ルノー・スポール

ルノー・スポール(Renault Sport)は、フランス自動車会社、ルノー内にかつて存在したスポーツモデルの開発とモータースポーツ運営組織。2021年5月1日より、組織改変のためアルピーヌに統合された[1]

ルノー・スポール製クリオ(クリオカップ仕様)
ロゴ

設立の経緯

クリオ・ルノー・スポール V6

ルノーは会社発足以降、1900年代から技術の向上を目的にモータースポーツへの参加を積極的に行っており、第二次世界大戦後もアルピーヌゴルディーニなどのチューナーを通じてル・マン24時間レースラリーなどに積極的に参戦していた。

しかし独立したモータースポーツ専門部署を持たなかったルノーは、1969年にゴルディーニを買収。1973年にはアルピーヌも買収し、事実上のモータースポーツ部門として、同社で競技車両を生産した。1976年にはアルピーヌの本社のあるフランス・ディエップにルノー・スポールを設立し、これにゴルディーニを統合した。アルピーヌは存続し、ルノー・スポールの一部の車両の開発を担った。

その後モータースポーツで培った技術を市販車にフィードバックさせ、エンジンサスペンショントランスミッションなどを独自にチューンした「ルノー・スポール」バージョンを製作する一方、ウインドの開発も担当している。また一部車種の「GT」グレードの足回りも、ルノー・スポールが開発を行っている。またルノー・スポールの特記事項としてはシートの開発もサスペンションと同時に行われていることがあり、これにより各車種毎に足回りとの相性が最適なシートが提供されている。

2021年5月1日より「アルピーヌ」ブランドに統合されたことが同月10日に発表された[2]

レース活動

ルノーF1チームのピット(2005年)

F1やル・マン24時間レースなどの耐久レースラリーなど様々なカテゴリーで常にトップクラスの活躍を繰り広げ、2005年2006年には2年連続でF1のコンストラクターズタイトルを獲得するなど、様々なカテゴリーで数々のタイトルを獲得している。

ルノーF1チーム

2005年と2006年にF1のタイトルを獲得したルノーF1チームは旧ベネトン・フォーミュラを買収して社名変更した法人であり、ルノー・スポールとは同じルノー・グループ内であるが別法人である。

フォーミュラカーレース

フォーミュラ・ルノーのF4Rエンジン
ルノー・e.Dams(2016年)

フォーミュラカーについてはF1以外にも、初級フォーミュラの「フォーミュラ・ルノー」や、中級フォーミュラの「フォーミュラ・ルノー3.5」(2005年フォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップワールドシリーズ・バイ・ニッサンが統合され発足)を各国で展開していた。古くからF3へのエンジン供給による参戦も続けている他、F1の次に位置するカテゴリーであったGP2にもエンジン供給を行うなど(実際の供給業務はメカクロームに委託)、ヨーロッパのモータースポーツにとって欠かせない存在となっていた。しかしF1がスーパーライセンス取得条件にポイント制度を導入すると、国際自動車連盟(FIA)の直系ではない一連のフォーミュラ・ルノーシリーズは力を失い、ルノーは下位フォーミュラから撤退した。

2014年からはDAMSとの提携でフォーミュラEに初年度から参戦。第一期のワンメイクシャシーのSRT 01Eにはダラーラとともにルノーの名が冠されていた。ルノーは第一期~第三期のチームタイトルを3連覇し、第二期にはセバスチャン・ブエミがドライバーズチャンピオンにもなっている。第五期にはルノー傘下の日産と入れ替わる形で撤退しているが、ノウハウや技術の大部分を引き継いでいる。

耐久レース

1978年のル・マン24時間で総合優勝したアルピーヌ・ルノーA442B

1950年代からアルピーヌやゴルディーニなどのチューナーを通じ、4CV、A110やA210、A441などでル・マン24時間レースに参戦し、数回クラス優勝していたが、1978年のル・マン24時間レースにターボエンジンを採用したグループ6仕様の、アルピーヌ・ルノー A442B(ディディエ・ピローニ/ジャン-ピエール・ジョッソー組)で、ポルシェ・935936などの並み居るライバルを破り、念願の総合優勝を飾った。目的を果たしたルノーはこの年限りでF1に注力するために撤退した。

