日本におけるスカウティング
概況
全国団体
ボーイスカウト
部門
ビーバースカウトは該当年齢の児童を対象とする部門であり、隊の活動に参加することによって自然に親しみ、基本的生活技能や社会性、表現力等を伸ばし、カブスカウト隊への上進を目指す。また、親や学校の先生以外の異年齢の人々と接していく中で、自分が守られる為に他の大人や先輩を信頼し、団体行動を行う上での約束事を身につけて行くことも目標とされている。
カブスカウトは該当年齢の少年・少女を対象とする部門であり、家庭や近隣社会での生活指導及び組や隊の活動に参加することによってよき社会人としての基本を修得し、ボーイスカウト隊への上進を目指す。
ボーイスカウトは該当年齢の少年・少女を対象とする部門であり、班及び隊の活動に参加することによって自分の責務を果たし、野外活動を主とした体験学習を通してよき社会人たる資質の向上を図り、ベンチャースカウト隊への上進を目指す。
ベンチャースカウトは青年男女がスカウト運動の目的を達成するために、ちかいとおきての実践と、グループワークの手法を用いたプログラムを通して自ら考え行動し、その結果に責任を負うことができるよう育てることを目指す。 以前はシニアースカウトと言う名称であった。
ローバースカウトは青年男女が各自の生活において、ちかいとおきてをより強力に具現する機会を与えるとともに、自らの有為の生涯を築き、社会に奉仕する精神と体力を養うことを目指す。
制服
各スカウトには制服、正帽、チーフ(後述)が存在する。
ボーイスカウトの制服は各国連盟によって異なるが、基本となっているのはB-Pが組織した南アフリカ警察隊の制服(やわらかい襟の上衣、半ズボン、チーフ、つばの広い帽子)。
制服・正帽についての記述は「2013年版規約」に準拠する。
ネッカチーフ
制服、正帽とともにスカウトの服装の象徴でもあるのがネッカチーフ(チーフ)である。
ネッカチーフは正方形または二等辺三角形の布で出来ており、応急処置用の三角巾や埃よけのマスク、風呂敷など多目的に使用することもできる。ネッカチーフの色や模様はさまざまで、所属する団によって異なり、同じ団でも隊によって異なる場合もある。また、ジャンボリーなどの特別なイベント時のみに着用するネッカチーフや、日本国外派遣時に着用するネッカチーフ、各連盟事務局のネッカチーフなどもあり、それらはすべて視覚的にスカウトの所属を表すものである。
日本のスカウトはこれを三角形の長辺から反対側の頂点方向に巻き、両端がとがった棒状にして用いる(日本国外のスカウトでは太くざっくりと巻くスタイルのものもあるが、日本では細く巻くスタイルが好まれている。これを首にかけ、両端をチーフリング(他国ではウォッグルとも言う)と呼ばれる小さな輪状の器具に通す。チーフリングを胸の前(制服の第一ボタンと第二ボタンの間)まで引き上げ、ネッカチーフを留める。日本国外ではチーフリングを用いずネッカチーフを直接結ぶスカウトも多くいるが、日本ではほとんどの場合チーフリングが使用される。
チーフリングには装飾としてでもあり、ジャンボリーやさまざまな行事に合わせて、特殊なデザインのものが作られている。また、個人の趣味・余技として自作されることもあり、ジャンボリーなどで他のスカウトと友情の印として交換されることもある。正式なものは真鍮などの安価な金属製であるが、チーフリングの作成に用いられる材料は、木材、皮革、牛などの動物の骨、細紐、ビニールやプラスチックなど、多種多様である。
ボーイスカウトの制服は、ワッペンの貼り付け方一つにいたるまで公式の規定が存在する。そんな厳密な規定のある制服の中で、唯一チーフリングは自分の好みで選択・着用できる。
ビーバースカウト
- 水色のキャップ
- 正面に水色の「ビーバー記章」をつける。
- 水色のポケットがついた茶色のベスト。
- 左ポケットに進級章(ビーバー・ビッグビーバー)と進歩記章(小枝章)をつける。
- 右胸に自分の所属する団の所在市町村、都道府県、団号数をつける。
- ベストの中には、冬場のトレーナーと夏場の半そでTシャツ(ただしこれは、団によって柔軟に運用され、私服が許されている団もある)。
- 茶色の半ズボン(団によって柔軟に運用され、私服が許されている団もある)。
- 水色のソックス(団によって柔軟に運用され、私服が許されている団もある)。
- 水色のネッカチーフをチーフリングで留める。
