モロトフは駄目だ
概要
1939年から1940年まで続いた冬戦争において、ソビエト連邦は一応の勝利を収め、モスクワ講和条約のもとで少なからぬフィンランド領土の割譲が認められた。一方、フィンランド全土の占領という当初の目標は達成されなかったし、軍事的な損失も甚大で、最終的な戦死者の数はフィンランド側のそれを大幅に上回っていた。
『モロトフは駄目だ』の歌詞は、このソ連邦の苦戦を題材とする。かつてフィンランドのロシア化を推し進めようとして暗殺されたフィンランド総督ニコライ・ボブリコフを引き合いに出し、冬戦争当時のソ連邦外相ヴャチェスラフ・モロトフの大言壮語を「ボブリコフよりも嘘つきだ」と揶揄している。
歌詞には「ニェット」(Njet)のようなロシア語の単語(あるいはロシア訛り)がいくつか含まれている。また、ダーチャに関する言及があるが、これはかつて多くのロシア人高官がカレリアやフィンランドの海岸近くにダーチャを所有していたことを踏まえたものである[1]。
曲はロシア民謡『陽気な商人』(Ехал на ярмарку ухарь-купец)をモチーフとしたパロディである[1]。
レコード発売に先立つ1940年には、ユルヴァ自身も出演した短編プロパガンダ映画『スオミ・フィルミ 兵隊スケッチ1』(Suomi-Filmin sotilaspila 1)で挿入歌として使用された。この映画は冬戦争における赤軍を題材としており、ロシア兵たちは『モロトフは駄目だ』と歌いながら敗走する。歌詞は後にレコード化されたものとやや異なる[2]。
継続戦争最中の1942年、ゲオルグ・デ・ゴルジンスキーのオーケストラによる演奏の元でユルヴァ自身が歌った音源がレコードとして発売された[3]。また、歌詞自体は冬戦争中に書かれたとされる。
2022年、ロシアによるウクライナ侵攻の最中、モロトフをウラジーミル(プーチン)に置き換えたウクライナ語の替え歌『ウラジーミルは駄目だ』(Njet Vladimir)が制作された[4][5]。
歌詞
フィンランド語 | 日本語 |
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脚注
- “Перкеле, марши и польки: топ-5 военных песен Финляндии”. WARHEAD.SU. 2020年2月21日閲覧。
- “Suomi-Filmin sotilaspila 1”. 2020年2月21日閲覧。
- Fono.fi — Äänitetietokanta
- “Ukraina teki oman versionsa suomalaisesta tunnetusta sotalaulusta – kertosäkeessä tylyt terveiset Putinille” (フィンランド語). www.iltalehti.fi. 2022年9月20日閲覧。
- “Kun Molotoffista tuli Vladimir” (フィンランド語). Sotaveteraanit.fi. 2022年9月20日閲覧。
参考文献
- 辻田真佐憲『世界軍歌全集 歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代』社会評論社