天人峡温泉
天人峡温泉(てんにんきょうおんせん)は、北海道上川郡東川町の忠別川沿いにある温泉。大雪山国立公園内にあり柱状節理の深い渓谷の底に位置する。旭川市の奥座敷で、大雪山の登山拠点のひとつにもなっている。
天人峡温泉 | |
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忠別川沿いに並ぶ天人峡温泉街 | |
温泉情報 | |
所在地 | 北海道上川郡東川町天人峡温泉 |
交通 | 車で旭川市から1時間 |
泉質 | 硫酸塩泉 |
泉温(摂氏) | 47 - 50 °C |
液性の分類 | 中性 |
浸透圧の分類 | 低張性 |
宿泊施設数 | 1 |
外部リンク | 天人峡 - ようこそ東川(一般社団法人ひがしかわ観光協会) |
温泉街
大雪山の西麓、標高600メートルの天人峡地区に「御やどしきしま荘」が旅館、ホテルとして唯一存在し、日帰り入浴も扱っている。
以前は 「天人峡温泉グランドホテル」(2011年閉館)、「天人峡温泉パークホテル」(2014年1月閉館)も存在した。 温泉街で最も古い歴史を持つ1900年(明治33年)創業の「天人閣」は、2018年の事業譲渡後、12月から施設修理を名目に休業に入ったが、2019年11月時点でも再開の目途が立たず[1]、2023年1月に天人峡温泉グランドホテルと共に解体・撤去されることが決定した [2] (「#「天人閣」解体決定までの経緯」を参照)。
温泉街の近くには、日本の滝百選にも選ばれた落差270mの羽衣の滝が存在する。羽衣の滝の先には「東洋のナイアガラ」と称される幅広な敷島の滝が存在する。温泉街からは散策路が整備されている。沢登りをする人に有名な、「日本で最も美しい沢」とよばれるクヮウンナイ川(美瑛町内に属している)は温泉街のすぐ近くにある。
忠別川は美瑛町と東川町との境界となっており、川の北側は東川町、南側は美瑛町となっている。
「天人閣」解体決定までの経緯
- Colours International(カラーズ・インターナショナル)への事業譲渡
2018年4月、ビジネスホテルチェーン、イーホテルの持株会社であるColours Internationalが天人閣の事業を譲り受けたことが明らかになる。この事業譲渡では、Colours Internationalは建物の所有権のみを握り、それまで経営を行っていた松山温泉がそれ以後も運営を行うという体制であった [3]。そのため、Colours Internationalと松山温泉との間に様々な対立が生じたという [3]。
- Colours Internationalによる改修・リニューアルオープンの計画
2018年12月以降、天人閣は休館となったが、2020年2月、Colours Internationalは松山温泉とのトラブル解決の目途がついたとし、天人閣を改修し、リニューアルオープンする計画を公表する [3] (「Colours International#天人閣改修計画」を参照) 。しかし、その後改修工事は行われず、翌2021年5月以降、Colours Internationalは企業活動を停止した(「Colours International#コロナ禍から活動停止へ(2020年~2021年)」を参照)ため、改修・リニューアルオープンの計画は立ち消えになる。
- 自治体による解体・撤去の決定
2022年6月、廃墟同然となったと報道された [4]天人閣と天人峡温泉グランドホテルを撤去し、天人峡地区の景観向上を図り、安全性を確保するため、東川町と美瑛町の関係機関は検討会を立ち上げた [5]。この時点でも天人閣の所有権はColours Internationalにあったが [5]、2023年1月、東川町と美瑛町、北海道などでつくる協議会は解体・撤去を決定した[2]。13億円の解体・撤去費用は、国の補助金やふるさと納税などで賄われるという。撤去には2年かかり、跡地には公園や足湯の施設を整備する予定である[2]。
歴史
- 1897年(明治30年)、旭川で旅館経営をしていた松山多米蔵がアイヌの案内で、温泉の湧出と滝を「発見」した。
- 1900年(明治33年)、温泉旅館を建て、松山温泉[6]として開湯。(後の天人閣、現在は事実上廃業)