- 団によっては、なるべくお金をかけない、子どもによってはビーバー隊にいる期間が短いなどの理由から、先輩が残してくれた制服を貸与している団もある。
カブスカウト
- 青(紺色)を基調にした制服
- 左袖の肩に近い位置に自分の所属する団の所在市町村、都道府県、団号数を付け、右袖の肩に近い位置に組を示す逆三角形の記章を付ける。
- 左胸ポケットには進級章(うさぎ・しか・くま)、りすバッジを付ける。
- ズボンは同色の半ズボンもしくは長ズボン。
- 青(紺色)を基調にしたキャップ。
- 正面に黄色い四角形の徽章を縫い付ける。デザインは熊の顔。
- 青(紺色)を基調にしたソックスと黄色のガーター(靴下止め)。
- ネッカチーフを首にかけ、チーフリングで留める。
ボーイスカウト
- カーキ色(薄茶色)を基調にした制服。上着の胸ポケットとズボンのポケットと肩に緑色の縁取りがある。
- 左袖の肩に近い位置に自分の所属する団の所在市町村、都道府県、団号数を付け、右袖の肩に近い位置に班別章をつける。
- 左胸ポケットには進級章(ボーイバッジ・初級・2級・1級・菊)をつける。
- 右胸ポケットには大会参加章などをつける場合もある。
- 上級班長章、隊付章、班長章、次長章は左袖の団号章の下につける。
- 左ポケットの上には取得した「世界スカウト環境バッジ」をつけることができる。
- 右ポケットの上に世界スカウト記章、連盟員章をつける。
- ズボンは上着と同色の長ズボン。
- 緑色のベレー帽。帽章(金色のスカウト章)を左目の上部につける。
- 以前はフェルトのキャンペーン・ハットが制帽であった。ベレー帽は副帽として使用され、紺色が主流であった。
- ネッカチーフを首にかけ、チーフリングで留める。
- 右袖に技能章をつけ、「たすき」(右肩から左脇にかける)にターゲットバッジをつける。
- 日本国外派遣隊参加の際は、右胸ポケット上部に国旗標章(日の丸)をつける。(公布の日から1年以内まで)
- 左ポケットの上に名前のバッジを付ける人もいる。
ベンチャースカウト
- カーキ色を基調にした制服。ズボンのポケットの形状はボーイスカウトの制服とは違い縦にまっすぐ口が開いており、緑色の縁取りはない。
- 左袖の肩に近い位置に自分の所属する団の所在市町村、都道府県、団号数を付け、右袖の肩に近い位置にベンチャー隊所属章及び進歩記章(技能章)を付ける。
- 左胸ポケットには進級章(1級・菊・ベンチャーバッジ・ベンチャー・隼・富士)と進歩記章(プロジェクトアワード)を付ける。ちなみに、富士スカウト章は進級章の中でも最も名誉とされ、取得もそれに比して困難である。また、旧進歩制度(シニアースカウト)での富士章取得者は、ローバースカウト上進後も略章を着用することが認められている。
- ズボンは上着と同色の長ズボン。
- 緑色のベレー帽。帽章(銀色のスカウト章)を左目の上部の位置につける。
- ネッカチーフを首にかけ、チーフリングで留める。
ローバースカウト・指導者
- カーキ色を基調にした制服。
- 左袖の肩に近い位置に自分の所属する団の所在地名章、都道府県名章、団号章を付ける。指導者は役職に応じた腕章(団・隊指導者は緑色、地区役員は紺色、都道府県連盟役員は水色、日本連盟役員は赤色の円形、都道府県連盟事務職員は青色のひし形)を左袖につける。
- なお地区役員は所在地名章の代わりに地区名章、都道府県連盟役員及び都道府県連盟職員は所在地名章・都道府県名章の代わりに都道府県連盟章、日本連盟役員は所在地名章・都道府県名章の代わりに日本連盟本部章、何れも団号章を付けない。
- ローバースカウトは隊で指定した所属章を右袖につけてもよい。指導者は右袖には何もつけない。
- ズボンは上着と同色の長ズボン。
- 左袖の肩に近い位置に自分の所属する団の所在地名章、都道府県名章、団号章を付ける。指導者は役職に応じた腕章(団・隊指導者は緑色、地区役員は紺色、都道府県連盟役員は水色、日本連盟役員は赤色の円形、都道府県連盟事務職員は青色のひし形)を左袖につける。
- 緑色のベレー帽。帽章(金色の一重ロープ付スカウト章)を左目の上部の位置につける。
- 隊長・副長・団委員・連盟役員は、“月桂冠に抱えられたスカウト章”の一回り大きな帽章をつける。隊長は緑色、副長は赤色、団委員長・副団委員長は白色、コミッショナーは紫色のふさが付く。
