フェニトロチオン

フェニトロチオンMEPとも。英語: Fenitrothion)とは、住友化学が開発した有機リン有機硫黄殺虫剤の一種。1959年から使用されている[2]スミチオンの商品名で知られる。

フェニトロチオン
Fenitrothion
IUPAC名O, O-dimethyl O-(4-nitro-m-tolyl) phosphorothioate
別名MEP、スミチオン(商品名)
分子式C9H12NO5PS
分子量277.25
CAS登録番号122-14-5
形状黄褐色の液体
密度1.3 g/cm3, 液体
融点0.3 °C
沸点140-145(0.1mmHg) °C(分解温度)
水への溶解度不溶( 14 mg/L 30℃ )
SMILESCC1=C(C=CC(=C1)OP(=S)(OC)OC)[N+](=O)[O-]
出典国際化学物質安全性カード[1]
IPCS Environmental Health Criteria (EHC) No.133: Fenitrothion (1992)日本語訳[2]

用途

接触性・食毒性の殺虫剤として、農耕地や街路樹などのアブラムシアオムシカメムシを始めとする害虫防除に用いられる他、家庭用殺虫剤としてハエの駆除や、動物用医薬品シロアリ駆除剤としても使用される。

残留基準

残留基準は、小麦10.0ppm以下をはじめ、74種類の作物に対し0.05 - 10.0ppm以下と定められている。

毒性等

  • 一日摂取許容量は体重1kgあたり0.005mg。摂取した場合には、倦怠感頭痛吐き気多量発汗、視力減衰、縮瞳など有機リン剤に共通な中毒症状がみられる。過去には千葉県でフェニトロチオン複合剤散布直後に水田に入った農夫が死亡した事例や、茨城県で住宅のダニ駆除にフェニトロチオン製剤を使用したところ一家全員に中毒症状が生じ、5歳の女児が死亡した事例がある。
  • 可燃性(引火点157℃)であり、燃焼により窒素酸化物・リン酸化物・硫黄酸化物を含む有毒ガスを生じる。
  • 甲殻類を中心に、水生生物に対して強い毒性を示すほか、ミツバチに影響を及ぼす。養殖場や養蜂地の近辺では、使用に注意を払う必要がある。
  • 自動車塗装面を侵すため、広域散布や駐車場近辺の散布時には風向きを確認する必要がある。
  • アブラナ科植物(小松菜、大根、白菜、蕪、ブロッコリー、ストックetc)には薬害が出るので使用しないとともに、これら作物にドリフトしないよう注意して散布する必要がある。また、本剤を散布した器具でアブラナ科作物に農薬を散布しない。止むを得ない場合は当該器具をよく洗浄後、同器具で作物に清水を散布し、薬害の出ないことを確かめて使用する。
  • 散布されるとスミオキソンに変化し、一時的に殺虫力が強くなる。同物質は大気中から検出されてはならないので、特に空中散布する場合は注意を要する。

開発・流通

住友化学が開発し、1961年12月26日に農薬登録を受けた。以後、日本では50年近くにわたり使われている。原体生産量は4,110トン、単乳剤生産量431kL、単粉剤生産量1,637トン(いずれも1999年)。住友化学園芸の「スミチオン」や、複合剤として「オルトランC」「スミソン」「スミバッサ」「トラサイドA」「スミトップM」「オルチオン」の商品名で販売されている(複合剤には商品名に「スミ」のつく製剤が多い)。

ほぼ同等の成分の姉妹品で、対象をマツクイムシに特化した「スミパイン」、衛生害虫に特化した「プレミアムスミチオン」、ゴキブリ防除に特化した「ゴキアウトMC2」、カミキリムシに特化した「ガットキラー」や「ガットサイドS」、「サッチューコートS」も存在する。

脚注

参考文献

  • 『農薬毒性の事典』(改訂版)2002年三省堂 ISBN 9784385356044
  • IPCS Environmental Health Criteria(EHC)No.133: Fenitrothion(1992)

関連項目

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