リメ運動

リメ運動19世紀の東チベットで興った超宗派運動である。リメRimé: ris medリメーとも)とはチベット語で「偏り無し」という意味である[1]

リメ

概説

19世紀のカム地方で、世俗的、政治的関心を捨てたリメと呼ばれる運動が興り、チベット仏教を再活性化させる新たな息吹をもたらした[2]。これは、宗派の壁を超えて仏教のさまざまな相承系譜を収集し、多様なものを多様なままで不偏的に平等に扱い、複数の伝統を混ぜ合わせることなく包括的・統合的にアプローチしようとするものであった[3]。チベットの文化的ルネサンスとも評される[4][5]

サキャ派トゥルクテルトンジャムヤン・キェンツェ・ワンポ (1820-1892)、カギュ派のトゥルクであるジャムグン・コントゥル・ロドゥ・タイェ (1813-1901)、ニンマ派のテルトンであるチョーギュル・デチェン・リンパ (1829-1871) の3人が協力しあってこの運動を主導した。ジャムヤン・キェンツェが発起人で[6]、ジャムグン・コントゥルが運動を取りまとめる役割を果たした[7]。リメパたちの活動はデルゲ王国の宮廷と、当地のサキャ派、カギュ派、ニンマ派、ボン教の寺院ネットワークの支援を受けた[8]

この運動は今日に至るまでチベット仏教に影響を与え続けており[6]、近現代ではディンゴ・キェンツェカルマパ16世ランジュン・リクペー・ドルジェチョギャム・トゥルンパダライ・ラマ14世を初めとする、多くのラマがリメの理念とアプローチを受け継いでいる[9]

脚注

註釈

    出典

    1. デロッシュ 2016, pp. 573–574.
    2. デエ 2005, p. 231.
    3. デロッシュ 2016, pp. 577–579.
    4. デロッシュ 2016, p. 580.
    5. Van Schaik 2011, pp. 164, 283.
    6. Van Schaik 2011, p. 164.
    7. デロッシュ 2016, p. 576.
    8. デロッシュ 2016, pp. 574, 580.
    9. デロッシュ 2016, pp. 573, 581.

    参考文献

    • ロラン・デエ『チベット史』今枝由郎訳、春秋社、2005年。ISBN 4-393-11803-0。
    • マルク=ヘンリ・デロッシュ(和訳:安田章紀)「チベット仏教におけるリメ(無偏)のアプローチ: 歴史、哲学、文化保存」『サンガジャパン Vol.24 特集「チベット仏教」』永沢哲監修、サンガ、2016年。ISBN 978-4-86564-062-5。
    • Van Schaik, Sam (2011). Tibet: A History. Yale University Press. ISBN 978-0-300-15404-7

    関連項目

    外部リンク

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