- ネッカチーフを首にかけ、チーフリングで留める。ネッカチーフの代りにネクタイを着用することもできる。
- 女性のスカウト・指導者はスカートを着用することができる。
活動
- キャンプやハイキングなどの戸外活動のほかに、地域への社会奉仕(ボランティア)活動も行なっている。地域の教会、神社、寺院などを拠点に活動が行われている場合もあり、また他団体と共同して社会奉仕活動に参加することもある。このような社会奉仕活動は「目的」なのではなく、青少年育成の「手段」として行われる。9月15日は、「スカウトの日」とされており、ボランティア活動をする団が多い。
- 4年ごとの夏に日本スカウトジャンボリー(旧称:日本ジャンボリー)と呼ばれる2万人規模のボーイ隊の大会が行われる。2022年の第18回では東京を中央会場としながら、初めて全国で分散開催された。
- 障がい児にもスカウト運動の門戸は開かれており、障がい児専門の団もある。日本アグーナリー(国際障害スカウトキャンプ大会)も開かれている(ボーイ隊のジャンボリーに相応するが、カブスカウトから参加できる)。
ちかいとおきて
ボーイスカウトには、その活動の支柱となる三つのちかいと8つのおきてがある。
スカウトのちかい/カブスカウトのやくそく/ビーバースカウトのやくそくは、良き社会人のもつべき信条であり、スカウトのおきて/カブ隊のさだめ/ビーバー隊のきまりは、より具体的な内容を示している。
カブスカウトやビーバースカウトにとっては、三つの「ちかい」と八つの「おきて」の内容に理解が難しい部分がある為、歳相応の分かりやすい言葉に噛み砕いたものが「カブスカウトのやくそく/ビーバースカウトのやくそく」であり、「カブ隊のさだめ/ビーバー隊のきまり」である。
なお、「ちかい」の部分は世界各国のスカウト連盟においてほぼ差がない。しかし、おきてについては国によって微妙に異なっており、その数も八つとは限らない。
スカウトのちかい
スカウトのおきて
- スカウトは誠実である
- スカウトは、信頼される人になります。
- 真心をこめて、自分のつとめを果たし、名誉を保つ努力をします。
- スカウトは友情にあつい
- スカウトは、きょうだいとして仲よく助け合います。
- すべての人を友とし、相手の立場や、考え方を尊重し、思いやりのある人になります。
- スカウトは礼儀正しい
- スカウトは、規律正しい生活をし、目上の人を敬います。
- 言葉づかいや制服に気をつけ、行いを正しくします。
- スカウトは親切である
- スカウトは、すべての人の力になります。
- 幼いもの、年寄り、体の不自由な人をいたわり、動植物にもやさしくします。
- スカウトは快活である
- スカウトは、明るく、朗らかに、いつも笑顔でいます。
- 不平不満を言わず、元気よく、進んでものごとを行います。
- スカウトは質素である
- スカウトは、物や時間を大切にします。
- むだをはぶき、ぜいたくをせず、役立つものは活用します。
- スカウトは勇敢である
- スカウトは、勇気をもって、正しく行動します。
- どんな困難なことがあってもくじけずに、新しい道をきり開きます。
- スカウトは感謝の心を持つ
- スカウトは、信仰をあつくし、自然と社会の恵みに感謝します。
- お礼の心で、自然をいつくしみ、社会に奉仕します。
なお、創立当初よりのおきては12項目あったが1988年に現在の8項目へ整理統合された。以前の 12項目のおきては米国スカウト連盟 (Boy Scouts of America) が現在も使用しているものに近く、それらは順に「誠実である」「忠節を尽くす」「人の力になる」「友誼に厚い」「礼儀正しい」「親切である」「従順である」「快活である」「質素である」「勇敢である」「純潔である」「つつしみ深い」となっていた。
カブスカウトのやくそく
- ぼく(わたくし)はまじめにしっかりやります
- カブ隊のさだめを守ります
カブ隊のさだめ
- カブスカウトは すなおであります
- カブスカウトは 自分のことを自分でします
- カブスカウトは たがいに助けあいます
- カブスカウトは おさないものをいたわります
- カブスカウトは すすんでよいことをします
ビーバースカウトのやくそく
- ぼく(わたくし)はみんなとなかよくします
- ビーバー隊のきまりをまもります
ビーバー隊のきまり
