駐車場
駐車場(ちゅうしゃじょう、英: parking lot)とは、車両(自動車や自動二輪車)[注 1]を駐車するための場所。用途によって一般公共用と特定利用者の保管用(車庫など)に大別できる。 1950年代の東京や大阪の中心部ではアメリカの俗語で車のたまり場を意味する「モータープール」という呼称が使われていたが、2020年(令和2年)現在は大阪にのみ存在するとされている[2]。
駐車場の分類
構造による分類
- 平面駐車場
- 地上にある駐車場で、土地の取得が容易な場所をはじめ、駐車場の中では最も多く見られるタイプである。自動車の区画のみを区切ることで駐車スペースとなる場合が多い。
- 立体駐車場
- 自走式と機械式がある。市街地や郊外の大規模ショッピングセンターの場合はこのタイプが多く、ビルディング・マンションなどの地下・屋上に駐車場を設ける場合でもこう表現する場合がある。また、市街地で簡便なものとしては、鋼材によって組み立てられるものもある。
- 日本における地下駐車場は、1960年(昭和35年)に東京駅前の丸の内ビルヂング(丸ビル)と新丸ノ内ビルヂング(新丸ビル)の間に建設された収容台数約500台分の地下駐車場が最初だといわれている[3]。
- 自走式
- 機械式
- 無人になった車が自動で運ばれるもので、1929年(昭和4年)に大阪在住の角利吉がタワー式駐車場の実用新案を取得したが実用化はされず、1962年(昭和37年)に至って石川島播磨重工業が東京の日本橋髙島屋に循環タワー式を納入したのが最初の実用例である。多段式(39 %)・2段式(25 %)・垂直循環式(17 %)・エレベーター式(10 %)等[4]があり、自走式より厳しい高さ制限(1,550 mm未満が多い)と車幅制限(1,850 mm未満が多い)を設けており、ミニバン、トールワゴン、SUV、軽トラックを含むキャブオーバー型の小型トラック等に見られる、とりわけ全高や車幅が大きい高級車・車高を下げた改造車、左ハンドル車は駐車できない場合が多い。狭い敷地内に建設される事も多く、ターンテーブル(転車台)が設置される場合がある。
都市計画と駐車場
日本
日本の駐車政策は、「駐車は路外に」という基本原則と、都市の再開発の観点から整備されてきた[5]。日本では1957年(昭和32年)に駐車場法が制定されている[3]。都心部は駐車場の絶対数不足による駐車場問題が深刻化し、駐車場ビルや、道路や新築建築物への地下駐車場化が増加している[3]。
駐車場法では、一般公共用の駐車場について、設置場所によって分類している。
- 路上駐車場
- 路外駐車場
- 道路の路面外に設置される自動車の駐車のための施設であって、一般公共の用に供されるものをいう。駐車場法その他の法令で安全上の基準が定められている。
- 附置義務駐車場
- 路外駐車場の一種。延べ面積2000平方メートル規模以上(場合によっては未満でも)の建物に、駐車場を併設する義務がある。
- 都市計画駐車場
- 路外駐車場の一種。道路交通が著しく集中し混み合う地区で、道路の効用を保持し、円滑な道路交通を確保する必要のある区域(駐車場整備地区)において、その地区内の駐車需要に応ずるため、都市計画によって定められる駐車場。
地方自治体は、都市計画法で定める都市計画区域内に駐車場整備地区を指定し、駐車場法で定める「駐車場整備計画」を策定することが出来る。略式表示の「P」は、駐車場の英語表記"parking lot"の略である。
店舗等では利用者に対して附置義務駐車場を無料で貸す場合もあるが、一般には用務地に駐車場がない場合などには、別に一時的に駐車するスペースを時間貸しする場合が多い。都市部においては、建物の附置義務駐車場やパーキングメータなどに加えて、違法な路上駐車を防ぐ目的で簡易な路外駐車場として増やす動きもある。
広さ的に住宅・建物を建てるのに不向きな土地、ないしは広さは十分だが、用途を不確定にしている土地を駐車場に充てる場合もある。この場合は、駐車場経営について専門家ではない地主が、大手駐車場経営会社に運営を委託することが多い。
