛贈位報告祭協賛會、1929年4月25日
桜井祐吉（編）『校本松坂権輿雑集.地』三重県史談会、1919年2月26日
ワークス編編『ふるさとの文化遺産郷土資料事典24 三重県』人文社、1997年10月1日、235頁。ISBN 4795910952。全国書誌番号:99023741