- ビーバースカウトは げんきにあそびます
- ビーバースカウトは ものをたいせつにします
- ビーバースカウトは よいことをします
モットーとスローガン
スカウトのモットー(規範)は、『そなえよつねに』(備えよ常に、Be Prepared)。
「いつなん時、いかなる場所で、いかなる事が起こった場合でも 善処が出来るように、常々準備を怠ることなかれ」という意味である。
ビーバースカウトのモットーは『なかよし』、カブスカウトのモットーは、『いつも元気』である。
スローガンは、『日日の善行』(一日一善、 Daily Good Turn. または Do a good turn daily. )。
この『日日の善行』のような言葉が、ボーイスカウトの逸話『アンノウン・スカウト(無名スカウトの善行)』に登場する。
スカウトの敬礼
「ちかい」の3項目にちなみ、3本指(人差し指・中指・薬指)だけを伸ばした挙手注目の敬礼が、礼式の一つとして定められている(三指(さんし)の敬礼、三指礼(さんしれい)と呼ばれる)。 姿勢を正し、右手で三指を作り、ひじを肩とほぼ水平になるように横に張り、ひじを曲げ、人差し指が右目の上の額に軽く触れるようにする。(手の上げ下ろしは最短距離を通るようにする。)
この三指の敬礼については、「無名のスカウト戦士( Unknown Soldier 。注:無名スカウトの善行 (Unknown Scout Story) とは別)」という逸話が残っている。第二次世界大戦末期、戦場で負傷し身動きできなくなった米軍兵士が日本兵と遭遇した。意識を失った彼を日本兵は殺さず、傷の手当てをして立ち去った。米軍兵士の手元に残されていたメモには、「私は君を刺そうとした日本兵だ。君が三指礼をしているのをみて、私も子供の頃、スカウトだったことを思い出した。どうして君を殺せるだろうか。傷には応急処置をしておいた。グッド・ラック」と英語で記されていた。スカウトだった米軍兵士は、死に瀕して無意識に三指の敬礼をしていたのであった。このエピソードがアメリカ大統領に伝わり、当時の日本の少年団(現在のボーイスカウト日本連盟)に問い合わせがあったが、名乗り出る者はいなかった。この日本兵は戦死したのではないかと言われている。後に、日本中のスカウトの募金によって、神奈川県横浜市の「こどもの国」にこの無名のスカウト戦士の記念像が建立された。無名スカウト戦士の記念像の作製の際に作られた木製の原版は、栃木県那須野営場入り口に鎮座してある。
スカウトの敬礼は敬意を表すものであり、国旗のセレモニーやスカウト同士の挨拶として行う。ちなみにスカウト同士の手紙では、敬礼の代わりに拝啓と同様の扱いとして「三指」を、敬具と同様の扱いとして「弥栄(いやさか)」という字を添え、敬意を相手に伝えることが多い。
スカウトサイン(ボーイスカウト以上)
スカウトの敬礼と同じく右手で三指を作り、上腕部を肩の高さまで水平に横に上げ、ひじを直角に曲げて前腕部を垂直に立てる。
スカウトサインは世界中のスカウト共通のサインで、まっすぐに伸ばした三指は、「ちかい」の三ヶ条を片時も忘れずに実行していることを表している。
スカウトサインは、「ちかい」をたてる、「おきて」を唱和するときに行うほか、静かに注目してほしいときにも用いる。
カブスカウトの敬礼
「カブスカウトのやくそく」にちなみ、右手の2本指(人差し指・中指)だけをV字に開いて伸ばし、右ひじを曲げ、人差し指を帽子のひさしに付ける。
2本の指を開きV字にするのは、2本の指を動物の耳と見立てているためである。
カブサイン
カブスカウトの敬礼と同じく右手の人差し指と中指をV字に広げ、右手を肩の上にまっすぐ高く上げる。
カブサインは世界中のカブスカウト共通のサインで、仲間であることを示すサインである。
ビーバースカウトの敬礼
「ビーバースカウトのやくそく」にちなみ、右手の2本指(人差し指・中指)だけを付けたまま伸ばし、右ひじを曲げ、人差し指を右目の横に付ける。
ビーバーサイン
ビーバースカウトの敬礼と同じく右手の人差し指と中指を付けたまま伸ばし、右ひじを曲げ、前腕部を垂直に立てる。
ビーバーサインは、「ビーバースカウトのやくそく」、「ビーバー隊のきまり」を唱えるときに用いる。
祝声
世界各国のスカウトは自国語の祝声(Cheer、他者を祝賀、賞賛する際や、再会を約して別れる折などに唱和する掛け声のこと。一般に用いられる万歳のようなもの)を持っている。