その後もル・マン24時間レースなどの耐久レースには、エンジンの供給やプライベートチームの参戦のサポートにより散発的に参戦している。近年はフランスのシグナチュール・チームを支援して『シグナテック・アルピーヌ』としてLMP2クラスにエントリーし、2016年の世界耐久選手権と、ル・マン24時間でクラス優勝を果たした。

ラリー

ルノー・クリオ ウィリアムズ
ルノー・クリオR3T

1950年ラリー・モンテカルロでの4CVのクラス優勝以降、1960年代後半から1970年代前半にかけて、ルノー8をベースにアルピーヌが製作したアルピーヌ・ルノーA110や、ゴルディーニが手を加えたルノー8・ゴルディーニが世界中のラリーで活躍した。特に1971年のラリー・モンテカルロでは、前人未到の1-2-3フィニッシュを達成した。その後も1970年代後半から1980年代中盤にかけて、「フランスの英雄」とまで言われた伝説的ドライバー・ジャン・ラニョッティがドライブする5ターボが数回優勝を飾る活躍を見せたが、タイトル獲得には至らなかった。

その後空白期間を経て、F2キットカーでフランス国内でプジョーと死闘を繰り広げた。同時期にWRC併催の2.0Lカップでは最終年にチャンピオンを獲得。

00年代に入ってジュニアラリー世界選手権(JWRC)にスーパー1600規定のクリオを供給し、2度チャンピオンマシンとなった。2013年にはERC(ヨーロッパ・ラリー選手権)に前輪駆動ながらグループN4ルノー・メガーヌ RSで、同選手権のプロダクションカップに参戦した。グループRally規定のクリオも2022年現在まで開発・販売を続けており、ワークス参戦こそ無いが、常にラリーへの関わりを持とうという意志が感じられる活動を続けている。

ラリーレイド

ダカール・ラリーでは2013〜2018年に、ダスター(地域によってはダチアブランドでの販売)によりプロトタイプ規定のグループT1車両で参戦したが、良い結果は残せなかった。

ルノーはプライベーターによってダカールの四輪総合優勝やクロスカントリーラリー・ワールドカップのタイトル獲得を果たしたことはある(ルノー・20 4x4のマロー兄弟や、1997〜2002年にルノーが支援した「シュレッサーバギー」)が、ルノー・スポールとしては優勝経験はない。

ツーリングカーレース

1990年代のスーパーツーリングでは、F1で当時関わりのあったウィリアムズと共同開発したラグナを投入。1995年にBTCCのマニュファクチャラーズタイトル、1997年にドライバー・マニュファクチャラーの2冠を達成。特に1997年は24戦12勝という強さだった。

TCRではルノーの支援を受けたブコビッチ・モータースポーツがメガーヌRSで同規定車両を開発し、TCRドイツに参戦している[3]

5ターボやクリオ、メガーヌなどの市販モデルをベースにしたレーシングマシンによるワンメイクレースを古くから行っており、ルノー・スポールの主催で、ヨーロッパ各地で1990年代後半にはスパイダー(レーシング仕様)による「スパイダートロフィー」を、2005年からはメガーヌをベースにしたミッドシップマシンによるワンメイクレース「メガーヌ・トロフィー」を開催してきた。2015年からは専用マシン、R.S.01によるワンメイクレース「ルノー・スポール・トロフィー」を開催していたが、2016年を最後にこれらのワンメイクレースは廃止された。

ルノー・スポール・R.S.01

ルノー・スポール・R.S.01
ボディ
エンジン位置 ミッドシップ
駆動方式 後輪駆動
パワートレイン
エンジン VR38DETT 3,799cc V6 DOHC ツインターボ
最高出力 550 PS/7,000 rpm
最大トルク 64.3 kgf·m/5,000 rpm
変速機 7速シーケンシャル
車両寸法
全長 4,705 mm
全幅 2,000 mm
全高 1,150 mm
車両重量 1,144 kg

ルノー・スポール・トロフィー」の専用車両として開発され、2014年のモスクワモーターショーで発表されたレーシングカー[4]。 デザインはコンセプトカーデジールをベースとしている。

エンジンは日産・GT-Rに搭載されているVR38DETTをベースに、NISMOが独自にチューニングやドライサンプ化を施したユニットをミッドシップに搭載。組み合わせられるトランスミッションはSADEV製の7速シーケンシャルである。

