学士(文学)

学士(文学)(がくし ぶんがく)は、日本学士学位の一つである。主に大学文学部を卒業した者に授与される。狭義の「文学」以外の哲学、宗教学、社会学、歴史学、言語学、心理学なども含めた人文科学分野。

英語表記

主に以下の表記が考えられる。

  • Bachelor of Arts(B.A.) - リベラルアーツ分野全般の学位。学士(教養)
  • Bachelor of Letters(B.Litt.)/Bachelor of Literature(B.Lit) - ラテン語ではBaccalaureus Litterarum

概要

1991年(平成3年)以前の「文学士」(文學士、ぶんがくし)にほぼ相当する[1]

日本では主に大学文学部の卒業生に授与される学位で、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構において国語国文学英語英米文学独語独文学仏語仏文学中国語中国文学ロシア語ロシア文学歴史学哲学心理学宗教学の専攻分野で学位授与を申請し審査に合格した場合も同様である。

文学を専攻分野とした学位としては他に、「修士(文学)」、「博士(文学)」などがある。

沿革

日本で文学の学士号が初めて登場するのは1878年(明治11年)、旧東京大学に学士号の学位授与権が与えられ、法学士・理学士・文学士・医学士・製薬士の学位を定めたことによる。当初、学士号には成績に応じて一等学士から五等学士まで学士号に等級があったとされる[2]1883年(明治16年)、東京大学は大学卒業生に対する学士号の授与を停止し、代えて得業士の称号を授与することとされ、学士の位号は大学卒業の後、さらに高等試問を経て登第する者に限って授与されることとなった[3]1887年(明治20年)に学位令(明治20年勅令第13号)が発布。学位を大博士又は博士の二等とし、文学士を含む学士号は学位から削られ、称号として位置づけられるとともに帝国大学卒業生及び札幌農学校卒業生に授与されることとなった[4]1920年(大正9年)の大学令公布の大学令では、帝国大学以外の大学でも学士号の授与が認められ、1930年(昭和6年)には東京高等師範学校の専攻科又は広島高等師範学校の徳育専攻科を卒業した者は文学士とすることが認められた[5]。 終戦後、1947年(昭和22年)に学校教育法が制定されると、学士号は同法および学位規則に基づく称号として位置づけられた。師範学校の廃止に伴い、文学士号は国公私立の4年制大学文学部の卒業生にて授与する称号へと再編された。文学士号をめぐって大きな変革があったのは1991年(平成3年)の学校教育法改正によってであり、この改正法によって文学士は学位の一種として位置づけられ、その名称も学士(文学)に改められた。この制度改正に伴い、従前の制度で授与されていた文学士の称号については学校教育法附則にて学位と看做されることとなった[注釈 1][6]。 また、この法改正により、学位名称は各大学によって自由に定めることができるようになり、次第に学士号の種類も増加傾向にある[7]。なお、同年7月、日本で大学以外に学位を授与する機関として独立行政法人学位授与機構が設立され、翌1992年(平成4年)からは学位授与事業が開始された。これによって、短期大学卒業生や大学中退者等であっても既存の取得単位に加え、文学専攻で必要な一定の単位を修得し、所定の試験を合格することで学士(文学)の学位が取得可能となった。現在、同機構は独立行政法人大学改革支援・学位授与機構へと改組され、大学文学部とともに学士(文学)の学位を授与する主たる学術機関となっている[8]

文学分野の学士号

以下、日本における文学分野の学士号の一覧である。2009年時点で以下の種類が確認されている[9]

文学および関連分野の学士号(日本の例)
文学関係
文学外国研究言語文化日本文学英語学英文学外国語人文学
外国学英語英文学英語文化学英米語学英米文学外国語学外国文化人文科学
中国語中国語学比較文化比較文化学スペイン語学ドイツ語学フランス語英米言語文化
英米語学術日本語日本語学表現学文化史学文芸学アジア研究 インドネシア語
アジア研究 タイ語アジア研究 韓国・朝鮮語アジア研究 中国語アジア研究 日本語イタリア語学インドネシア語学スペイン語スペイン語・地域文化
スペイン語スペイン文学ドイツ語圏文化学フランス語学フランス語圏文化学フランス文学ヨーロッパ・アメリカ研究イスパニア語ヨーロッパ・アメリカ研究
ドイツ語ヨーロッパ・アメリカ研究 ブラジルポルトガル語ヨーロッパ・アメリカ研究 フランス語ヨーロッパ・アメリカ研究 ロシア語ヨーロッパ・アメリカ研究 英語ロシア語ロシア語学英語・地域文化
英語英米文化学英語教育英米学外国研究(スペイン語圏)外国研究(ドイツ語圏)外国研究(フランス語圏)韓国語韓国語・地域文化
韓国語教育教養教養学言語文化学国際コミュニケーション学国際英語学国際学国際文化国際文化学
人間文化学人文中国語・地域文化中国語中国文学日本語日本文化表現文化米英言語文化学臨床教育学

脚注

注釈

学校教育法

  1. 附則 (平成三年四月二日法律第二三号) 抄 の4 改正前の学校教育法第六十三条第一項の規定による学士の称号は、改正後の学校教育法第六十八条の二第一項の規定による学士の学位とみなす。

出典

  1. 日本学術会議編「学位に付記する専攻分野の名称の多様化について (PDF)
  2. 宮地正人佐藤能丸櫻井良樹『明治時代史辞典第1巻』(吉川弘文館2011年) 487頁、488頁参照。
  3. 国会図書館所蔵、黒田茂次郎土館長言編『明治学位沿革』(金港堂、1906年) 1108頁、1109頁参照。
  4. 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典第3巻』(吉川弘文館、1983年)177頁、相賀徹夫編著『日本大百科全書5』(小学館1985年) 13頁、14頁参照。
  5. 昭和5年勅令第36号(高等師範学校専攻科卒業者の称号に関する件)。「昭和五年三月三十一日以前ニ於テ東京高等師範学校ノ専攻科又ハ広島高等師範学校ノ徳育専攻科ヲ卒業シタル者ハ文学士ト称スルコトヲ得 」と規定された。
  6. 電子政府ウェブサイト「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)附則(平成三年四月二日法律第二三号) 抄の4”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2018年6月1日). 2019年12月25日閲覧。 “2019年4月1日施行分”」参照。
  7. 戦後教育における学位制度の変遷については、六車正章学士の学位に付記する専攻分野の新たな名称の傾向 (PDF) 」独立行政法人大学評価・学位授与機構編『学位研究第17号』(独立行政法人大学評価・学位授与機構、2005年) 111頁、112頁参照。
  8. 独立行政法人大学評価・学位授与機構ウェブサイト「機構について」参照。
  9. 独立行政法人大学評価・学位授与機構ウェブサイトH21年度 学位に付記する専攻分野の名称一覧(学士) (PDF) 参照。

参照文献

文献資料

  • 相賀徹夫編著『日本大百科全書 5』(小学館、1985年) ISBN 409526005X
  • 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典第3巻』(吉川弘文館、1983年)ISBN 464200503X
  • 宮地正人、佐藤能丸、櫻井良樹編『明治時代史辞典第1巻』(吉川弘文館、2011年) ISBN 4642014616

インターネット資料(外部リンク)

関連項目

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