ボーイスカウト日本連盟の祝声は、弥栄(いやさか)である。
またこの祝声はギルウェル指導者訓練所の祝声としても用いられている。これは、1924年、ギルウェル指導者訓練所の所長であったJ・S・ウィルソンから、その時入所していた13国の指導者全員に、各国のスカウト祝声を披露するようにとの命令があった。このとき日本から参加していた佐野常羽が「弥栄」を披露し、「ますます栄える(More Glorious)」という意味であることを説明したところ、ウィルソン所長は、「発声は日本のものが一番よい。そのうえ哲学が入っているのが良い」と賞賛し、以後、ギルウェル訓練所の祝声を「弥栄」とすることに定められたものである。
進歩制度
ガールスカウト
ボーイスカウトとガールスカウトの交流
友好団体として協力し合いNSJへのガールスカウトの招待をボーイスカウトはしている。
スカウトソング
ボーイスカウト薩摩郷中起源説
「B-Pは薩摩藩の伝統的な子弟教育法である郷中(ごうじゅう/ごじゅう)にならってボーイスカウトを創設した」という説がある。戦前の一時期まで日本のボーイスカウト界において、および後藤新平による郷中教育の調査以降の郷中研究において主張されたものである[1]が、後述のとおりB-P本人は否定している。
1908年、英国ボーイスカウトを視察した北条時敬は講演で、ボーイスカウトと郷中がよく似ており、郷中にボーイスカウト起源があると推測されると述べている[1]。日本のボーイスカウト運動の草分けである深尾韶は『少年軍団教範』(1915年)のなかで「ボーイスカウトが英国に起ったのは、我が日本の鹿児島に於ける健児の杜の方限の組織に倣ったのだ」と言及している[2]。また、目黒栄は『新生少年団の運営』(1942年)の中でB-Pは日本の駐英武官から薩摩や会津の子弟訓練法を教わったと記述している[3]。少年団日本連盟総裁であった後藤新平は鹿児島で郷中に関する調査を行い、それを紹介する文章でボーイスカウトは「古武士の俤に芽生えた新武士道」である事が瞭然であると述べている[1]。
しかし、勝矢剣太郎は、B-Pに本件を確認したところ「いづれと云ふ程の確たるものがなく、只日本に負ふ処頗る多い」との回答を得たと『欧州のスカウト行脚』(1928、成輝堂書房)で述べている。「日本の武士道に負う所は多いが、特に郷中に倣ったわけではない」ということである。田中治彦は、B-Pにとっては武士道は武士道であり「それが薩摩であるか会津であるか或いは赤穂であるか」の区別はしていなかったとしている[1]。
記念碑など(日本国内)
- ボーイスカウト日本連盟発祥の地碑
- 静岡県静岡市葵区・静岡市立葵小学校(旧・静岡市立城内小学校)
- ウルフ・カブ記念碑
- 兵庫県神戸市須磨区・須磨浦公園
- 1923年(大正12年)12月、日本人の手による日本初のウルフ・カブが発隊(須磨向上会ウルフ・カブ)したことを記念したもの。兵庫連盟30周年記念事業の一環で、1980年(昭和55年)7月20日に除幕された。カブスカウトがスカウトサインをして空を見上げている姿をかたどっている。
- 「日本ボーイスカウト初野営の地」記念碑
- 滋賀県大津市・近江舞子雄松崎
- 後藤新平総長とスカウト像
- 岩手県奥州市水沢区・東北新幹線水沢江刺駅前広場
- 後藤新平記念館:岩手県奥州市水沢区
- 「自治三訣」の碑や、スカウト帽をかぶった新平の胸像などがある。
- 佐野常羽胸像
- 山梨県南都留郡山中湖村・山中野営場
- 佐野記念碑(道心堅固の碑)
- 山中野営場佐野広場
- 無名戦士のレリーフ
- 神奈川県横浜市青葉区・こどもの国
- 川越の「自由の鐘」
- 埼玉県川越市・喜多院
- 1951年(昭和26年)4月8日、川越市の喜多院境内で、在日米国ボーイスカウト第3隊グランドハイツ(朝霞)と川越ボーイスカウト隊による日米ボーイスカウト交歓キャンプが開催された。これを記念して米国側からは「自由の鐘」、川越側からは刺繍の隊旗が互いに寄贈された。この「自由の鐘」にはアメリカボーイスカウト連盟(BSA)のマークが、添えられたプレートにはこの鐘の由来が綴られており、現在は川越市民会館脇に建てられている。
- グリフィンの墓所
- 横浜市中区・外人墓地
- グリフィン隊の創始者であるクレアランス・グリフィン牧師の墓所。