フレームシフト突然変異

フレームシフト突然変異(フレームシフトとつぜんへんい)とは、塩基の欠失または挿入が起こり、三つ組みの読み枠がずれた時に生じる突然変異である。これは、塩基対置換よりも影響が非常に大きい。というのも、大幅に遺伝暗号がずれ、アミノ酸が変わるだけでなく、終止コドンなどもずれてしまうためである。本来止まるべき終止コドンを読めなくなったり、より手前で終止コドンが現れたりする(フレームシフトの大半はこれ)ためである。以下の例で変異を考える。

正常配列
mRNA5'-GCUGCUGCUGCUGCUGCUGCUGCUGCUGCU -3'
アミノ酸AlaAlaAlaAlaAlaAlaAlaAlaAlaAla


mRNAにAが挿入された変異配列
mRNA5'-GCUGCUAGCUGCUGCUGCUGCUGCUGCUGC -3'
アミノ酸AlaAlaSerCysCysCysCysCysCysCys

このように変異箇所から後の配列は大幅に異なる。このように、終止コドンが最後の辺りで無くなると、リボソームはポリA配列を読む羽目になって立ち往生する。だから真核細胞においては、終止コドンがないための分解 nonstop mediated decayによってmRNAは翻訳完了前に分解されてしまう。 3個の塩基がバラバラに導入された場合は、1個や2個の場合と比べ、影響は小さくなる。3カ所にAが入ることで考える。

3カ所変異後の配列
mRNA5'-GCUGCUAGCUGCAUGCUGCAUGCUGCUGCU -3'
アミノ酸AlaAlaSerCysMetLeuHisAlaAlaAla

となって、3つ目に新たに挿入されたA以降のリーディングフレームが元通りとなり、影響は小さくなる。ただし、3つ組で入る場合はフレームがずれないので、単に挿入と言いフレームシフトとは言わない。

次に、フレームシフトによって終止コドンが来る場合を以下の例で説明する。大半のフレームシフト変異はこれに属する。

正常配列
DNA5'-TACGGACTCCACGTC-3'
mRNAAUGCCUCACGUGGAG
アミノ酸MetProGluValGlU
DNAのCTCのTが欠失した変異
DNA5'-TACGGACCCACGTC-3'
mRNAAUGCCUGGGUGAAG
アミノ酸MetProGlu終止

本来作られるべきポリペプチドよりも、大幅に小さいものが出来上がる。このような場合、真核生物においてはタンパク質は機能しないので、ナンセンス変異依存mRNA分解機構 nonsense mediated mRNA decayによって細胞内で破壊されることになる。


関連項目

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