ホソムギ
ホソムギ(細麦、ペレニアルライグラスとも、学名:Lolium perenne)は、イネ科ドクムギ属の多年草。原産地はヨーロッパ。牧草として世界中で用いられ、そのほとんどの地域で帰化植物として雑草化している[1]。
ホソムギ | ||||||||||||||||||||||||
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ホソムギ(ペレニアルライグラス) | ||||||||||||||||||||||||
分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Lolium perenne L. | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
標準和名:ホソムギ 牧草名:ペレニアルライグラス | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
perennial ryegrass |
概要
形態的特徴および生態的特徴については、栽培品種化に伴って様々な変化があるので、ここに記載したものは主に野生で見られる範囲の特徴である。
- 形態
- 標準和名の通り、ムギ様の細い葉を持つ。葉色は光沢のある緑色[2]、葉身部の幅は2-4mm[3]。草丈は通常30-60cm程度[2]。穂長は15-25cm、小穂の長さは1-2cm、通常は穎花に芒は無い[2]。
- 生態
- ヨーロッパ原産だが、現在の自生地はアジア・北米の温帯地域および北アフリカに広がっている[1]。冷涼かつ温和な環境や、水分が多い土壌を好み、乾燥状態や酸性土壌を嫌う[4]。日本での開花期は初夏から夏[5]。多年草であるが永年性はない[6]。
- その他
- ドクムギ属の植物種は相互に雑種を作りやすい[3]。特にペレニアルライグラスとイタリアンライグラスとの間の雑種は連続的な変化を持つものがあり、両親間には明確な差があるにもかかわらず、自生個体については判別が付きにくい。両者の基本的な違いは次の通りである[3][4][7]。
牧草としての利用
広く牧草として利用されており、ヨーロッパ・アジア・北米の他、オーストラリア・ニュージーランドでも栽培されている[1]。また、造園用の芝草としての利用もある[4][8]。基本染色体数は2n=14であるが、栽培品種には4倍体 2n=4x=28の品種も多く含まれる[3][4]。
以下、主に日本国内での牧草としての利用について記述する[9]。
日本へ導入されたのは、明治時代初期であったが、牧草としての利用が本格化したのは1950年代以降である。栽培適地は年平均気温 8-12℃、生育最適気温は20-25℃。初期生育および再生能力が高く、家畜の嗜好性が良好であり、栄養価が高いので牧草として用いられる。出穂期の乾物率は約20%、乾物中の可消化養分総量(TDN)は約70%である。
栽培品種は早生・中生・晩生に分化しており、早生・中生は採草・放牧向けであり、晩生は放牧専用に栽培される。日本では耐病性・耐寒性の4倍性品種の利用も多い。公的な育種機関は、山形県酪農試験場と北海道立総合研究機構農業研究本部上川農業試験場天北支場がある。造園用芝草として販売されている品種は、環境適応を高めるために人為的に内生菌(エンドファイト)を感染させてあり、動物への毒性を持っている場合があるので、飼料としての利用はできない(ライグラススタッガー参照)。
脚注
- 山崎耕宇ら『新編農学大事典』601-603ページ
- 佐竹義輔ら「ホソムギ」『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』114ページ。
- 長田武正「ホソムギ」『日本のイネ科植物図譜(増補版)』130-131ページ。
- 農業・生物系特定産業技術研究機構「ペレニアルライグラス」『最新農業技術事典』1415ページ。
- 開花期については資料によってずれがある。『日本のイネ科植物図譜(増補版)』では5-7月、『日本の野生植物』では7-8月、『新編農学大事典』では5月上旬-6月中旬と記載。
- 『日本の帰化植物』に「短命の多年草」と記載。
- 清水建美「ドクムギ属」『日本の帰化植物』246ページ
- 農山漁村文化協会「ペレニアルライグラス」『農業技術大系 畜産編7 飼料作物』629-630ページ。
- 以下の記述は主に『新編農学大事典』『最新農業技術事典』『農業技術大系』による
- 栽培品種はハイブリッドライグラス、自生雑草はネズミホソムギと呼ぶ。
- “ラグビーW杯支える 2層の芝 聖地・花園の生育術”. 日本経済新聞. (2019年9月9日) 2020年8月25日閲覧。
- 通年緑化とオーバーシード法の技術開発 - ウェイバックマシン(2015年12月8日アーカイブ分) - JRA競走馬総合研究所
参考文献
- 清水建美編『日本の帰化植物』平凡社、2003年、ISBN 978-4582535082。
- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』平凡社、1982年、ISBN 978-4582535013。
- 長田武正『日本のイネ科植物図譜(増補版)』平凡社、1983年、ISBN 978-4582506136。
- 山崎耕宇ら(監修)『新編農学大事典』養賢堂、2004年、ISBN 978-4842503547。
- 農業・生物系特定産業技術研究機構(編著)『最新農業技術事典』農山漁村文化協会、2006年、ISBN 978-4540051630。
- 農山漁村文化協会『農業技術大系 畜産編7 飼料作物』農山漁村文化協会(1979年)。(加除式、随時部分改定)
画像
- 掘り上げた株
- 葉舌部(葉鞘と葉身の境目)
- 小穂
- 開花状態
- 種(生物学上は果実)
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