女天狗
概要
女天狗は、男天狗と共に世俗の人々に混じって存在しているという。その姿は長い頭髪を持ち、黛(まゆずみ)や紅・おしろいで化粧し、歯には鉄漿をつけ、緋色の袴、小袖五ツ衣、薄衣の被衣を身に着けており[1]、天狗どころか優美な女性にしか見えず、背の翼を見るまでは天狗とはわからなかったという[2]。
『源平盛衰記』には、驕慢な性格の尼僧が尼天狗(あまてんぐ)になるとある(女性の尼天狗に対して男性のものは法師天狗と併記している)。尼天狗の顔は天狗に似るが[注 1]、もとが尼のために頭は剃髪しており、背に翼を持ち、法衣を身にまとっているという[1]。
江戸時代の百科事典『和漢三才図会』巻44「治鳥 付 天狗 天魔雄」[3]や諦忍の著書『天狗名義考』では、『先代旧事本紀』に記されている文の引用であるとして(実質は『先代旧事本紀大成経』)、スサノオが吐き出した猛気から天逆毎姫(あまのさこのひめ)という獣の首と人の体を持つ女神が生まれており、これが天狗の祖先であるとしている。この、天逆毎姫が女天狗のはじまりである[2]ともいわれる。
民間伝承
川に住む天狗であるとされる川天狗の中に、女の天狗が存在しているとうかがえる内容を含む伝承報告がいくつか存在しているが、詳細は不明。
脚注
注釈
- 平安時代から室町時代にかけて、天狗は江戸時代以後の絵画に典型的に描かれるようになった天狗像のような「鼻の高いもの」ではなく、烏天狗のような鳥類に似たもの、似た顔で描かれることが多く、ここでいう尼天狗も同様に鳥のような顔をしていると考えられる。
出典
- 著者不詳『源平盛衰記』国民文庫刊行会、1910年、195-196頁。
- 笹間良彦『図説・日本未確認生物事典』柏書房、1994年、9-10頁。ISBN 978-4-7601-1299-9。
- 寺島良安 著、島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳訳注 編『和漢三才図会』 6巻、平凡社〈東洋文庫〉、1987年、344-345頁。ISBN 978-4-582-80466-9。
- 笹間良彦『図説・日本未確認生物事典』柏書房、1994年、5-6頁。ISBN 978-4-7601-1299-9。
- 知切光歳『天狗の研究』大陸書房、1975年、253頁。
- 千葉幹夫『全国妖怪事典』小学館〈小学館ライブラリー〉、1995年、66頁。ISBN 978-4-09-460074-2。
- 女性民俗研究会『女性と経験』1巻2号、女性民俗研究会 1956年、41頁。
- 『山陰民俗研究』1号、山陰民俗学会、1995年、127頁。
関連項目
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