ワイルド・ハニー・パイ

ワイルド・ハニー・パイ」(Wild Honey Pie)は、ビートルズの楽曲である。1968年に発売された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、実質的にはポール・マッカートニーによって書かれた楽曲[3]。マッカートニーがマルチトラック・レコーダーの特性を生かし、すべての楽器を自身で演奏して録音した楽曲[注 1]。歌詞の内容は、「Honey Pie」と数回繰り返した後、最後に「I love you(愛してるよ!)」と叫んで締めるというもの。そのためか歌詞カードには「レボリューション9」と同様に歌詞が掲載されておらず、対訳も割愛されている。

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ワイルド・ハニー・パイ
ビートルズ楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ
英語名Wild Honey Pie
リリース1968年11月22日
録音
ジャンル
時間52秒
レーベルアップル・レコード
作詞者レノン=マッカートニー
作曲者レノン=マッカートニー
プロデュースジョージ・マーティン
ザ・ビートルズ 収録曲
オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ
(A-4)
ワイルド・ハニー・パイ
(A-5)
ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル
(A-6)

レコーディング

「ワイルド・ハニー・パイ」のレコーディングは、1968年8月20日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で行われた[4]。レコーディングは、「マザー・ネイチャーズ・サン」の2回目のセッション終了後に続けて行われたため、演奏に参加したのは「マザー・ネイチャーズ・サン」と同様にマッカートニーのみとなっている[5][6][7][4]。なお、本作のレコーディングの前には、未発表曲「エトセトラ」もレコーディングされた[4]

マッカートニーは、本作のレコーディングについて「僕らは実験モードに入っていたから、「ちょっとやってみてもいいかな?」と言った。まずはギターから始めて、コントロール・ルームだったか隣の小部屋で、マルチトラックの実験を始めた。大がかりなところなんてまったくなくて、すごく手作りっぽい感じだった。弦にヴィブラートをいっぱいかけて、彫刻みたいに作っていった。イカれたみたいに弦を引っぱってね。だから『ワイルド・ハニー・パイ』という名前なんだけど、これは僕が書いた『ハニー・パイ』からの引用だった」と振り返っている[3][4]

4トラック・レコーダーのトラック1と2にはアコースティック・ギターを弾きながら、フットペダルでバスドラムを叩きながら歌う声、トラック3にシンコペーションを効かせたタムを叩く音、トラック4に別のボーカル・パートが録音された[4]。なお、2種類のアコースティック・ギターのうち、片方の音はテープのスピードを僅かに変動させたことから、音にふらつきが生じている[4]

リリース・評価

「ワイルド・ハニー・パイ」は、1968年11月22日にアップル・レコードから発売されたオリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』のA面5曲目に収録された。当初本作はアルバムから除外される予定となっていたが、ジョージ・ハリスンの当時の妻パティ・ボイドが大変気に入ったことから収録されることとなった[6]

ジャーナリストのデイビット・クヴァンティックは、アルバム『ザ・ビートルズ』に関連した著書の中で、本作について「まさに劣っている楽曲」と書いている[8]。一方で『ローリング・ストーン』誌のヤン・ウェナーは「サイケデリック・ミュージックとそれに結びつく様式に敬意を表している」と評している[9]

2003年に『スタイラス・マガジン』誌が発表した「Top Ten Filler Tracks」で第1位を獲得し[10]、2018年に『インデペンデント』誌のジェイコブ・ストルワーシーは、アルバム『ザ・ビートルズ』収録曲を対象としたランキングで、本作を最下位にあたる30位に挙げた。本作について、ストルワーシーは「ありがたいことに、ビートルズで最も短い楽曲の1つ」と評している[11]

クレジット

※出典[7]

カバー・バージョン

  • フィッシュ - 1994年10月31日にニューヨークで開催されたアルバム『ザ・ビートルズ』に収録の全曲をカバーするライブで演奏。このライブでの演奏は、2002年に発売された4枚組のライブ・アルバム『LIVE PHISH 13 10.31.94』で音源化された[12]
  • ピクシーズ - 1995年に発売されたアルバム『Rough Diamonds』に収録[13]

脚注

注釈

  1. この曲を録音した当時は、4トラック・レコーダーが使用されていた。

出典

  1. Courrier, Kevin (2008). Artificial Paradise: The Dark Side of the Beatles' Utopian Dream: The Dark Side of the Beatles' Utopian Dream. ABC-CLIO. p. 215. ISBN 978-0-313-34587-6. https://books.google.com/books?id=FK9zCgAAQBAJ&pg=PA215
  2. Athitakis, Mark. A Beatles Reflection”. Humanities. National Endowment of the Humanities. 2018年9月30日閲覧。
  3. Miles 1997, p. 497.
  4. White Album 2018, p. 14.
  5. Lewisohn 1988, p. 150.
  6. Harry 2000, p. 1151.
  7. MacDonald 2005, p. 309.
  8. Quantick 2002, p. 58.
  9. Wenner, Jann S. (1968年12月21日). Review: The Beatles' 'White Album'”. Rolling Stone. 2019年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月10日閲覧。
  10. Top Ten Filler Tracks – Staff Top 1”. Stylus Magazine. 2006年12月31日時点の0 オリジナルよりアーカイブ。2020年10月10日閲覧。
  11. Stolworthy, Jacob (2018年11月22日). “The Beatles' White Album tracks, ranked - from Blackbird to While My Guitar Gently Weeps”. The Independent (Independent News & Media). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/music/features/the-beatles-white-album-tracks-ranked-paul-mccartney-john-lennon-george-harrison-50-anniversary-a8643431.html 2020年10月10日閲覧。
  12. Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月10日閲覧。
  13. Rough Diamonds - Pixies | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月19日閲覧。

参考文献

外部リンク

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