シャシーはダラーラと共同開発したカーボンモノコックを採用し、車重は1100㎏に抑えられている。

前述の通り「スポール・トロフィー」が2016年をもって廃止されたため、本車はわずか2年で活躍の場を失う事となってしまった[5]。 そこでルノーはR.S.01をグループGT3規格に合わせてチューニングし、新たにR.S.01 GT3として再登場させたが[6][7]、市販車が製造されていない事からSRO公認は得られていない。チューニング内容はバラストの積載・カーボンブレーキからスチールブレーキへの変更・車高アップ・リストリクターの装着など。

R.S.01 GT3は2016年よりデリバリーが開始され、活躍の場をワンメイクレースから世界へと広げる事となった。 その後SRO公認外のニュルブルクリンク24時間レースインターナショナルGTオープン・VdeV耐久シリーズ等で活躍した。

若手ドライバー育成

新人の登竜門フォーミュラ・ルノー

古くから若手レーシングドライバーの育成に力を入れており、ルノーの後援を得てその後F1にキャリアアップしていったドライバーは、元F1ワールドチャンピオンのアラン・プロストルネ・アルヌーなど数多い。

また2002年には、新たに「RDD(ルノー・ドライバーズ・ディベロップメント)」という育成プログラムを発足させ、フォーミュラ・ルノーやF3などへの参戦支援などを通じて、より充実した体制で若手レーシングドライバーの発掘と育成を行っており高い評価を得た。

市販車

ルノー・メガーヌ・RS
ルノー・クリオ・RS

「ルノー・スポール」バージョン

モータースポーツで培った高い技術を市販車にフィードバックさせ、前輪駆動にこだわり、エンジンサスペンショントランスミッションなどを独自にチューンした「ルノー・スポール」バージョンを、本社所在地のディエップ工場で製作している。現在はメガーヌ・ルノー・スポールなどが生産・販売されており、モータースポーツで培った高い技術を市販車にフィードバックさせることにより、ルノー車全体のイメージ向上に寄与している。また、ウインド、メガーヌのエステートGT/エステートGT220においてはルノー・スポールの名こそ冠されないが、開発初期の段階から深く携わっている。ルノースポール開発の車両には、イニシャルのR.S.がつく。

販売中の車種

過去に販売された車種(一部)

ルノー・クリオ(II)「プレイステーション2バージョン」

ルノー・クリオ・ルノー・スポールの「プレイステーション2バージョン」が2004年にヨーロッパで限定発売された。シートに「PS2」のロゴが刺繍で入るほか、フロントサイド部分にもロゴが入る。なお、ルノー・クリオ・ルノー・スポールは、プレイステーション2のソフトグランツーリスモ4」内でドライブ(プレイ)することが出来る。

スクーター

2001年頃にはスクーター業界にも参入し、ベネリとのOEM提携により、三輪のルノー・ユベロ、二輪のルノー・キャンパスルノー・フルタイムルノー・クラノスルノー・スペシメンを販売したが、2003年に販売したルノー・グルーミーを最後にベネリとのOEMを解消し、スクーターから撤退した。

脚注

  1. メガーヌ・ルノー・スポール(R.S.)が、アルピーヌ・メガーヌになる!? | ENGINE (エンジン) |クルマ、時計、ファッション、男のライフスタイルメディア”. engineweb.jp. 2021年10月9日閲覧。
  2. ルノー「ルノー・スポール」が「アルピーヌ」にブランド名を変更”. carview! (2021年5月12日). 2021年5月12日閲覧。
  3. TCRドイツ:2台のルノー・メガーヌTCRが参戦へ。2018年も全7戦を予定 As-web 2018年1月10日
  4. REVEALED: meet race car Renault Sport R.S. 01, unveiled at the Moscow International Automobile Salon (英語). group.renault.com. 2017年3月15日閲覧。
  5. ルノー・スポールのワンメイク終了。専用車両にはGT3化キット投入へ”. AUTOSPORTweb. 2016年10月24日閲覧。
  6. Brad Anderson. RenaultSport R.S. 01 Receives GT3 Homologation (英語). GTspirit. 2022年1月11日閲覧。
  7. Renault Sport R.S. 01 Gets GT3 Homologation [34 New Photos]” (英語). Carscoops (2015年10月23日). 2022年1月11日閲覧。

関連項目

外部リンク

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