十八技
概要
李氏朝鮮時代の『武芸新譜』という兵法書に書かれた武術である。『武芸新譜』の成り立ちと、金光淑が復活させた現代の十八技について解説する。
武芸諸譜
武芸新譜の元になったのが武芸諸譜である。この兵法書が成立したきっかけは文禄・慶長の役である。文禄・慶長の役で朝鮮は日本軍の猛攻を受け、多大な被害を受けた。『懲毖録』によれば、1593年夏、痔疾療養中の柳成龍を明の武将である駱尚志が見舞い、中国兵術の習得を勧めた。そこで軍将兵を駱の配下につけて、槍、剣、狼筅などの技術を学ばせたという。これを契機として朝鮮宮廷は1594年に訓錬都監を設立、兵の訓練と対日戦術の研究を行った。 朝鮮半島では弓術と馬術が重視され近接戦闘は顧みられなかったが、宣祖は日本軍の刀槍による死傷を考慮し、中国に学んだ刀剣、槍棍の訓練を命じた。 訓錬都監の教本として戚継光の『紀効新書十八巻本』(1560年)を採用し、1598年これを基に韓嶠が「棍」「籐牌」「狼筅」「長槍」「鐺鈀」「長刀」の六つの技術を抜き出し訳した『武芸諸譜』が刊行された。1604年には内容を付け足した『武芸諸譜続集』が出た。軍では「降倭」からの日本剣術の習得も行われている。
内容
武芸諸譜の六つの技術
- 長槍
- 槍術は朝鮮では武術の中心とされた。イチイの木で作った4m程の槍。
- 棍棒
- 基本の武芸の一つとされ、「武芸の母」と呼ばれたり、四書六経の四書に例えられたりした。
- 籐牌
- 籐で作った盾の術。同じ字を書く琉球のティンベーはローチン(小刀)とセットで遣うが、朝鮮では単独か、剣術の補助として使うようである。日本の陣笠術に近い。陣を組むとき、最前列に出る。
- 狼筅
- 種のついたナズナのような形の武器。長い竹に棘を付けた後、毒に漬けて作る。籐牌と共に最前列に出て敵を威嚇するのに用いる。文禄・慶長の役では朝鮮側が使い、効果を挙げたといわれる。
- 鐺鈀
- 先が釵のように三つに分かれた槍のような武器。槍のように突くほか、十手のように相手の武器を落としたりも出来る。
- 双手刀
- 「双手」とは二刀ではなく「諸手」という意味である。日本的な剣術で、倭寇の剣術を明の兵隊が導入したのが始まりであるとされる。「用剣」、「平剣」ともいった。
武芸新譜の十二の技術
- 竹長槍 20尺もある長兵である。一本の竹で作る物と編んだ竹で作った物があり、後者の方が丈夫とされる。
- 旗槍 儀式や護衛に使う槍である。長さは約2.75m、刃渡り23cmと短い為、接近戦で用いる事が多い。
- 月刀 刃が月に見えるのでこう呼ぶ。長さ6尺4寸、刃渡り2尺8寸ある。朝鮮後期には車騎歩(ゴギボ)戦法で騎兵が使った。
- 双剣 二刀剣法である。日本とは違い、二本の大刀(普通の刀)で戦う。
- 鋭刀 いわゆる「朝鮮勢法」である。
- 挾刀 薙刀に近い武器である。刃が眉尖刀とも呼ばれる。
- 提督剣 文禄・慶長の役で活躍した李氏朝鮮の武将である李如松を称えて名付けられた剣法。
- 拳法 手縛ともいった体術。武芸の基本であるとされた。
- 鞭棍 長い棒の先に短い棒のついたもの。いわゆるフレイル。長い棒は8尺9寸、短い棒は2尺2寸ある。
- 倭剣 倭寇の剣術。
- 交戦 空手の約束組手のようなものであったようである。
- 本国剣 実学思想に基づいて、新羅の花郎が作った古代剣法だという。元々は諸刃の剣を遣う剣術であったが、この時代には片刃になっている。
ギャラリー
- 鐺鈀を持った兵士
- 籐牌
- 竹長槍
- 旗槍
- 月刀
- 兵士
- 槍対籐牌(韓国軍の演武)
- 狼筅
- 狼筅の用法
- 双剣
参考文献
- Wikipedia英語版
- 十八技保存会ホームページ
外部リンク
- 十八技保存会ホームページ(英語)
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