- 1934年(昭和9年)、一帯は大雪山国立公園の指定を受けた。
- 1937年(昭和12年)、温泉地名を松山温泉から天人峡温泉として統一した。
- 1938年(昭和13年)、自動車道路開通、旭川から天人峡温泉までの直通バスが運行を開始した。
- 1953年(昭和28年)、羽衣荘(のちの天人峡温泉グランドホテル) と御やどしきしま荘が開業。なお、天人峡パークホテルの創業年については、不詳。
- 1978年(昭和53年)、羽衣荘が天人峡温泉グランドホテルへと改称。
- 1986年(昭和61年)、天人峡温泉グランドホテルの経営元(羽衣荘)が破産。天人峡温泉グランドホテルが一時閉館。
- 1990年(平成2年)、旭川の株式会社タケトーが天人峡温泉グランドホテルを買収、営業再開する。
- 2007年(平成19年)、天人閣が宿泊客が使用する飲料水を近くの沢の水を汲んでいたとして水道法違反に基づき行政指導を受けた。
- 2010年(平成22年)8月24日、温泉地への道道が180mにわたって崩落し孤立、宿泊施設4か所で宿泊客と従業員324人が取り残され、ヘリコプターで救出された[7][8]。
- 2011年(平成23年)、旭川電気軌道バス「いで湯号」の天人峡温泉立寄り廃止[9][10]、天人峡温泉グランドホテルが廃業。
- 2014年(平成26年)1月、天人峡温泉パークホテルが廃業。
- 2018年(平成30年)、天人峡温泉パークホテル解体。天人閣が倒産しColours International (カラーズ・インターナショナル)へ事業譲渡、12月以降、施設修理を名目に長期休業に入る。
- 2023年 (令和5年)1月、自治体による天人閣と天人峡温泉グランドホテルの解体・撤去の方針が決まる[2]。
アクセス
路線バスは以前は旭川電気軌道バス「いで湯号」が旭川駅から天人峡温泉に寄った後に旭岳温泉まで運行されていたが、2011年に路線が旭川空港経由となった代わりに天人峡温泉には立ち寄らなくなった[9][10]。そのため、温泉に宿泊しない場合は自家用車やタクシーなどで行くか、「いで湯号」の「国立公園入口」バス停から7キロを歩くしかなくなった。なお、天人峡温泉の宿に宿泊する場合は、宿の無料送迎バスが利用できる。
脚注
- “天人閣休業、再開めど立たず 譲渡先と温泉側、経営権巡り対立 地元関係者「天人峡観光に打撃」”. 北海道新聞. (2019年11月30日)
- “天人峡温泉の廃業ホテル2軒 東川町と美瑛町が解体・撤去へ”. NHK (2023年2月15日). 2023年2月17日閲覧。
- “天人閣改修にやっと動き”. 月刊北海道経済 電子版. (2020年3月17日) 2022年9月21日閲覧。
- “美しい滝で知られる温泉街にそびえる廃墟となったホテル…巨額の撤去費用をどうする?”. HBC北海道放送株式会社. 2022年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月21日閲覧。
- “天人峡温泉地区再生へ 美瑛町や関係機関が検討会立ち上げ”. 株式会社北海道建設新聞社 (2022年6月24日). 2022年10月18日閲覧。
- 松山温泉の郵便番号 日本郵便 郵便番号検索 2019年1月13日閲覧 - 現在も「東川町松山温泉」という 地名は存在する。
- “東川・天人峡 大雨被害で316人なお足止め ヘリで8人搬送”. 北海道新聞. (2010年8月25日). オリジナルの2010年8月26日時点におけるアーカイブ。 2012年1月12日閲覧。
- “孤立宿泊客らの救出終了 天人峡温泉”. 北海道新聞. (2010年8月25日). オリジナルの2010年8月27日時点におけるアーカイブ。 2012年1月12日閲覧。
- “直接空港から旭岳へ!! 7月15日(金)より、いで湯号(66番線)の運行経路が変更になります。”. 旭川電気軌道. 2011年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月31日閲覧。
- “「いで湯号」の運行について”. 旭川電気軌道 (2011年6月15日). 2011年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月31日閲覧。