駐車場法によると、名称、管理者の氏名及び住所(法人には、名称・事務所の所在地代表者の氏名及び住所)、供用時間、駐車料金に関する事項などを管理規程に定め、供用開始後10日以内に都道府県知事に届け出なければならないとされている。各自治体では駐車場整備計画を連動させ、駐車場条例として運用している。
日本においては、2006年(平成18年)6月1日に改正施行された道路交通法により、駐車監視員・放置違反金制度が導入され、駐車禁止の取締りが都市部の重点路線で強化された結果、駐車場の需要が拡大する傾向にある。
大阪府を始めとする西日本および中部地方の一部では、民間駐車場のことを「モータープール」と呼ぶが、あくまでも和製英語である。 原語(英語)の「Motor pool」には駐車場の意味はなく、アメリカ軍などの軍用車部隊や官庁の公用車の待機所または部隊を指す言葉で、現在でも米軍施設や自衛隊ではこちらが用いられており、日本各地に存在する。
公共施設等には、歩行困難者向けの駐車スペースが用意されていることがある(パーキングパーミット)。
自動車所有と駐車場
車庫の保有
多くの国では、自動車を所有する場合、家庭用の自動車と外来用の自動車の駐車スペースを確保することは持ち家の責任であり、駐車スペースを自宅の敷地内に用意することが基本と考えられている[7]。日本のように車庫法が整備されている例もあるが、そのような事例は多くはない[7]。駐車するための設備や建物は「車庫」あるいは「ガレージ」と呼ばれ、また、簡単な柱と屋根を設けたものは「カーポート」などとも呼ばれる。
日本では1962年(昭和37年)に自動車の保管場所の確保等に関する法律が制定されており、車両を保有する者は車の保管場所を確保することが義務付けられている[3]。アパートなどの住民や企業の自家用、従業員用などのいわゆる自家用の駐車場に対しては、車両を公道に駐車させないことを目的にした自動車の保管場所の確保等に関する法律(略称「車庫法」)が適用される。この法律においては、自動車の保管場所という用語が用いられる。
駐車場に関する作品
- 『アスファルト・スポット』 - フランスのR&Sie建築事務所による作品。2003年に制作され、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレで公開された。新潟県十日町市寅3丁目358、妻有大橋のたもとに所在している[10]。周囲の山々に対応するように起伏に富んだ路面となっており、実際に駐車場として使用することも可能であるが「日本一難しい」と言われる[11][12]。
脚注
注釈
出典
- 都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律(平成18年5月31日 法律第46号)
- “大阪はモータープール なんでなん? 東京では消えた?”. 2023年3月20日閲覧。
- 浅井建爾『道と路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2001年11月10日、255頁。ISBN 4-534-03315-X。
- 他に水平循環式・多層循環式・エレベータースライド式・平面往復式 出典:「driver 2009-4-5」八重洲出版
- 高田邦道『駐車学』交通研究協会、2015年、13頁
- 高田邦道『駐車学』交通研究協会、2015年、32頁
- 高田邦道『駐車学』交通研究協会、2015年、95頁
- 高田邦道『駐車学』交通研究協会、2015年、106頁
- 『ハワイ完全版 2019』JTBムック、21頁
- “アスファルト・スポット”. 越後妻有里山協働機構. 2022年6月11日閲覧。
- “日本一難しいと話題のパーキング、その正体に驚き どう駐めれば良いんだ…”. Sirabee (NEWSY). (2022年6月3日) 2022年6月11日閲覧。
- 新潟総合テレビ (2022年6月7日). “日本一難しいと話題の駐車場 その真相は”大地の芸術祭”のアート作品!?現地に行ってみた【十日町市】”. FNNプライムオンライン (フジニュースネットワーク) 2022年6月11日閲覧。